人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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結託

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「…どうぞ、顔に」
ヤンから手拭いを渡されて顔を拭いた。
思ったより血が多い。
下唇もピリピリ痛んだ。
そこからも血が出ていた。
顔の腫れと怪我のひどさにヤンが顔をしかめて見つめいた。
「…大丈夫ですか?思っていたより腫れてますね」
「さすがに痛い」
「まさか、石が当たりましたか?」
ヤンの一言にエヴ嬢の顔が歪む。
「…ごめんなさい」
やりすぎたと反省したようだ。
「当たってない。慌てて振り返ったら木にぶつかった」
慌てたからと言ってここまで怪我するのも我ながらどんくさいと反省する。
「先に戻れ。血が落ち着いたら戻る」
しかし、この顔のままじゃ作業場に戻れんと考え込む。
「…団長、屈んでください」
「ん?ああ、ん?!」
胸ぐらを捕まれ、れ、と唇を舐めたと思ったら隙間に差し込まれ、また以前のように、ごうごうと精力が流された。
めりめりと傷が塞がる。
ペロペロと下唇の傷を舐められて呻いた。
以前はあまりの唐突さに何なのか理解できなかったが、今回は治療してくれていると分かっている。
あの時程ひどい傷な訳でもないのにいいのかと戸惑う。
口内の傷を確かめるように舐められて身体が熱を持って顔が赤くなった。
呆然としていると、ぱっと顔を離して唇を摘ままれた。
「治りました」
肉をひっくり返して内側の傷を見聞している。
「あ、ありがとう」
吃りながらそう答えると、むうっと頬を膨らます。
「石は反省します。メイスを投げたり、乱暴でした。暴言も。色々とすいません」
「事故とはいえ、すまなかった、おっと」
掴んでいた胸ぐらを押し返すので後ろによろけた。
顔を赤らめたままツンとそっぽを向いて知らんぷりしている。
「…これはいいのか?」
「これ、ですか?これって何?」 
何のことかと振り返って不機嫌そうに問う。
緩んだ私の顔に気づいて不快そうに柳眉をひそめる。
「口付けだ」
「治療ですけど?嫌ならもうしません」
またぷいっと顔を背けてしまった。
「嫌なわけない。あなたが嫌でないなら嬉しいと思った」
「治療しただけです」
「それでもあなたからの口付けは嬉しい」
こちらを向くと顔をしかめて、べーっと舌を出した。
「まだ怒ってますっ」
踵を返してさっさと茂みを掻き分けていく。
寂しさに落ち込むが、治療のためとは言え私との口付けに抵抗がないことが嬉しくてしょうがない。
「ヤン、悪かったな。騒動になって」
「いえ、怪我が治って何よりです」
不機嫌そうに睨むのを苦笑いで答える。
「だが、もう治療はさせないように仕向けないとな」
分からないと疑問の浮かんだ顔になる。
気づいてないのかと意外だった。
「誰彼と治療をしたがったら困るだろう?精力の問題もある。飢えて自分から私達に頼むならいいがそれもしない。今は消費させない方向で諭すべきだ。私は怒らせてしまったので頼んだぞ」
そう言ってエヴ嬢の後を進もうとすると後ろから両肩をガシッと掴まれた。
「ん?」
「…ご協力願います」
「いや、お前の言うことは聞くだろう?」
「年の功ですか、それとも王宮の幾多の事柄を乗り越えた百戦錬磨だからでしょうか。男も女も手玉に取ったその王都仕込みの技をお使いください。私は小言なら言えますが、仕向けるのは無理です」
「はあ?!何を無責任な、しかも言いたい放題、人を年寄りかスケコマシのように、」
「団長が仰ったのでしょう?私一人でやるべきではないと。考えの狭さを反省し、頼るべきは頼ると己を改めたのです。今の話も思い当たりませんでした。なので、よろしくお願いします」
大人しく振り向くと真剣な顔のヤンと対峙する。
「…男も女もの下りはどこから仕入れた?」
「細かいことはそちらの団の方々から。年に一回は王都に行かれる旦那様とロバート様もご存じのことです」
「…くっ、ジェラルド伯がご存知とは分かっていたが、改めて聞くと気が引ける。…それにしてもあいつら。…口の軽い」
「疚しいのは身から出た錆でございましょう。でもそれが今は役立つ時です」
「…エヴ嬢の耳には?」
「いくつか入ってますが分かってらっしゃいません」
「…入ってるのか」
どれだ。
数人侍らして遊んだことか、毎日取っ替え引っ替えした話か。
全て碌な話じゃない。
「内心抵抗がありますが、話を合わせます。潔癖のラウルにまで細かい話がいったらまた揉めますよ。やっぱり去勢するべきとなりかねません。あれは不能の他に性欲減退の術式も扱えますからね」
「あいつは、本当に碌でもない術式ばかり。とりあえず話は分かった。尽力する」
前方からがさがさと掻き分ける音が聞こえてそちらを向くとエヴ嬢が見えた。
「あっちでずっと待ってたのに、もう!遅いよ!ヤン、何してるの?!」
「申し訳ありませんっ」
慌てて駆けていく。
「団長!」
「な、なんだっ?」
「砦に戻ったら触りに行きますから!尻尾!」
「戻ってからだな?櫓に来るといい」
「櫓?なんで?」
知らせてなかったのか。
「帰ったら話す」
「はい」
私も同じ方向へ進むと意外にもエヴ嬢は私が近付くのを待っていた。
「本当に石は当たってませんか?」
「当たってない」
「…本当に?…団長が転んでそんな怪我するなんて信じられません」
「慌てたからだ。そういうこともある。…我ながらどんくささに驚いた」
心配そうに見つめて私が嘘を言ってると思ってるようだ。
「あなたの投げた石は木にめり込んでいた。こんなものではすまない」
「ごめんなさい」
「いや、当たっていない証拠だ。この程度のはずがない。顔以外大きな怪我はなかったろ?」
しょんぼりしたまま頷いた。
「お母様の言う通り、頑丈な人がいいです」
「私ほど頑丈な男はなかなかいないと思うが」
「はい」
愁傷な様子に荒療治をするタイミングか判断し、気を引き締める。
「さてと、怒らせたばかりで悪いが」
胸ぐらを掴んで指を突っ込んだ。
「使った分は補充しとけ」
「あ、またぁ、ああ、やぁ、ん、ふぁぁん」
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