132 / 315
ジュース
しおりを挟む
「で、エヴ嬢はどうやって戻れるんすか?」
「分からん」
いまだ夢だと思い込んでいるエヴ嬢に同じ質問をしても要領が得なかった。
「初めてだから分かんないもん。たぶん寝たら戻るよ」
投げやりに答え、酒の入ったグラスを取って飲もうとするので取り上げた。
「飲むな」
「喉乾いたの」
リーグが水差しから水を注いで渡した。
「さっきも飲んだもん。もう16だから飲んでいいって」
そうなのかとリーグに視線を向けると首をかしげた。
「さあ?そこは見てないっす。ラウル達が止めそうだけど。怒られなかったっすか?」
「怒られた」
「だろうな。酒は旨かったか?」
「ジュースの方が美味しい。お酒苦いね。でも楽しかったから飲みたい。皆とエールを飲んだの。ヤンも一杯だけならって。これから飲む機会が増えるから慣れた方がいいって」
また飲みたいと小さくごねている。
「まさか今、酔っぱらいっすか?この甘えん坊なのは。果物剥いてあげるからそれで我慢してください」
篭の果物をひとつ掴んでぺりぺりと厚手の皮に親指を刺して裸にすると、皿にひと房ずつ並べた。
「食べやすくするから待ってくださいね。薄皮も剥いちゃいますから」
丁寧に房を包んだ半透明の薄皮を剥いて黄色がかかったふっくらとした身がみずみずしい。
「清潔なガーゼを出してこい」
「ん?はい、どうぞ?」
引き出しから一枚持ってきた。
剥き身の房をガーゼに包んでぎゅっと搾ると汁が出る。
味付けが物足りない時に使う塩を少し足して、水と混ぜたらほんの少しだけワインを垂らす。
手間を惜しまず、お椀からグラスへ注ぎ手渡した。
「美味しい」
両手で支えたグラスから喜んで飲んでいる。
おかわりを欲しがりそうな気配にもうひとつ搾る。
「甘味を足した方がもっと飲みやすいが」
「このままでいいよ?美味しい」
甘味が苦手だからか、渋みが強いはずなのに平気そうだ。
「こっちもさっぱりして旨いっすよ。料理なんかによくかけます」
「そのままは酸っぱい。ジュースに向くのか?」
「水で薄めるなら飲みやすいっす。うちの店で出してます」
「すごい良い香り。飲んでみたい」
三人であれこれしゃべりながら果物を選んで、リーグとエヴ嬢が剥いて私が搾る。
そして搾ったら三人で味見をする。
どれがいいかと、また話が尽きなかった。
「腕、疲れませんか?代わりたいけど俺の握力じゃ大して搾れないっす」
「このくらいなら疲れない。それにもう満足したようだ」
三回搾っただけだ。
エヴ嬢は腹が膨れたようで舐めるようにちびちび飲んでる。
「トイレ、あっ、わ!」
ぱっと膝から降りて扉に向かうがだぼだぼの寝間着に足をとられて転んだ。
助け起こして抱えてトイレに連れていく。
自分で歩きたがったが、今日だけだと言うと甘える気になったらしい。
用を足す間、手水で手を洗った。
手拭いで拭ったがベタベタが残っているので念入りに擦り落とした。
「団長、いるー?どこか行ってない?」
「いるぞ」
何度も聞くのをいちいち答える。
「暗くて怖いからそこにいてよ?置いてかないで」
泣きそうな声に口許が緩んだ。
「大丈夫だ。ほら、証拠に、」
扉を軽く叩いて話しかけ続けた。
終わるとピュッと飛び出して抱きついてきた。
怖かったらしく抱っこをせがむ。
また抱えて部屋に戻った。
「分からん」
いまだ夢だと思い込んでいるエヴ嬢に同じ質問をしても要領が得なかった。
「初めてだから分かんないもん。たぶん寝たら戻るよ」
投げやりに答え、酒の入ったグラスを取って飲もうとするので取り上げた。
「飲むな」
「喉乾いたの」
リーグが水差しから水を注いで渡した。
「さっきも飲んだもん。もう16だから飲んでいいって」
そうなのかとリーグに視線を向けると首をかしげた。
「さあ?そこは見てないっす。ラウル達が止めそうだけど。怒られなかったっすか?」
「怒られた」
「だろうな。酒は旨かったか?」
「ジュースの方が美味しい。お酒苦いね。でも楽しかったから飲みたい。皆とエールを飲んだの。ヤンも一杯だけならって。これから飲む機会が増えるから慣れた方がいいって」
また飲みたいと小さくごねている。
「まさか今、酔っぱらいっすか?この甘えん坊なのは。果物剥いてあげるからそれで我慢してください」
篭の果物をひとつ掴んでぺりぺりと厚手の皮に親指を刺して裸にすると、皿にひと房ずつ並べた。
「食べやすくするから待ってくださいね。薄皮も剥いちゃいますから」
丁寧に房を包んだ半透明の薄皮を剥いて黄色がかかったふっくらとした身がみずみずしい。
「清潔なガーゼを出してこい」
「ん?はい、どうぞ?」
引き出しから一枚持ってきた。
剥き身の房をガーゼに包んでぎゅっと搾ると汁が出る。
味付けが物足りない時に使う塩を少し足して、水と混ぜたらほんの少しだけワインを垂らす。
手間を惜しまず、お椀からグラスへ注ぎ手渡した。
「美味しい」
両手で支えたグラスから喜んで飲んでいる。
おかわりを欲しがりそうな気配にもうひとつ搾る。
「甘味を足した方がもっと飲みやすいが」
「このままでいいよ?美味しい」
甘味が苦手だからか、渋みが強いはずなのに平気そうだ。
「こっちもさっぱりして旨いっすよ。料理なんかによくかけます」
「そのままは酸っぱい。ジュースに向くのか?」
「水で薄めるなら飲みやすいっす。うちの店で出してます」
「すごい良い香り。飲んでみたい」
三人であれこれしゃべりながら果物を選んで、リーグとエヴ嬢が剥いて私が搾る。
そして搾ったら三人で味見をする。
どれがいいかと、また話が尽きなかった。
「腕、疲れませんか?代わりたいけど俺の握力じゃ大して搾れないっす」
「このくらいなら疲れない。それにもう満足したようだ」
三回搾っただけだ。
エヴ嬢は腹が膨れたようで舐めるようにちびちび飲んでる。
「トイレ、あっ、わ!」
ぱっと膝から降りて扉に向かうがだぼだぼの寝間着に足をとられて転んだ。
助け起こして抱えてトイレに連れていく。
自分で歩きたがったが、今日だけだと言うと甘える気になったらしい。
用を足す間、手水で手を洗った。
手拭いで拭ったがベタベタが残っているので念入りに擦り落とした。
「団長、いるー?どこか行ってない?」
「いるぞ」
何度も聞くのをいちいち答える。
「暗くて怖いからそこにいてよ?置いてかないで」
泣きそうな声に口許が緩んだ。
「大丈夫だ。ほら、証拠に、」
扉を軽く叩いて話しかけ続けた。
終わるとピュッと飛び出して抱きついてきた。
怖かったらしく抱っこをせがむ。
また抱えて部屋に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる