人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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じゃあ行きましょうかとのんびり告げたエヴにとてつもなくいら立った。
「それであなたはどういうつもりだ?」
「え?あ、団長、怒ってる?ごめんなさい」
後ろに後ずさって背中は壁に張り付いている。
「かなり。だが、何を怒ってるか分かってないだろう?」
「…色々」
「確かに色々と重なっている。一番はこれだけ大事にしてるのに信じてなかったことだ。態度でも言葉でも愛してると何度も伝えている。こんなに尽くすのはあなただけだ。なのにペリエ嬢の言葉に踊らされてこうも簡単に無下にされたらさすがに疲れる。もう二度と私の愛情を疑わないでほしい」
「ひゅぅっ!」
「うわわわ、すっげぇっ、さすが愛の狩人っ」
見張りの二人が興奮して騒いだが無視した。
「は、反省しますっ」
「ああ、反省しろ。行くぞ」
ペンと便箋は見張りに預けて二人で明かりひとつで暗い通路を歩いた。
途中、やはり腹立ちが収まらず後ろを歩くエヴを振り返った。
「な、なんですか?」
びくっと跳ねて一歩下がる。
「匂い」
「へ?」
「私の匂いが薄い」
寝台の上であれだけつけたのに。
今はペリエ嬢やベアード、ロバート殿の匂いで私の匂いが薄くなっている。
「腹立つ」
嫉妬に睨むとエヴがまた壁に張り付いて眉を下げて困っていた。
困らせたくないのに悋気は収まらない。
「だ、団長?」
「匂いをつけ直させてほしい。嫌がるなら堪えるが、いつまでもこのままならまた悋気で押し倒すかもしれない。もう起こす寸前だ」
「げ、」
じわじわと張り付いた壁に近寄って左右に逃げるのを追いかけた。
「もともと拐うのをずっと我慢しているんだ。せめてご家族だけなら堪えようがあるのに、誰とでも引っ付くのが腹立つ。色んな人間の匂いをこんなにつけて、私の番なのに」
壁に手を置いて腕の中に囲いこみ上から見つめると目をキョロキョロさせて逃げ場を探している。
「あなたの望みのためにペリエ嬢の自供も手に入れた。しかも強要することもなく、本人が望む形で。これがあればあちらの全面降伏で終わりだ。さっさと話し合いが済めばラウル達の調査や報告書の精査は避けられる。好きなだけ治療しろ。それも我慢するから」
威圧に少しずつ腰が引けて壁に背中を張り付けたまま地面に沈みこんでいくのを追いかけて、尻餅をついたエヴの上から被さるように私も地面に膝をついた。
「褒美はないのか?こんなに我慢させられてばかりなのに」
守るように明かりの持ち手を両手に握りしめて抱えている。
それがなければ私もこれ以上堪えていないかもしれない。
囲まれた腕の中で眉を下げて首を何度も傾げていた。
片手をおずおずと伸ばして私の頬に触れた。
「い、いい子。団長、いい子、です」
半泣きに私の頬を撫でて耳を触りぎこちなく頭に滑る。
「これが褒美か?」
こんな子供のような扱いなのに内心はすごく嬉しい。
それを知られたくなくて冷たく言うとエヴの手がびくっと揺れる。
「火が、危ないから。これ以上は、」
「なら退かせ」
取り上げて横に置くと空いた手が私の顔を撫でる。
両手に撫でられてこれも悪くないと目を細めた。
撫でていた両手が肩に捕まってそれを支えに少し前屈みに膝を立てたと思ったら、私の頬に口づけをした。
驚いて見つめると間違えたのかと罰が悪そうに顔をしかめた。
「前、頬への口づけが褒美だと。姫から、騎士への」
以前、頬の口づけをねだったことを思い出した。
「もう一度ほしい」
そう言うとまた頬にゆっくり唇が触れて離れた。
「…幸せだ」
まだ側にあるエヴの顔に向き合った。
鼻同士がこすれて互いの唇もすれすれに当たる。
「あなたからの口づけは、本当に嬉しい」
離れるのが名残惜しくてそのままの姿勢でいたらエヴの口許が動いた。
当たる唇が柔らかくてぞくぞくする。
「匂い、どうやってつけ直すんですか?」
お互いしゃべると唇がこすれてくすぐったい。
それだけなのにびりびりと脳天に痺れが走り息苦しさに熱い吐息がこぼれた。
「抱き合って、引っ付くだけでいい」
「それだけ?」
「ああ」
こころなしかエヴの息も熱い。
眼差しも柔らかく怯みは見えない。
私を許した気配に胸が高鳴った。
どうぞ、と小さく答えて自分から首に手を巻いた。
身体に手を添えたら、それはやめてと厳しく叱られた。
「そっちから触るのはなし。信用ないんですから」
「生殺しか」
「何それ?」
「触りたいのに触れない。生かさず殺さずだ」
「やめます?」
「やめない。このまま頼む」
しばらくそのままでいたら遠くからがしゃんと何か落とす金属音が聞こえた。
振り返るが辺りには何も見えない。
外からかとエヴから離れ通路の窓に寄るとここから見える暗い城壁の上に3人ほど団員の姿が見えて、こちらが見たことに驚いて走っていく。
「団長?どうしました?」
「何も」
明かりを手にエヴも立ち上がって窓を覗いた。
暗闇がただ広がるだけで何もないことに首をかしげ私を不思議そうに見つめた。
「気にするな」
「…信用ならないんです」
「そうか?」
む、と唇を突きだして睨むので苦笑いがこぼれた。
可愛い、そう思って腰を屈めてふっくらした唇に自分の唇を重ね、舌でつつくと唇を開けて予想外に招かれる。
蹴られる覚悟だったので目を開いて驚くと一気に精力を注がれた。
「ん、エヴ?」
「傷、治しましたよ。背中、残ってたでしょう?」
離れると唇を手の甲で拭ってしれっと答えた。
「そうか。私は普通のキスでよかったんだが」
別に治してほしかったわけではない。
「やっぱりそういうの、やめる気ないから二度としないとは言わないんですよね。ズルいところあるって分かってきました。あ、あとで手から精力ください。減ったんで」
ぐっさり言葉を刺して手から寄越せと牽制された。
「早くお父様に届けましょう」
「そうだな」
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