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身代わり
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子供を諭すような態度から軽くあしらわれたとまなじりをあげて顔を赤くしたサライエがばっとこっちを向いた。
「団長と!番にだ!」
睨むサライエを見つめ返す。
何のことか察した。
予想外と驚く人だかりを掻き分けてずかずかと私の前に立ち塞がった。
「あんたらのせいだ!ふざけんなっ!ちきしょう!」
激昂し唾を飛ばす勢いで怒鳴り、成り行きを見守っていたエヴを押し退けようと手を出したので、その手を片手で払った。
「てっ!つぅっ、くそ!」
関節を叩いた痺れで一歩後ずさるが目はまだ強く睨んでいる。
「この、番狂いが!そいつさえいれば後はどうでもいいんだろう!リーグのことなんかどうでもいいんだ!」
その言葉にエヴは首を傾げた。
私の胸の前に立つので表情は見えない。
「私はリーグのことが大事ですよ?サライエさん」
「戦場に出張って男の側仕えを侍らすような女は信用出来ない!」
サライエ、と低く名を呼んだ。
番への中傷に直ぐ様殺気立った。
「私、贄に狙われるから女性の側仕えが見つからなくて、」
私に怖じけつき言葉が詰まったところでエヴが言葉を繋ぐ。
「え、と。それと、私以外も、みんなリーグを好きです。ヤンもラウルも、ダリウスも弟が増えたみたいと喜んでました。どうでもいいなんて思ってないです」
「嘘だ」
エヴの取りなす言葉に躊躇していたサライエの目がつり上がった。
「じゃあなんであんたの代わりに巻き添え食うんだよ!あんな怪我しなきゃなんなかったんだよぉ!復帰できないような怪我しちまって!あんたならっ、」
肩を掴もうとする素振りに、直ぐ様エヴの首から肩にかけて腕を巻いて後ろへ下がらせるとサライエの手が空振り、勢いにたたらを踏む。
空振った手を見つめて私へと視線を変えた。
「そうやって、たかが、肩を掴もうってのさえすぐに止めるし、…何でもすぐに分かるくせに。団長、なんでリーグの襲撃は止めなかったんだ。あんたの番なら守護に守られて怪我なんかしなかったのに」
眉を下げて悲痛な声を絞り出す。
「…団長はあの女を追い出すのにリーグを利用したんじゃないか?」
サライエの涙の溜まった目を見返して、後ろの部隊長のガードを見つめた。
努めて無表情を通すが、不信感の浮かんだ眼差しを向けている。
専門部隊の団員らそれぞれの顔にも同様の不信感と忌避感が漂っていた。
さあ、どうしたものかと目を細めた。
すると目を丸めたエヴが振り返って私の顔を見上げた。
「…そう、なんですか?」
「エヴ?」
「…リーグを身代わりにしたんですか?」
エヴまで参戦したら話がややこしくなる。
本当にどうしたものかと眉をひそめた。
「違う」
「…証拠は?」
低い声と共にパキン、パキンと小さな金鳴りが鳴る。
エヴの顔の紋様が濃くなっていく。
それを見たクレインの団員らは背を向ける勢いで素早く後ずさり、釣られてうちの団員らの大半も後退を始めた。
「目に見えるものはない。だが、私はリーグを身代わりにはしない。それなら私が受けて立つ。それで充分追い出せるから」
「…なら、利用はしました?」
「していない」
きんきんと響く金鳴りが止まない。
耳を伏せて下に下がった尻尾の毛が逆立つ。
一歩引いて私も強化をかけた。
「…どうやって信じたらいいんですか?…信用ないのに」
「…答えがない」
「…日頃の行いが悪いからです」
「…それは、返す言葉がない」
威圧が強まりじわじわ下がった。
エヴの圧の強さに他の者が次々後ずさっている。
仰け反ったサライエはこれは予想外とばかりに手を宙にさ迷わせたまま口をパクパクさせて茫然と私達を見つめていた。
「…な、…な、なんで、あんたが、そんなに怒るんだ?」
その言葉にエヴがサライエの方へゆっくりと首を傾けた。
「私がリーグを好きだからですよ?」
周囲の多くがひゅっと息を飲んだ。
リーグを好きと言うことにどういう意味だと焦っている。
ここまで角を立てて私に逆らい宣言するから穿った見方をされている。
「リーグには7人のおチビちゃんがいるんですよ。リリアちゃんとルーナちゃんと双子のサラちゃんとテオ君と、グラディオ君とマイク君と、末っ子の赤ちゃんのカルラちゃん。お休みには家に帰ってお世話で忙しいんです」
唐突な家族の話題に団員らは目を白黒させながらエヴを見つめた。
「お兄様が怪我したと知ったらおチビちゃんが泣いちゃいます。きっと、お父様やお母様も。もし、団長のせいなら、リーグも悲しいですよね。私も悲しいです」
違うと叫びたいが、背中から腹に据えかねたと強い闘気が揺らめくのがかいま見えて口を挟むことが憚られてた。
「団長と!番にだ!」
睨むサライエを見つめ返す。
何のことか察した。
予想外と驚く人だかりを掻き分けてずかずかと私の前に立ち塞がった。
「あんたらのせいだ!ふざけんなっ!ちきしょう!」
激昂し唾を飛ばす勢いで怒鳴り、成り行きを見守っていたエヴを押し退けようと手を出したので、その手を片手で払った。
「てっ!つぅっ、くそ!」
関節を叩いた痺れで一歩後ずさるが目はまだ強く睨んでいる。
「この、番狂いが!そいつさえいれば後はどうでもいいんだろう!リーグのことなんかどうでもいいんだ!」
その言葉にエヴは首を傾げた。
私の胸の前に立つので表情は見えない。
「私はリーグのことが大事ですよ?サライエさん」
「戦場に出張って男の側仕えを侍らすような女は信用出来ない!」
サライエ、と低く名を呼んだ。
番への中傷に直ぐ様殺気立った。
「私、贄に狙われるから女性の側仕えが見つからなくて、」
私に怖じけつき言葉が詰まったところでエヴが言葉を繋ぐ。
「え、と。それと、私以外も、みんなリーグを好きです。ヤンもラウルも、ダリウスも弟が増えたみたいと喜んでました。どうでもいいなんて思ってないです」
「嘘だ」
エヴの取りなす言葉に躊躇していたサライエの目がつり上がった。
「じゃあなんであんたの代わりに巻き添え食うんだよ!あんな怪我しなきゃなんなかったんだよぉ!復帰できないような怪我しちまって!あんたならっ、」
肩を掴もうとする素振りに、直ぐ様エヴの首から肩にかけて腕を巻いて後ろへ下がらせるとサライエの手が空振り、勢いにたたらを踏む。
空振った手を見つめて私へと視線を変えた。
「そうやって、たかが、肩を掴もうってのさえすぐに止めるし、…何でもすぐに分かるくせに。団長、なんでリーグの襲撃は止めなかったんだ。あんたの番なら守護に守られて怪我なんかしなかったのに」
眉を下げて悲痛な声を絞り出す。
「…団長はあの女を追い出すのにリーグを利用したんじゃないか?」
サライエの涙の溜まった目を見返して、後ろの部隊長のガードを見つめた。
努めて無表情を通すが、不信感の浮かんだ眼差しを向けている。
専門部隊の団員らそれぞれの顔にも同様の不信感と忌避感が漂っていた。
さあ、どうしたものかと目を細めた。
すると目を丸めたエヴが振り返って私の顔を見上げた。
「…そう、なんですか?」
「エヴ?」
「…リーグを身代わりにしたんですか?」
エヴまで参戦したら話がややこしくなる。
本当にどうしたものかと眉をひそめた。
「違う」
「…証拠は?」
低い声と共にパキン、パキンと小さな金鳴りが鳴る。
エヴの顔の紋様が濃くなっていく。
それを見たクレインの団員らは背を向ける勢いで素早く後ずさり、釣られてうちの団員らの大半も後退を始めた。
「目に見えるものはない。だが、私はリーグを身代わりにはしない。それなら私が受けて立つ。それで充分追い出せるから」
「…なら、利用はしました?」
「していない」
きんきんと響く金鳴りが止まない。
耳を伏せて下に下がった尻尾の毛が逆立つ。
一歩引いて私も強化をかけた。
「…どうやって信じたらいいんですか?…信用ないのに」
「…答えがない」
「…日頃の行いが悪いからです」
「…それは、返す言葉がない」
威圧が強まりじわじわ下がった。
エヴの圧の強さに他の者が次々後ずさっている。
仰け反ったサライエはこれは予想外とばかりに手を宙にさ迷わせたまま口をパクパクさせて茫然と私達を見つめていた。
「…な、…な、なんで、あんたが、そんなに怒るんだ?」
その言葉にエヴがサライエの方へゆっくりと首を傾けた。
「私がリーグを好きだからですよ?」
周囲の多くがひゅっと息を飲んだ。
リーグを好きと言うことにどういう意味だと焦っている。
ここまで角を立てて私に逆らい宣言するから穿った見方をされている。
「リーグには7人のおチビちゃんがいるんですよ。リリアちゃんとルーナちゃんと双子のサラちゃんとテオ君と、グラディオ君とマイク君と、末っ子の赤ちゃんのカルラちゃん。お休みには家に帰ってお世話で忙しいんです」
唐突な家族の話題に団員らは目を白黒させながらエヴを見つめた。
「お兄様が怪我したと知ったらおチビちゃんが泣いちゃいます。きっと、お父様やお母様も。もし、団長のせいなら、リーグも悲しいですよね。私も悲しいです」
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