人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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「とりあえずいらん世話はやめろ」
エドが片付けた机に頬杖をついて忠告した。
「団長が今までになくものんびりされてるから心配なんですよ」
「そうですよ、彼らより先んじなくては。姫君にはもっと積極的に、」
「言っておくがプレッシャーになれば逃げる。めんどくさがりだ」
そう言って髪の毛をくしゃくしゃと軽く混ぜる。
すぐに、ああっと残念そうな悲鳴をあげるが手を振って反論は妨げる。
「お前らも余計なことは言うな。エヴは男女の機微や恋などとことん興味ない」
「そんなはずありませんよ。年頃の若い娘ですから。見目のよい男に囲まれて、すでにあの中で恋仲になってるのでは、」
「そうですよ。あの年頃ですから。いくらまだ起き上がれるようになって間もないとはいえ、」
心配をする二人にどう話したものかと首を捻った。
「三人の兄に囲まれているつもりだ。リーグも女ではなく子供か妹扱いするから好む」
中身はまだ10歳くらいだと言えば不可解そうに二人が戸惑っている。
「ご家族もあの三人もそのつもりで大事に育てている。成熟した見た目で判断するのはやめとけ」
若い男にちやほやされるより子供のいる慣れた男連中の方が仲がいいのがその証拠だ。
あの姿は姪が私に甘えていた時と被る。
もしかしたら影送りで現れた分身くらいの精神なのだと思えた。
そう思うと幼子に手を出した罪悪感から気持ちが沈む。
見た目に翻弄されているのはこいつらと変わらない。
「しかし、」
「ガード、くどい。リーグにも話を聞いてみろ。お前ならあいつの洞察力は分かるだろう?きっと私と同じことを言うはずだ」
今日は会いに行くのだろうと問えば納得しかねた顔を縦に揺らした。
「ふん、何にしろお前もエヴを気に入ったわけか」
番の発見に喜んでいたのは知っていた。
それがエヴの人となりを知った途端にこれだ。
「はい。ぜひに団長の奥様にと思っております」
「言いように扱われているのを見てか?」
「まさか」
メイス片手に追い詰められた話を蒸し返すとガードは失笑する。
隣のエドの笑いを堪えた表情からこいつにも話が伝わっていると分かった。
「長く団長のもとで勤めたいからです。団長は人狼ですから、そのためにも番は必要不可欠です。それに番にも色んな方々がおられると聞き及んでいます。その中でもあの方ならと思いました」
あと、うちのリーグを返してもらわねばなりませんと真面目に答えた。
「ああ、ご機嫌とりと思っていたのか。本人は戻る気だから安心しろ。エヴも我が儘を言う質じゃない」
番のご機嫌とりにリーグをクレインに譲ったと思っていたようだ。
私もあいつがいないと困るので引き渡すつもりは毛頭なかった。
それにもし無理にでもリーグを欲しがったら悋気を起こす。
また泣こうが喚こうが無視して押し倒す自信がある。
だが、性格上エヴは無理に移籍を望むことはしない。
だから私も豹変しないですむという安心感があった。
「向こうで鍛えてからと思っていた」
細かいことを説明するとガードが目を見開いた。
「なら私共が習いに行くのはどうでしょうか?」
意外な提案から前のめりになる。
専門部隊は陸上では何かと活躍がない。
それを払拭したいらしい。
船や水中を得意とする彼らはリーグより筋肉質な大柄ではあるが、団の中では細身が多い。
「早急に部内の意思を確認しろ」
「必要ありません。従わせます」
貴族籍の者は平民と混ざることを嫌う。
それに他領への移動は左遷扱いに当たるので喜ぶ者はいない。
平民の柔軟なリーグだから気軽に向こうへやったのだ。
そう思い、ガードの反応に目を見開く。
即決の返答から意思の固さを理解し、その場でジェラルド伯へ問い合わせの書類を書いてエドに渡すと、すぐ天幕を出て伝言に団員を呼び寄せた。
恩もあるから断られることはないはず。
あの忌々しいベアードも息子のこと以外ならめんどくさがりで應揚な性格なのでこういうことで反論はない。
むしろ生来の戦闘的な気質から喜んで受け入れるように思えた。
「団長、お迎えが来られました」
天幕の垂れの隙間からエドの声が聞こえた。
ガードが予定の者を呼び寄せますと清拭を手伝った若いのが走っていく。
待つ間、中へと招いた。
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