人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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専門家

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「ええ!なんで!」
「嫌ーっ!」
二人の非難にエヴが困ったと首をかしげた。
「当たり前でしょうが。二人とも何て格好してんのさ、この男所帯に」
「ここは身分の高い方のお屋敷なんだから若い娘がそんな格好で歩いて良いわけないだろ?」
「見たところ淫魔なんだろうけど、普通真っ昼間からここまで薄い格好しないよ。仕事着かい?」
「はあ?聞こえなーい」
「うるさいな、ばばぁ、ひっ!」
宥める二人に反抗を見せた瞬間、エヴに怯えて後ろへ後ずさった。
「…おばさま達に、失礼ね。…早く帰って」
ぱきぱきと音を立てて薄く顔に紋様が浮く。
「ひええっ」
「す、す、すいません。こ、こんな、まだ強い魔圧を抑えていたなんて、」
ふん、と不機嫌に鼻を鳴らして女人と共に衝立へ向かった。
抱き合って震える二人にヤンはため息を吐いた。
「早く行きなさい。力を貰おうなどと欲を出さずに」
力に寄せ付けられて上位種に集る者がいる。
溢れた魔力の刺激で能力が上がる。
だが、強すぎれば力に潰されて側に寄れない。
エヴは普段控えているから見誤ったようだ。
「だって、」
ぐずぐずする二人にヤンはこめかみを抑えた。
「斬るか?」
脅しに言ってみるとヤンは首を振った。
「斬れとは仰いませんでしたので、大人しく帰したいのでしょう」
「だが、邪魔だ」
「そうですね」
半笑いで返すと、私の様子にヤンも口角をあげて頷いた。
かちりと唾鳴りを立てて鞘から半身を出す。
悪乗りで唆した私も付き合った。
二人で光る刀身を見せびらかせば蝙蝠羽根は観念した。
「何よ!帰ればいいんでしょ!?帰れば!」
「やだ!せっかく合う方を見つけたのに!」
「あんたも見たじゃない?強すぎよ。私達、死んじゃうわ」
「やっと見つけたのに。あんただって喜んでたじゃないの?」
「そうだけど、あんな魔圧に晒されたら潰されちゃう」
「いつもじゃないみたいよ?気に入ってもらえれば側に置いてもらえるわ」
「こら、待て。お前ら」
勝手に話を進めるなと口を挟むとむすくれた二人がこちらを睨む。
「何よ、贄のくせに」
「耳と尻尾?犬の獣人?精が多いわね。濃い匂いがする」
ふんふんと鼻を鳴らしてこちらをじろじろと見つめる。
この見た目と精のかぎ分けが出来るのならそれなりに上位か。
「そっちも、牙があるから鬼族?でも角がない。混血だからかしら?」
「美味しそうよね、さすが尊き方だわ。側に贄をこんなに、」
矢継ぎ早の品定めに辟易した。
「うるさい!贄じゃない!」
不機嫌なエヴが衝立から怒鳴って、二人がひええっと叫んだ。
「帰ってと言ったでしょう?いつまでいるの?」
「やだ、お側にいたいですぅ」
「お願いしますぅ」
猫なで声の二人にエヴが衝立から顔を出して目を細めた。
「…サキュバスと、翼竜の混血ね。あなたはハーピィ?純潔種?精なんかいらないじゃない」
「…え?」
「…うそぉ、なんで?」
蝙蝠羽根の女が混血らしい。
鳥羽根の細身も見抜かれたショックで青ざめている。
手早く簡易のワンピースに着替えたエヴが衝立から出てくる。
「二人とも人は混じってないのね。なら、人の習慣が分からないのか。仕方ないけど、こっちは困るの。会いたいなら飛んで来るのやめて。それにもう少し人のことを学んでからにしてくれる?」
濡れた髪をまとめてもらいながら、目もくれずにおろおろする二人を無視していた。
「態度の悪い人は嫌いなの。人族の礼儀を学んで出直して」
そう言うのにいつまでももじもじと抱き合い、じっと黙りこむ二人に顔を向けてきつく睨み付けた。
業を煮やしたようだ。
「さっさと飛んで帰らないなら二人とも羽根をちぎるよ。いらないんでしょ?」
「ひえ!」
「きゃぁ!」
腰を抜かして飛ぶことも出来ない。
「言い過ぎですよ、お嬢様。分からないのなら仕方ないわ」
「種族の違いがあるからねぇ。怯えさせたせいで動けないみたいですよ?」
女人の取りなしにぶすくれたまま頷いた。
「…はーい」
エヴが端に置かれた篭から二枚の服を出して女人に渡した。
「そんな格好で外を飛ばれても迷惑だから二人に着せて」
「でも、羽が」
「あげるからいいよ。背中のところは切っていいから」
もう戻ると一言告げて1人風呂場から出ていく。
「ダリウス、付き添え。私は二人が出ていくのを確認してからにする」
「分かった」
「団長も行かれてください」
二、三こいつらに尋ねたかったが、一般人の前では憚られた。
エヴの見抜いた能力も表面上はクレインの特別な姫だからと簡単に片付けていても、内心は秘匿すべきことと察している。
「質問があったが、仕方ない」
「何を知りたかったんですか?」
部屋の隅で女人二人が魔人二人の着替えを手伝っている。
声の響く浴場だが、あちらに私達の小声は届いていない。
「あいつらの素性とか、他にも狙う奴らがいるのかとか。また同じようなのが来たら困る。何か予防になる話を聞けるならと思ったんだ」
「そうですね、確かに」
軽く帰せばいいと判断したが、こいつらの話で気が変わった。
「専門家を呼ぶか?」
「ええ、ラウルの意見を聞いてから外に放とうと思います」
ブラウンに指示を出してここへラウルを連れてくるように頼んだ。
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