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吹き抜け
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脱兎のごとく駆け出した二人を追って私も走った。
「あれはなんだ?!」
「贄狙いの淫魔かもしれません!」
ダリウスを先頭に城内を駆け抜けて女性を交えた数名とブラウンが血相を変えたこちらの様子に顔色を変えた。
「何事だ」
「怪しい有翼種二人が空を飛んでいた。エヴ様狙いかもしれない」
「だが、中からは何もまだ、」
「手遅れなら困る。確認に女性を入れてくれ」
「分かった」
すぐさまブラウンが扉を開いて決心した表情の女人を中へと促した。
すると、きゃあっと奥から甲高い悲鳴が響き衝立の倒れる音や人の転ぶ音が続き、中の喧騒からさすがに促された女性も強気な顔色を変えて私達のもとへ後ずさった。
「エヴ様、失礼します!」
「中から人を出す!お前らは待機しろ!」
「はい!」
得物を片手に三人で乗り込み、ブラウンも抜刀し後ろから従う。
中は借りた浴室と同様に天井が空まで吹き抜けになっていて明るい日差しが差し込んでいる。
衝立を下敷きに尻餅をついた女性とよつんばに震えながらもその辺の石鹸やブラシを片手に戦う気概を見せている女性が向かいに立つ有翼人二人に怒鳴り付けていた。
「なんだい!あんたたちは!出てお行き!」
真ん中のタイルで彩られた湯船の中にエヴが透ける水の中で、体を隠してながら首まで沈んでこちらを振り返った。
「ま、待って!皆、待って!」
待てと言われ足が止まった。
私は構えたままその場に留まったが、ダリウスとヤンは飛び込んで剣を振るった。
「さすが、尊き方。上質な贄をこんなに揃えてらっしゃるとは」
「本当に素晴らしいね。なかなか見ないよ、こんなに精が溢れた奴らは。お側で働こうと思ったのに出る幕がない」
「いや、ここでこいつらを手足を潰してしまおうよ。逃げられないようにすれば、手間が省けたと喜ばれるかもしれない」
二人は羽根を羽ばたかせて高く飛び上がり、私達へとうっそりと目を向けた。
「贄じゃない!みんなに乱暴したら許さないからね!」
怒鳴り付けるエヴに目を丸めて首をかしげた。
「尊き方、なんで怒ってるの?」
「皆に何かすると言うならその羽根を引きちぎるよ!」
圧を込めて、ざばっと水から立ち上がって身構えるが剥き出しの裸体に魔人以外の皆が慌てた。
「お嬢様!」
「エヴ様!」
一瞬エヴを見て慌てたヤンとダリウスは顔を背けて空の二人へ注視し、目を手で覆ったブラウンが庇っていたよつんばの女人を無理に立ち上がらせてどうにかしてくれと急き立てた。
布を掴んだ女人が走って、ざばざばと濡れるのも気にせず湯の中に入って、襲撃者から目をそらさないエヴの肩に大判の布を巻く。
肩にかける湯あみ用の浴衣をその場で着せた。
「メイスもちょうだい」
「受けとれ」
目についたメイスを掴みエヴへ投げた。
二本投げたが、一つを胸に抱きしめもうひとつは受け取り損ねて湯の中に水を跳ねながら沈んだ。
めんどくさそうに肩まで沈めて拾ってる間に魔人らは下に降りて膝まずいている。
ヤンとダリウスは二人の従順な態度を無視して警戒を解かずに切っ先を向けたまま動きに集中する。
「ずっとうるさかったのはあなた達よね?」
湯船に波を立たせながら上がると二人の前に立つ。
全身に濡れた薄い浴衣が張り付いてまだヤン達は顔をそらしている。
「あら、お気づきだったのね?反応がないからここまで来たんだけど」
黄金に輝く麦穂のような髪色を揺らして、薄い蜂蜜色の瞳を輝かせた女の魔人が首をかしげながら嬉しそうに笑った。
「尊き方にお会い出来るなんて。羽根をちぎられるのは勘弁だけど。ふふ」
似た髪色と濃い水底のような青い瞳を持つ隣の男も目を細めてエヴへうっとりと眼差しを向けた。
しかし、よく見れば女。
平らな胸と線の細い男に見える体つきだが、胸に軽く巻いた胸当てと股間の膨らみのなさ、晒した腹は女特有の括れだった。
精を求める淫魔だとは思うが、珍しく二人とも肌の色が薄く、蝙蝠羽根の方はよく見れば特徴の角が巻き毛の髪に隠れるほど小さい。
淫魔らしいのは秘部を隠すだけの薄い服装だけだ。
「敵意はないのよ、この人達」
エヴの言葉と二人の様子から顔を出来るだけ背けたヤンとダリウスは切っ先を下げた。
「お嬢様っ、何でもいいけどその格好!危険がないと言うならお着替えしますよ!ブラウン!早く衝立を戻して!」
「男は出て!そいつら、外に連れ出しとくれ!」
二人の女人がエヴをタオルやガウンでくるみ、ブラウンが急いで指示に従っている。
「待て待て、ややこしくなる」
従順なこいつらを連れ出せば、贄ではなく何の襲撃だと勘ぐられる。
「このまま帰ってもらえ」
吹き抜けの天井を指差した。
「そうですね、入ったところから出た方がよさそう」
私とエヴのやり取りに空を見上げて周囲も納得する。
「あれはなんだ?!」
「贄狙いの淫魔かもしれません!」
ダリウスを先頭に城内を駆け抜けて女性を交えた数名とブラウンが血相を変えたこちらの様子に顔色を変えた。
「何事だ」
「怪しい有翼種二人が空を飛んでいた。エヴ様狙いかもしれない」
「だが、中からは何もまだ、」
「手遅れなら困る。確認に女性を入れてくれ」
「分かった」
すぐさまブラウンが扉を開いて決心した表情の女人を中へと促した。
すると、きゃあっと奥から甲高い悲鳴が響き衝立の倒れる音や人の転ぶ音が続き、中の喧騒からさすがに促された女性も強気な顔色を変えて私達のもとへ後ずさった。
「エヴ様、失礼します!」
「中から人を出す!お前らは待機しろ!」
「はい!」
得物を片手に三人で乗り込み、ブラウンも抜刀し後ろから従う。
中は借りた浴室と同様に天井が空まで吹き抜けになっていて明るい日差しが差し込んでいる。
衝立を下敷きに尻餅をついた女性とよつんばに震えながらもその辺の石鹸やブラシを片手に戦う気概を見せている女性が向かいに立つ有翼人二人に怒鳴り付けていた。
「なんだい!あんたたちは!出てお行き!」
真ん中のタイルで彩られた湯船の中にエヴが透ける水の中で、体を隠してながら首まで沈んでこちらを振り返った。
「ま、待って!皆、待って!」
待てと言われ足が止まった。
私は構えたままその場に留まったが、ダリウスとヤンは飛び込んで剣を振るった。
「さすが、尊き方。上質な贄をこんなに揃えてらっしゃるとは」
「本当に素晴らしいね。なかなか見ないよ、こんなに精が溢れた奴らは。お側で働こうと思ったのに出る幕がない」
「いや、ここでこいつらを手足を潰してしまおうよ。逃げられないようにすれば、手間が省けたと喜ばれるかもしれない」
二人は羽根を羽ばたかせて高く飛び上がり、私達へとうっそりと目を向けた。
「贄じゃない!みんなに乱暴したら許さないからね!」
怒鳴り付けるエヴに目を丸めて首をかしげた。
「尊き方、なんで怒ってるの?」
「皆に何かすると言うならその羽根を引きちぎるよ!」
圧を込めて、ざばっと水から立ち上がって身構えるが剥き出しの裸体に魔人以外の皆が慌てた。
「お嬢様!」
「エヴ様!」
一瞬エヴを見て慌てたヤンとダリウスは顔を背けて空の二人へ注視し、目を手で覆ったブラウンが庇っていたよつんばの女人を無理に立ち上がらせてどうにかしてくれと急き立てた。
布を掴んだ女人が走って、ざばざばと濡れるのも気にせず湯の中に入って、襲撃者から目をそらさないエヴの肩に大判の布を巻く。
肩にかける湯あみ用の浴衣をその場で着せた。
「メイスもちょうだい」
「受けとれ」
目についたメイスを掴みエヴへ投げた。
二本投げたが、一つを胸に抱きしめもうひとつは受け取り損ねて湯の中に水を跳ねながら沈んだ。
めんどくさそうに肩まで沈めて拾ってる間に魔人らは下に降りて膝まずいている。
ヤンとダリウスは二人の従順な態度を無視して警戒を解かずに切っ先を向けたまま動きに集中する。
「ずっとうるさかったのはあなた達よね?」
湯船に波を立たせながら上がると二人の前に立つ。
全身に濡れた薄い浴衣が張り付いてまだヤン達は顔をそらしている。
「あら、お気づきだったのね?反応がないからここまで来たんだけど」
黄金に輝く麦穂のような髪色を揺らして、薄い蜂蜜色の瞳を輝かせた女の魔人が首をかしげながら嬉しそうに笑った。
「尊き方にお会い出来るなんて。羽根をちぎられるのは勘弁だけど。ふふ」
似た髪色と濃い水底のような青い瞳を持つ隣の男も目を細めてエヴへうっとりと眼差しを向けた。
しかし、よく見れば女。
平らな胸と線の細い男に見える体つきだが、胸に軽く巻いた胸当てと股間の膨らみのなさ、晒した腹は女特有の括れだった。
精を求める淫魔だとは思うが、珍しく二人とも肌の色が薄く、蝙蝠羽根の方はよく見れば特徴の角が巻き毛の髪に隠れるほど小さい。
淫魔らしいのは秘部を隠すだけの薄い服装だけだ。
「敵意はないのよ、この人達」
エヴの言葉と二人の様子から顔を出来るだけ背けたヤンとダリウスは切っ先を下げた。
「お嬢様っ、何でもいいけどその格好!危険がないと言うならお着替えしますよ!ブラウン!早く衝立を戻して!」
「男は出て!そいつら、外に連れ出しとくれ!」
二人の女人がエヴをタオルやガウンでくるみ、ブラウンが急いで指示に従っている。
「待て待て、ややこしくなる」
従順なこいつらを連れ出せば、贄ではなく何の襲撃だと勘ぐられる。
「このまま帰ってもらえ」
吹き抜けの天井を指差した。
「そうですね、入ったところから出た方がよさそう」
私とエヴのやり取りに空を見上げて周囲も納得する。
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