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装い
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それにしても、宰相と共に大公自ら来られるとは。
どなたが宰相と共に来たのか知らなかったが、食堂に訪れると先に来ておられた大公に一瞬目を見張った。
政治の前線を退かれて10年以上たつ。
若い団員が顔をはっきり知らないのは仕方がなかった。
宰相と大公も私の耳と尻尾に驚いて面白くなさそうに睨み、それを意に介することもなく知らぬふりと目をそらした。
一言、ジャケットなどのない簡易なシャツでの装いを謝罪をして、目の前に鎮座された大公と宰相へ目を伏せたまま黙して促された席についた。
ジェラルド伯の左隣、大公の向かいに座る。
大公からきつく非難する視線が続く。
ジェラルド伯も以前と同様に簡易の革鎧のままだった。私のことも含めて、有事ゆえと一言添えてくれた。
「給仕らの装備についてもお許し願います」
周囲に並ぶ、いかつく物ものしい身なりの彼らのことも一言添える。
面白くないのは服装ではないと理解した上でのお言葉だ。
彼らが私に向けるのは王家の末姫を選ばなかったという怒りだ。
あの羽根二人組の喧騒の後、ジェラルド伯の招待で晩餐のお供をすることになった。
話がどの程度進んだのか聞く暇はなかったが、こうやって食事をする程度には折り合いがついたのだと察する。
「そろそろ、お二人も参る頃です」
主賓席となる中央に腰かけたジェラルド伯の言葉に向こうとこちらの空いた席を見つめた。
大公と宰相を挟んで真ん中にひとつ空いている。
私の座る隣もふたつ空いている。
ロバート殿と誰か。
もしかしたら近々来られると話していた奥方が来られたのかと思ったが、それだと席次がおかしい。
考えた末、来れば分かることと目を伏せた。
「お待たせいたしました」
ロバート殿の声に軽く首を振り返る。
驚いたことにロバート殿はペリエ嬢をエスコートして現れた。
晩餐にふさわしくあるが華やかな衣装を一辺し、大人しい色合いの装飾の少ないドレスをまとっていたことが意外だった。
いつもの三人分はある幅のクリノリンスタイルからパニエを抑えた大人しいロマンチックスタイルだ。
華美を好むペリエ嬢の初めての装いに目を向けた。
「私の、恥ずかしい行いからクレイン辺境伯にご迷惑をおかけして、お父様と叔父様には大変ご心配おかけいたしました」
座る前に三人に頭を下げて謝罪をし、大公は立ち上がってロバート殿からペリエ嬢のエスコートを引き継いだ。
「もうひとり参りますので」
ジェラルド伯の言葉のあとすぐに声がかかった。
失礼いたします、とヤンの声が聞こえて振り返り、目を見開いた。
「お待たせして申し訳ありません」
涼やかな声が部屋に響いた。
流行りのクリノリンや定番のロマンチックスタイルとは違い古典的に見える裾の長いローブ型をした細身のワンピースだった。
装飾のない濃い深緑の無地と宝飾のひとつもない質素な装いから上品さが漂う。
パニエの膨らみもなく腰から下にストンと落ちた簡素なデザインはドレスと言うほど華やかさはなく落ち着いた雰囲気をまとっていた。
一歩歩けばスカートは自然とエヴの足にまとわりついて形のよい足腰を見せる。
ひらひら揺れる長い袖を引いてゆっくりと軽く頭を下げた。
濃い灰色の革紐が額を一周させて髪を一房まとめて複雑に編み込まれたそれは肩に垂れて揺れた。
立ち上がって入り口のエヴのもとへ向かった。
「エスコートを」
手を出すと鎧をまとい、手甲を装備をしているヤンの手から引き継ぎ、エヴの柔らかい手を腕に乗せて椅子へと案内する。
ヒールは履き慣れていないらしくよろけて私にもたれ掛かるのがまた可愛い。
隠せないほど、自然と尻尾が揺れてエヴはそんな揺れる尻尾に目を向けて楽しそうに目を細めた。
どなたが宰相と共に来たのか知らなかったが、食堂に訪れると先に来ておられた大公に一瞬目を見張った。
政治の前線を退かれて10年以上たつ。
若い団員が顔をはっきり知らないのは仕方がなかった。
宰相と大公も私の耳と尻尾に驚いて面白くなさそうに睨み、それを意に介することもなく知らぬふりと目をそらした。
一言、ジャケットなどのない簡易なシャツでの装いを謝罪をして、目の前に鎮座された大公と宰相へ目を伏せたまま黙して促された席についた。
ジェラルド伯の左隣、大公の向かいに座る。
大公からきつく非難する視線が続く。
ジェラルド伯も以前と同様に簡易の革鎧のままだった。私のことも含めて、有事ゆえと一言添えてくれた。
「給仕らの装備についてもお許し願います」
周囲に並ぶ、いかつく物ものしい身なりの彼らのことも一言添える。
面白くないのは服装ではないと理解した上でのお言葉だ。
彼らが私に向けるのは王家の末姫を選ばなかったという怒りだ。
あの羽根二人組の喧騒の後、ジェラルド伯の招待で晩餐のお供をすることになった。
話がどの程度進んだのか聞く暇はなかったが、こうやって食事をする程度には折り合いがついたのだと察する。
「そろそろ、お二人も参る頃です」
主賓席となる中央に腰かけたジェラルド伯の言葉に向こうとこちらの空いた席を見つめた。
大公と宰相を挟んで真ん中にひとつ空いている。
私の座る隣もふたつ空いている。
ロバート殿と誰か。
もしかしたら近々来られると話していた奥方が来られたのかと思ったが、それだと席次がおかしい。
考えた末、来れば分かることと目を伏せた。
「お待たせいたしました」
ロバート殿の声に軽く首を振り返る。
驚いたことにロバート殿はペリエ嬢をエスコートして現れた。
晩餐にふさわしくあるが華やかな衣装を一辺し、大人しい色合いの装飾の少ないドレスをまとっていたことが意外だった。
いつもの三人分はある幅のクリノリンスタイルからパニエを抑えた大人しいロマンチックスタイルだ。
華美を好むペリエ嬢の初めての装いに目を向けた。
「私の、恥ずかしい行いからクレイン辺境伯にご迷惑をおかけして、お父様と叔父様には大変ご心配おかけいたしました」
座る前に三人に頭を下げて謝罪をし、大公は立ち上がってロバート殿からペリエ嬢のエスコートを引き継いだ。
「もうひとり参りますので」
ジェラルド伯の言葉のあとすぐに声がかかった。
失礼いたします、とヤンの声が聞こえて振り返り、目を見開いた。
「お待たせして申し訳ありません」
涼やかな声が部屋に響いた。
流行りのクリノリンや定番のロマンチックスタイルとは違い古典的に見える裾の長いローブ型をした細身のワンピースだった。
装飾のない濃い深緑の無地と宝飾のひとつもない質素な装いから上品さが漂う。
パニエの膨らみもなく腰から下にストンと落ちた簡素なデザインはドレスと言うほど華やかさはなく落ち着いた雰囲気をまとっていた。
一歩歩けばスカートは自然とエヴの足にまとわりついて形のよい足腰を見せる。
ひらひら揺れる長い袖を引いてゆっくりと軽く頭を下げた。
濃い灰色の革紐が額を一周させて髪を一房まとめて複雑に編み込まれたそれは肩に垂れて揺れた。
立ち上がって入り口のエヴのもとへ向かった。
「エスコートを」
手を出すと鎧をまとい、手甲を装備をしているヤンの手から引き継ぎ、エヴの柔らかい手を腕に乗せて椅子へと案内する。
ヒールは履き慣れていないらしくよろけて私にもたれ掛かるのがまた可愛い。
隠せないほど、自然と尻尾が揺れてエヴはそんな揺れる尻尾に目を向けて楽しそうに目を細めた。
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