人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

文字の大きさ
252 / 315

ブラコン

しおりを挟む
久々、と言うわけではない酒宴は大盛り上がりだ。
噂に聞いた通りベアードとダリウスが樽を抱えて飲み比べして、イグナスも中に混ざっている。
誘われたらしい魔導師長とラウルも参加して、ラウルはダリウスとヤンの話を聞いてブチキレた。
「お前らぁ!俺がいない間に!」
元気になったら術式ぶち込んでやると怒鳴り散らすから逃げる二人を庇ってエヴが宥める羽目になった。
背の近いエヴが頭を抱き締められて悔しそうにするが大人しくなり、団員らに囲まれて酒を飲むジェラルド伯に直談判しに行った。
酒を飲んでいつもより上機嫌なジェラルド伯はあっさり了承した。
「どうせ言いに来ると思ったからよい。グリーブス団長とてそうでございましょう?」
諦めに首肯するとイグナスが先導して賭けの話題に盛り上がり、魔導師長も喜んで参加し始め、このところ体調の悪かったスミスがショックで倒れている。
飲む前から倒れたと一角で騒ぎになり、誰か介抱してやってるようだ。
「ラウルまで側仕えから外れるのぉ?!」
嫌だとごねるのはエヴだけだ。
「だめ!ラウルだけでも側にいてよ!」
「外れないなら俺だけ選ばれないってことじゃないですか!いくらエヴ様のお願いでも嫌ですよ!」
「ラウルまで嫌だぁぁ!馬鹿ぁ!」
ロバート殿に目掛けて走り出したのをひょいっと捕まえて胸に抱えると回りが驚きの歓声を上げた。
「やぁだぁ!お兄様がいいの!団長じゃないです!」
身をよじるの簡単に膝に丸めた。
夫人のむやみに怪我をさせるなという忠告が効いているようだ。
強化をかける気配はない。
「兄離れだ。エヴがそうやってロバート殿を独占していたら新しい姉上が面白くなかろう。見つかるものも見つからない」
「う、」
「妹を離してください!」
珍しくがなるロバート殿に笑ってだめだと言い返す。
「大公のシスコンを目の当たりにしてジェラルド伯と夫人は考えを改めたのでしょう」
「な、」
図星に呻いて父親のジェラルド伯へ顔を向けると渋面に首肯する。
「お互いに兄妹離れの時期ですよ」
「だからと言って、人前で抱き抱えるのは止めてください!」
「失礼、どうやら酒が入っているせいで堪え性がないようです」
「いやぁ!くすぐったい!」
うなじに顔を埋めるとバタバタと足を揺らした。
「団長、いい加減エヴ様への手荒を止めてください」
ますます目をつり上げるロバート殿の他にヤン達三人が気色ばんで睨むが鼻であしらう。
「ロバート殿もだが、お前達はまた同じことを繰り返すか?今、手を離したらまた兄にべったりだ。お前らは止められないだろう?」
「う、」
三人の図星にまたふんと鼻を鳴らして近くの杯を取ってエヴに持たせた。
上官の飲酒場所にはラグや座椅子が置かれて私はあぐらにエヴを乗せてバタつかせていた足先に私の足を乗っけて押さえていた
「飲んどけ」
「むうう」
唸りながらもちびちび飲む。
ついでに尻尾を寄せて抱きつかせてやると抱き枕代わりにがっしり握って顔を埋めたりと遊び始めた。
止めようと思えばジェラルド伯が止められる。
しないところを見ると黙認を選ぶようだ。
夫人の一言はかなり重かったと分かる。
同じように察したロバート殿も不機嫌に向かいに胡座で座ると杯を掴んで煽った。
「団長が一枚上手だ」
ベアードが樽を二つ抱えて寄ると、一つをダリウスに持たせた。
「飲んで勢いでもつけろ」
笑うベアードを睨みながらやることもなしにダリウスも樽を傾けて飲み始めた。
この険悪な空気の中、気にせず割り込んでロバート殿にも杯を注ぐ。
「…団長ばかり、ズルい」
「ズルくはないなぁ。賢しいだけだ。お前らも知恵を使え」
恨めしげなダリウスにベアードは、年の功だろうなと笑うのを私もそうかもなと返す。
果物をヤンに渡して剥いてやれと頼むと渋々剥き始めた。
エヴは体調が万全ではないから果実水を飲ませている。
杯の中に柑橘や果物を絞って入れてやった。
トリスが側にいて注いだり、エヴの食べ物を選んだりと忙しい。
抱っこは嫌がらなくなったので手を緩めるとそのまま膝に鎮座して私を椅子代わりにくつろいでいる。
子供のようにごろっと胸に背中を当てて尻尾を手繰り寄せた。
「そんなに引っ張ると痛い」
「ごめんなさい」
「やはり襟巻きに」
「い、嫌だってばぁ」
「はは、そうか」
怯むのが面白くて顔が緩んだ。
尻尾に顔を埋めているので上から手で押さえて顔をくしゃくしゃと混ぜると鼻が痒かったらしくくしゃみをする。
「うえっく、くしゅっ!ああ、もう!団長がそんなことするから、ずび、」
鼻水出たと尻尾で隠した。
「うおお、それは、悪かった」
いらんことをしたと反省しつつ、トリスから手拭いを貰ってエヴの顔を拭いたらごしごしと尻尾を拭く。
拗ねたエヴは膝から降りてロバート殿の隣に座った。
酒が回ってることもあり、皆はいい気味と笑ってはしゃぐ。
「あはは!さすがに鼻水は嫌でしたか」
顔の赤いロバート殿は今までにないくらい破顔し喜んだ。
「小さい頃からお世話をしていたので慣れてますけど、大きくなるとそうですよね」
「そうだなぁ、小さいうちだ」
ヤンとダリウスが納得するのをエヴが不貞腐れながら睨む。
「好きで鼻を垂らしたんじゃないんだからね」
つんとそっぽを向いて怒るが、子供っぽさに皆が笑う。
「やっぱりお嬢様は可愛いなぁ、うちの子になりましょうよ?」
「三人のうちの誰かかぁ。それならクレインに残る。王都に行ったら寂しい」
いつもより乱暴に頭を抱き寄せて身体が傾く。
「お、お兄様、酔ってます?」
「うん、ちょっと勢いに任せて飲みすぎた」
強引に頬擦りするロバート殿に戸惑って目がキョロキョロしていた。
「や、ヤン」
「だめ」
思わず助けを求めたのか手がヤンへと向くのに羽交い締めにして離す気がない。
斜めに崩れたエヴの体勢が苦しそうでどうしたものかと首をかしげた。
ベアードも事の成り行きに困ったと眉をしかめた。
「坊っちゃん、お嬢様が苦しそうですよ?」
「…んー、そうか」
手を緩めるがお腹に手を添えて引きずって膝に乗せるとそのまま杯を傾けて飲み続ける。
「…お兄様、降りたいです。子供扱い嫌ですよ」
もじもじと膝を揺らして身をよじるのにロバート殿はだめと一言だけ答えた。
「ここにいなさい」
「…はぁい」
溺愛が濃い。
エヴも戸惑いながらも満足そうに引っ付いている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...