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うわばみ
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「兄弟愛が強いのですね」
新しく割り込んできたのは魔導師長だ。
「あ、また。いいんですか?姿を変えなくて」
エヴが驚いて顔を覗く。
「無礼講ですよ」
顔を擦りながら上から覗き込んで隙間からエヴへ顔を晒す。
「昼間、ほぼ見られてしまったのに今さら」
色気のある顔を緩ませて笑うとエヴも笑った。
「魔導師長は綺麗ですね」
「ふふ、お褒めに預かり光栄です。レディ」
「妹にちょっかい出さないでください」
「むぎゅ、」
魔導師長を睨みながらエヴを懐に隠すように頭を押しやる。
「お話ししてるだけですよ」
のっそりとロバート殿の隣に座り、アルコールの入った水差しを杯へ傾けた。
流れのままに杯を傾けエヴの杯にも注ぐので止める。
「エヴ、まだ体調が戻っていないから飲むのはやめとけ」
「はぁい」
何よりこいつから飲み物を受けとるのは危険な気がしてロバート殿にも忠告したかったが、酔って強気な様子から逆に危うい気がして黙って二人のやり取りを注視した。
早いペースでいくつも杯を重ねる二人に内心はらはらしながら眺めて、酔いが大きくなったロバート殿を見かねた。
樽を抱えて泰然と飲み続けるベアードの肩を叩いた。
「ベアード、魔導師長とロバート殿に気を付けろ」
「何がですか?」
「一服盛られても知らんぞ。魔導師長は気に入った人間を誘惑するのが趣味だ」
そのまま堕落させてサバト行きだ。
「禁止でしょうに」
目を丸めてこちらを見るが首を振った。
「酒の席でたがが外れるかもしれん。黒は掟破りを好む。守るのは種族の掟だけだ」
おそらくそれも魔力や能力を守るためのものだ。
「分かりました。ヤン、手伝え」
のそっと動いて輪から離れると数人連れて魔導師長へと絡みに行った。
クレインの者も連れているが、うちの団の見目のいいのも見繕ってきた。
魔導師長は一瞬眉をひそめたが、ベアードとヤンの誘いに乗って席を移動する。
「ロバート殿」
一服飲まされた心配から側に寄るとエヴを抱き締めたままうつらうつらと頭が船を漕いでいる。
もともと酔った気配が強かった。
何か飲まされたのかうわばみな魔導師長のペースに乱されたのか分からなかった。
そっと肩を引いて横に寝かせた。
エヴも膝を降りてこちらの動きに合わせてゆっくり動く。
「こちらをどうぞ」
トリスがクッションを持ってきたのでエヴがロバート殿のために整えている。
「酔って眠ったのは初めてです。お疲れなのかな」
「かもな」
側のラウルを呼び寄せて探知を頼むとただの飲みすぎと苦笑いをこぼした。
「団長にもしてあげましょうか?探知」
「ついでに何か打ち込むつもりだろう。遠慮する」
「ちっ」
「さすがに勝手に何か打ち込んだら家を通して苦情を入れるからな」
「分かりました」
忠告に眉をしかめながら頷く。
「短慮だ」
「ふん」
そっぽを向いて不貞腐れるのを呆れて眺め、気づけばその後ろから何人か水差しを持ってにじり寄る。
「またエヴ嬢とイチャイチャして!」
「ズルいです!」
「飲んでください!」
さっきまで遠巻きに見ていたくせに酔った勢いで集まってきた。
やめろと言うが水差しをエヴに持たせてじゃんじゃん注いでくださいと囃し立てた。
きょとんととしながら私の杯へ注ぐ。
「団長、どうぞ」
そうなると大人しく飲む。
団員らも調子に乗って次々酒を持ってきてエヴから私へ飲ませようとする。
「大丈夫ですか?」
戸惑うエヴが注ぐのをやめるが、今さら遅い。
ぐらんぐらんと揺れる頭を抱えて前のめりになる。
率先してエヴに水差しを持たせていたラウルとダリウスを睨むとにんまり笑っていた。
「このやろ」
頭に来たのでダリウスを捕まえて引き倒した。
樽を一つ飲み干して酔っているダリウスも咄嗟に動けず目を丸くして驚いていた。
そのまま私と変わらない体格を肩に担いでぽかんとする魔導師長のもとにダリウスを投げつける。
「処女の童貞だ。好きにされよ」
「お、好みだ」
ぺろ、と舌を出して目を回したダリウスの首に腕を巻いている。
「最近、厳ついのが楽しい」
「ちょ、ちょ、」
ちょっと待てと言いたいのだろう。
「ダリウス、男は好みか?女にもなれるぞ?白くていい牙だなぁ。舐めたら気持ち良さそう」
地位が上の魔導師長相手にどうしいいか分からず固まって、隣でベアードが腹を抱えて笑っている。
子供が可愛いと言っても貞操を守ってやるほどの過保護ではないらしい。
「接待だ。よく勤めをこなせ」
ほったらかして次は飲んでいたスミスを拾って戻る。
「え?え?」
首根っこを引きずって戻ると、スミスの存在に慌てて立ち上がろうとするラウルに投げつけた。
怪我していて俊敏には動けない。
「ほら、会いたがっていたろう?怪我人だから手荒にするなよ」
「ラウルゥゥゥ!」
「やーめーろー!」
酔った勢いで抱きついてくるのを怒鳴りながら抵抗している。
「術式でも打ち込め」
笑うとラウルがぎゃあぎゃあ騒いだ。
「こいつは同族だから俺の術式に耐性があるんだよ!しかもかなり強めの耐性持ちだ!」
「良いことを聞いた」
通りで術式で全て片付けるこいつがスミスには何もしないわけだ。
「相変わらず口が軽い」
納得に頭を揺らすとこちらは無視してスミスに怒鳴り付けていた。
「倒すな!ばかやろぉ!」
「心配だったんだ!会いたかったんだ!離すもんか!」
半ば押し倒されているラウルを見ていい気味と鼻で笑った。
ダリウスやヤン目当てで集まっていた奴らにも発破をかけてやろう。
「お前らも今日くらいだぞ。二人のダンス相手にあぶれた奴。ほら、行け。スミスを見習って酒の勢いで押し倒してこい」
とことん無礼講だと声をかけると数人が色めき立って動き出した。
「なんで私まで」
ヤンの慌てた声が聞こえて見ると立ち上がって逃げていく。
「男は趣味じゃない。王都は相変わらずか」
ジェラルド伯は苦笑いにこの光景を眺めていた。
側にエドもいた。
憧れの君と飲めて舞い上がっている。
よく見るとエドと同世代が集まってジェラルド伯を囲んでいた。
ご自身のあまり変わらない状況には気づいてないようだ。
新しく割り込んできたのは魔導師長だ。
「あ、また。いいんですか?姿を変えなくて」
エヴが驚いて顔を覗く。
「無礼講ですよ」
顔を擦りながら上から覗き込んで隙間からエヴへ顔を晒す。
「昼間、ほぼ見られてしまったのに今さら」
色気のある顔を緩ませて笑うとエヴも笑った。
「魔導師長は綺麗ですね」
「ふふ、お褒めに預かり光栄です。レディ」
「妹にちょっかい出さないでください」
「むぎゅ、」
魔導師長を睨みながらエヴを懐に隠すように頭を押しやる。
「お話ししてるだけですよ」
のっそりとロバート殿の隣に座り、アルコールの入った水差しを杯へ傾けた。
流れのままに杯を傾けエヴの杯にも注ぐので止める。
「エヴ、まだ体調が戻っていないから飲むのはやめとけ」
「はぁい」
何よりこいつから飲み物を受けとるのは危険な気がしてロバート殿にも忠告したかったが、酔って強気な様子から逆に危うい気がして黙って二人のやり取りを注視した。
早いペースでいくつも杯を重ねる二人に内心はらはらしながら眺めて、酔いが大きくなったロバート殿を見かねた。
樽を抱えて泰然と飲み続けるベアードの肩を叩いた。
「ベアード、魔導師長とロバート殿に気を付けろ」
「何がですか?」
「一服盛られても知らんぞ。魔導師長は気に入った人間を誘惑するのが趣味だ」
そのまま堕落させてサバト行きだ。
「禁止でしょうに」
目を丸めてこちらを見るが首を振った。
「酒の席でたがが外れるかもしれん。黒は掟破りを好む。守るのは種族の掟だけだ」
おそらくそれも魔力や能力を守るためのものだ。
「分かりました。ヤン、手伝え」
のそっと動いて輪から離れると数人連れて魔導師長へと絡みに行った。
クレインの者も連れているが、うちの団の見目のいいのも見繕ってきた。
魔導師長は一瞬眉をひそめたが、ベアードとヤンの誘いに乗って席を移動する。
「ロバート殿」
一服飲まされた心配から側に寄るとエヴを抱き締めたままうつらうつらと頭が船を漕いでいる。
もともと酔った気配が強かった。
何か飲まされたのかうわばみな魔導師長のペースに乱されたのか分からなかった。
そっと肩を引いて横に寝かせた。
エヴも膝を降りてこちらの動きに合わせてゆっくり動く。
「こちらをどうぞ」
トリスがクッションを持ってきたのでエヴがロバート殿のために整えている。
「酔って眠ったのは初めてです。お疲れなのかな」
「かもな」
側のラウルを呼び寄せて探知を頼むとただの飲みすぎと苦笑いをこぼした。
「団長にもしてあげましょうか?探知」
「ついでに何か打ち込むつもりだろう。遠慮する」
「ちっ」
「さすがに勝手に何か打ち込んだら家を通して苦情を入れるからな」
「分かりました」
忠告に眉をしかめながら頷く。
「短慮だ」
「ふん」
そっぽを向いて不貞腐れるのを呆れて眺め、気づけばその後ろから何人か水差しを持ってにじり寄る。
「またエヴ嬢とイチャイチャして!」
「ズルいです!」
「飲んでください!」
さっきまで遠巻きに見ていたくせに酔った勢いで集まってきた。
やめろと言うが水差しをエヴに持たせてじゃんじゃん注いでくださいと囃し立てた。
きょとんととしながら私の杯へ注ぐ。
「団長、どうぞ」
そうなると大人しく飲む。
団員らも調子に乗って次々酒を持ってきてエヴから私へ飲ませようとする。
「大丈夫ですか?」
戸惑うエヴが注ぐのをやめるが、今さら遅い。
ぐらんぐらんと揺れる頭を抱えて前のめりになる。
率先してエヴに水差しを持たせていたラウルとダリウスを睨むとにんまり笑っていた。
「このやろ」
頭に来たのでダリウスを捕まえて引き倒した。
樽を一つ飲み干して酔っているダリウスも咄嗟に動けず目を丸くして驚いていた。
そのまま私と変わらない体格を肩に担いでぽかんとする魔導師長のもとにダリウスを投げつける。
「処女の童貞だ。好きにされよ」
「お、好みだ」
ぺろ、と舌を出して目を回したダリウスの首に腕を巻いている。
「最近、厳ついのが楽しい」
「ちょ、ちょ、」
ちょっと待てと言いたいのだろう。
「ダリウス、男は好みか?女にもなれるぞ?白くていい牙だなぁ。舐めたら気持ち良さそう」
地位が上の魔導師長相手にどうしいいか分からず固まって、隣でベアードが腹を抱えて笑っている。
子供が可愛いと言っても貞操を守ってやるほどの過保護ではないらしい。
「接待だ。よく勤めをこなせ」
ほったらかして次は飲んでいたスミスを拾って戻る。
「え?え?」
首根っこを引きずって戻ると、スミスの存在に慌てて立ち上がろうとするラウルに投げつけた。
怪我していて俊敏には動けない。
「ほら、会いたがっていたろう?怪我人だから手荒にするなよ」
「ラウルゥゥゥ!」
「やーめーろー!」
酔った勢いで抱きついてくるのを怒鳴りながら抵抗している。
「術式でも打ち込め」
笑うとラウルがぎゃあぎゃあ騒いだ。
「こいつは同族だから俺の術式に耐性があるんだよ!しかもかなり強めの耐性持ちだ!」
「良いことを聞いた」
通りで術式で全て片付けるこいつがスミスには何もしないわけだ。
「相変わらず口が軽い」
納得に頭を揺らすとこちらは無視してスミスに怒鳴り付けていた。
「倒すな!ばかやろぉ!」
「心配だったんだ!会いたかったんだ!離すもんか!」
半ば押し倒されているラウルを見ていい気味と鼻で笑った。
ダリウスやヤン目当てで集まっていた奴らにも発破をかけてやろう。
「お前らも今日くらいだぞ。二人のダンス相手にあぶれた奴。ほら、行け。スミスを見習って酒の勢いで押し倒してこい」
とことん無礼講だと声をかけると数人が色めき立って動き出した。
「なんで私まで」
ヤンの慌てた声が聞こえて見ると立ち上がって逃げていく。
「男は趣味じゃない。王都は相変わらずか」
ジェラルド伯は苦笑いにこの光景を眺めていた。
側にエドもいた。
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