人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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診断

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意識が落ちたのはほんの少しだと思ったのに。
窓から差し込む光は明るい。
まだ先程と同じ床の上。
うつ伏せのまま顔だけ動かした。
身体が重い。
部屋に漂うエヴの匂いも変わらない。
気を失ったからとソファーかどこかの部屋に運ばなかったらしい。
手を引きずって手首を目視すると強化を封じる呪符が幾重にも巻かれていた。
紐状に布と紙がぐるぐる巻かれて。
ラウルの呪符と魔導師長の特製がいくつも。
首を触るとそこにも。
もう片方の手を確認するとそちらにも。
服と鎧は脱がされて手のひらと穴の空いた腹には手当ての跡。
手抜きで服の上から包帯を巻いて軽く止血していたのに。
呪符と上半身を裸に剥かれた姿に陛下からこの部屋で大人しくろとと言う意味を汲む。
後ろにある長椅子。
ゆっくり起き上がってエヴの方へ振り向く。
「カリッド、おはよう」
顔色の悪い魔導師長がエヴの側で治療を続けていた。
今は顔の治療らしい。
椅子に腰かけて顔に手をかざしている。
「魔導師長、エヴの具合は?」
「可哀想に。美しいレディの鼻と頬が折れている。でも私が治療したからもとに戻るよ」
安心していいよと答えた。 
「大まかなのは取れたんだけどねぇ。破片はもう少しかかるかなぁ。細かい破片が多くて」
ちらっと動いた目線に近衛隊長も使うという意味が混じる。
「ヤン達は?」
「彼らも怪我がひどいからねぇ。別室で近衛隊長が治療しているよ」
ハイエルフと分かる前。
近衛隊長かそんなに強いとは思わなかった。
魔導師団に所属してから近衛部隊に移動した。
精神汚染の耐性の強さと魔法と術式はきいていたが、治療や高等魔法など把握していない。
幻術で顔を変えてあの魔導師長を欺き続けて、ハイエルフということを今まで隠していた。
ひとりがけの椅子に腰かけて魔導師長の背中と腫れた顔のエヴを見つめた。
魔導師長がエヴから手をおろしたタイミングで戦いぶりを尋ねた。
どうやったのか気になった。
もし逃げたら私が追いかけて処分するつもりだから情報が欲しい。
本音を言えば、すぐにでも処分したい。
魔導師長はきつそうに額の汗をぬぐいながら立ち上がってソファーへ移動した。
「さすがハイエルフだね。私の使い魔に気づいていた。虫が知らせた場所に向かったら待っていたよ。王宮のホールで。様子がおかしかったので洗脳は分かった。洗脳されると能力が制限されて単調な動きが増えるのに」
テーブルに置かれたグラスの水を飲んだら軽く背伸びをして身体をほぐす。
「私の精霊達が奪われて、魔法縄も紙のように破られる。予防の術式と魔法をかけていたのにダリウスが近衛隊長の洗脳にかかった。ラウルとヤンはかなり耐性があるねぇ。ダリウスもかかったとはいえ。ヤンに剣を振り下ろそうとした瞬間、自分の肩に刺して己を戻した」
「よく勝てましたね」
「ラウルのおかげだね。昔、近衛隊長に隷従の呪いをかけていたらしい。真名を刻んで捕まえた。呪いが弾かれる前に私とラウルで解呪したよ」
術式と魔法の組み合わせがどうの、仕組みがどうだとうるさくなったのでもういいと断った。
「陛下は何と仰っていますか?今はどちらに?」
「公表するのは問題が多いから通常通り過ごされている。今なら早朝の謁見の支度だよ」
デオルトと羽根二人が手伝っているそうだ。
「サキュバスの、モルガナだったかな。あの子が朝食の支度をしたよ。あの子、料理が上手だね。味見したらおいしかった」
私の分はカートにあると指をさした。
「食事の前に、先に手を出してくれるかい?」
視線は怪我した手を見つめるので黙って手を向けた。
包帯を外して懐から瓶を取り出して晒した傷に数滴垂らす。
手をかざして呪文を唱えるとかかった液体が小さな人形の少女の形を成して傷を覆った。
「しばらくそうしていなさい。切れた筋肉と折れた骨を繋ぐから」
皮膚の下がチクチクと疼く。
「これも精霊ですか?」
「水のね。この子はそういうのが得意だから」
「これが白の力ですか?」
「一部だね。白なら木の精霊からも上手く治療の能力が引き出せるよ」
「そうですか」
「集中するから黙って」
お互い静かに魔導師長のかざす手を見つめた。
かざした手を下げると小さな水の少女が、とろっと溶けてテーブルに水滴が落ちた。
「すぱっと切れてたから楽だった。あとは綺麗に戻るよ。よかったね」
もう疲れたと背もたれに身体を預けて深く沈む。
「余裕があるならレディに精を注いであげるといい。精が少なくてお腹を空かせている」
指をさしてニコニコと黙っている。
睨み付ける私の顔を見たらすぐに立ち上がり部屋を出ていった。
去り際に君は露出趣味がないから残念と言っていた。
あのじじいも懲りない。
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