人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

文字の大きさ
300 / 315

拒絶

しおりを挟む
夜更けにグリーブスの精鋭を連れた父と兄が王宮へ駆けつけた。
部屋には父と兄だけが入室した。
知らせていたことなのに私達の様子に目を丸くする。
迎えに行ったワイバーン三頭。
人数は16人ほどだそうだ。
「陛下、カリッド。知らせを聞いて驚きました」
「父上、兄上、よく駆けつけてくださった。ありがとうございます」
陛下は寝転んだままなことを謝罪する。
すぐに城内で倒れている者の回収と今夜の護衛を陛下は指示されて父達はすぐに対応に当たる。
私もそろそろ動けそうな身体の気配にのそのそと床から半身を起こす。
多少の目眩だけでなんとか動けた。
ごっそり吸われたが自分の回復が早いのかあいつに手加減されたかどちらか判断つかない。
胡座をかいて起き上がった私の側に父が近寄ってきて膝まづいた。
「カリッド、その耳、尻尾も」
よかったなぁと私に似た顔の父は涙ぐんでいた。
「あちらの女性がお前の番か?」
治療を受けるエヴへ顔を向けた
長椅子に寝かされ裸体にはシーツをかけて。
ダリウスがかけられたシーツを少しだけ持ち上げて魔導師長と近衛隊長がその隙間から手を差し込む。
二人ともぶつぶつと精霊に話しかけている。
からん、からんとガラス片の無機質な音も続く。
「ご無事なのか」
「命はなんとか」
顔の殴打。左半身は大量にガラスや木片が刺さってる
「そうか、必要なものはすぐに揃える」
「ありがとうございます」
ここの護衛に父が残り、兄が部下の采配に同行した。
兄は行く前に私の頭をぐしゃぐしゃと無言で撫でていった。
座りこけるほどじゃなくなったので父と同様に立って警護に当たることにした。
しばらくするとデオルトが差し入れのお茶と軽食、患部の洗浄用の新しい水、手当て用の布をカートで届けに来た。
デオルトと一緒に新しい水を魔導師長のもとへ運んだりと動く。
彼らの隙間からエヴの様子を確認すると脂汗を流して真っ青な顔。
気絶していても苦しげに眉はしかめて破片が抜ける時に小さく呻き声がこぼれる。
「ヤン、ドレインを頼む。もう魔力が戻ってきた。食い込んだ破片が固くて抜けない」
その言葉にすぐさまヤンが駆け寄る。
「回復が早すぎる」
「エヴ様にはいつも通りです」
呆れる魔導師長の言葉にヤンは真面目に返す。
「う、えっ、気持ち、悪い、うう、く、苦しい」
魔力枯渇の吐き気に目を覚ましたようだ。
「ひ!いやだぁぁぁ!」
いきなり目の前の近衛隊長の顔を蹴飛ばして長椅子から転げ落ちた。
ヤンが床を這って逃げるエヴを慌てて追いかけて剥がれかけたシーツにくるんで抱き止める
「エヴ様!落ち着いて!私です!ダリウスもラウルもいます!もう何もありません!」
「ああああっ!やだぁ!なんでその人がここにいるのぉ!いやだぁ!」
ヤンのドレインで、かくんと頭から前のめりに崩れた。
顔をあげることも出来ず、力なく倒れるのにそれでも近衛隊長を指さして何かを訴える。
鼻血を出しながら近衛隊長は素早く土下座をしていた。
「治療が終われば首をはねてください」
魔導師長はちらっと近衛隊長を見つめてすぐにヤンにエヴを長椅子に戻せと指示を出す。
「エヴに何をした?」
「カリッド、待て、やめろ」
そう問いかけると陛下が遮る。
父の介助で身体を起こしている。
恐れを抱いた表情で陛下は私と近衛隊長を見つめる。
「言えません。ただ殺してください」
エヴの反応。
こいつの黙秘。
陛下の擁護。
大股で近衛隊長に近寄って丸めた背中に顔を寄せた。
ひくひくと鼻を鳴らして何が起きたか分かった。
陛下から匂ったほどの。
エヴの血と身体の匂い。
シルファヌスと混ざった。
同じことをした。
背中をむんずと掴んで片手に高く持ち上げて床に叩きつけた。
それだけでも気がすまず足で蹴飛ばす。
転がったのを追いかけてまた掴む。
このまま何度も叩き潰そう。
いや、首をねじきるか。
「やめろ!」
陛下の言葉に父が素早く私から近衛隊長を奪い、私の手首を掴んで身体を放り投げた。
「ぐっ!」
背中に床の衝撃。
絨毯を敷かれていても叩きつけられた衝撃はかなり強かった。
すぐに跳ね起きてもう一度父が庇う近衛隊長を狙う。
剣を抜こうと鞘から半身を出したのに父が足先で柄を握った手首を蹴り飛ばしてそのまま踵を股関節に叩き込まれる。
痺れる衝撃のせいで片膝が簡単に崩れた。
もう一度と動く足で勢いつけて懐に飛び込むのに今度は前屈みに頭から突進した私の顎に膝が入った。
前のめりに崩れるが、それでも止まる気はない。
利き手と利き脚が痺れてすぐには使えない。
それでも痺れているだけで動けない訳じゃない。
まだいける。
次の手だと思考を巡らせた瞬間、足から何か絡んできた。
「この、」
魔導師長の魔法縄。
足もとから伸びたそれは下半身に絡んで腹まで昇ってくる。
千切ろうと掴むとまたそれが枝分かれして網状に腕や肩にまで広がった。
顎に膝を食らって床に倒れる一瞬の出来事だ。
どすん、とみの虫のよう転がって、父は床にうつ伏せに倒れた私の首に足を乗せて押さえつけている
少しでも動けば絞められた。
「ふ、ううっ」
「本気を出すのはやめてくれ。私はもうお前には敵わないんだから」
動いてないのに。
ぎりぎりと足で首を踏まれて息が出来ない。
確かに剣の腕は私だ。
だが、父とはこうやってまだ体術で拮抗する。
しかも魔導師長まで助力するならこれ以上は難しい
「魔導師長、ご助力に感謝します」
「いえいえ、お困りのようでしたので」
二人ともにこやかな声だ。
まだ父は足を緩める気はないらしい。
逆に強まる。
頸動脈の圧迫で意識が飛んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

処理中です...