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守護神
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今はとにかく人手が足らない。
中の安全が確保されたので窓から羽根の二人組を呼び寄せた。
倒れた使用人や近衛兵の代わりに羽根とヤン達が動く。
「お前らも怪我をしている。羽根に任せろ」
「エヴ様に比べれば」
ダリウスは肩から利き腕に怪我しているらしい。
包んだ包帯に血が滲んでいる。
ヤンも腹には包帯。
片足を引きずりながら歩いている。
近衛隊長も魔導師長と共にエヴの治療に当たっていた。
ハイエルフだ。精霊は扱える。
ダリウスとラウルは近衛隊長を殺したがった。
こいつのせいだとラウルががなりたてダリウスも否定せず頷いた
柄に手を添えてヤンの許可を待った。
「治療させてから殺しましょう」
ヤンの一言で二人が止まる。
「処分について、まずは陛下とお嬢様の許しを得なければ。治療が終えて。…それから殺す。…それからでも遅くはない」
エヴ様に傷ひとつ残さないでくださいと告げる。
ヤンも殺したくてたまらない。
殺さない言い訳をしているだけだ。
エヴが人の死が嫌いだから。
こんな時もエヴのためだ。
「私も賛成だ」
殺したいのは私も同じ。
ヤン達と違って堪える気はない。
陛下の采配を聞いてからになるが殺すのはいつでも出来る。
これで逃げるならそれを理由に殺せばいい。
人狼の鼻でどこまでも追いかける。
「こいつの命は私に任せろ」
そう言うと納得に近衛隊長は頭を揺らして頷いた。
陛下に服を渡して着替えを手伝う
虚脱感がひどく身体が動かないらしい
側によるとエヴの匂いが強い。
先程の光景も。
何もかも許せないと手に力が入る
「っつ、」
「申し訳ありませんっ」
支えていた手に力が入った。
陛下が痛みに身をよじって身体が倒れるのをもう一度捕まえた。
「ヤン、すまないが変わってくれ」
陛下のすまなそうな様子に気を配る余裕もない。
シルファヌスにとり憑かれたせいだと分かっている。
陛下の意思じゃない。
「カリッド、すまなかった」
「…今は何も仰らないでください。気持ちの整理がつきません」
本当にすまない、もう一度陛下が小さく呟いた。
「おーい、犬ぅ」
アモルに呼ばれて目線だけ向けると顎を引っ張られかぶっと口を噛まれた。
一瞬で精力と魔力を根こそぎ吸われて肩を軽く押されたら背中から勢いよく倒れる。
ヤン達の居合い抜きにさっと身体はいつもの霧になって剣筋をよけた。
「さっすが、人狼。役立つじゃーん。あっははは!」
中途半端に切られてべらんと肩からぶら下がっていた欠損の腕が一瞬で繋がる。
アモルがここは任せたと言って消えいった。
「…く、くそが」
絨毯へ仰向けに倒れたが、分厚い絨毯のおかげで頭や背中に痛みはない。
ただ身体が動かないだけだった。
ヤン達の同情的な眼差しと油断した自分に腹が立つ。
ラウルがジェラルド伯への報告のために手紙を書いた。
術式を展開してそこに置くと消えていく。
ヒムドへ送ったようだ。
それが終わると目をつぶり耳に両手で蓋をしたらじっと集中する。
「団長、旦那様からお礼です。あと中型と小型の混じった飛行種の群れが街を襲ったそうです。対応はあちらで間に合うそうなので、報告だけ」
途中、こちらを見てそれだけ言うとまた目と耳を閉じた。
こうやって遠見をするのかと床に手足を伸ばして倒れた格好で、珍しさからラウルの姿をぼんやり眺めた。
起き上がれなくても指示は出せる。
ヤンとダリウスに頼んでどこかで倒れているデオルトを探してもらう。
それと城から離れていたおかげで汚染から免れたワイバーンの奴らを使って陛下と私の署名を入れた書簡を届けさせた。
グリーブス家に応援を頼んだ。
たった一日で、あの淫魔ひとりに近衛部隊と王城は壊滅した。
エヴは長椅子、陛下はソファー、私はそのまま床に。
寝台の横で魔導師長と近衛隊長がエヴの治療に当たっている。
「あれの二つ名や素性は分かるか?」
寝転んだままラウルに問いかけた。
じっと遠見に集中していたが、私の問いに顔をあげた。
「シルファヌス、と言っていたんですよね?」
「ああ、見た目は魔族よりエルフに似ていた」
それなのに本人は夢魔だと名乗っていた。
「…エルフの見た目の夢魔。…分かりませんね。魔導師長は何か心当たりありませんか?」
「ないねぇ。大概の淫魔は詳しいのだが。あと話しかけないで。集中力が途切れる」
片手に持った皿にからん、からんと破片を受けとる。
「あれは下位種や人族は襲いません。大昔は森の守護神でした」
「近衛隊長はご存じなのか」
「もとは神に近い存在なのに、淫を好んで自ら堕落しました。千年ほど生きて、狙うのは私達のような高魔力所持の妖精族やハイエルフです」
上位種狩りを主にしていますと答えた。
「ちょっと待って、気になって集中力切れる。その話は後で聞かせてくれない?」
「分かりました」
ラウルは続きが気になるようでチラチラと近衛隊長を見つめていた。
中の安全が確保されたので窓から羽根の二人組を呼び寄せた。
倒れた使用人や近衛兵の代わりに羽根とヤン達が動く。
「お前らも怪我をしている。羽根に任せろ」
「エヴ様に比べれば」
ダリウスは肩から利き腕に怪我しているらしい。
包んだ包帯に血が滲んでいる。
ヤンも腹には包帯。
片足を引きずりながら歩いている。
近衛隊長も魔導師長と共にエヴの治療に当たっていた。
ハイエルフだ。精霊は扱える。
ダリウスとラウルは近衛隊長を殺したがった。
こいつのせいだとラウルががなりたてダリウスも否定せず頷いた
柄に手を添えてヤンの許可を待った。
「治療させてから殺しましょう」
ヤンの一言で二人が止まる。
「処分について、まずは陛下とお嬢様の許しを得なければ。治療が終えて。…それから殺す。…それからでも遅くはない」
エヴ様に傷ひとつ残さないでくださいと告げる。
ヤンも殺したくてたまらない。
殺さない言い訳をしているだけだ。
エヴが人の死が嫌いだから。
こんな時もエヴのためだ。
「私も賛成だ」
殺したいのは私も同じ。
ヤン達と違って堪える気はない。
陛下の采配を聞いてからになるが殺すのはいつでも出来る。
これで逃げるならそれを理由に殺せばいい。
人狼の鼻でどこまでも追いかける。
「こいつの命は私に任せろ」
そう言うと納得に近衛隊長は頭を揺らして頷いた。
陛下に服を渡して着替えを手伝う
虚脱感がひどく身体が動かないらしい
側によるとエヴの匂いが強い。
先程の光景も。
何もかも許せないと手に力が入る
「っつ、」
「申し訳ありませんっ」
支えていた手に力が入った。
陛下が痛みに身をよじって身体が倒れるのをもう一度捕まえた。
「ヤン、すまないが変わってくれ」
陛下のすまなそうな様子に気を配る余裕もない。
シルファヌスにとり憑かれたせいだと分かっている。
陛下の意思じゃない。
「カリッド、すまなかった」
「…今は何も仰らないでください。気持ちの整理がつきません」
本当にすまない、もう一度陛下が小さく呟いた。
「おーい、犬ぅ」
アモルに呼ばれて目線だけ向けると顎を引っ張られかぶっと口を噛まれた。
一瞬で精力と魔力を根こそぎ吸われて肩を軽く押されたら背中から勢いよく倒れる。
ヤン達の居合い抜きにさっと身体はいつもの霧になって剣筋をよけた。
「さっすが、人狼。役立つじゃーん。あっははは!」
中途半端に切られてべらんと肩からぶら下がっていた欠損の腕が一瞬で繋がる。
アモルがここは任せたと言って消えいった。
「…く、くそが」
絨毯へ仰向けに倒れたが、分厚い絨毯のおかげで頭や背中に痛みはない。
ただ身体が動かないだけだった。
ヤン達の同情的な眼差しと油断した自分に腹が立つ。
ラウルがジェラルド伯への報告のために手紙を書いた。
術式を展開してそこに置くと消えていく。
ヒムドへ送ったようだ。
それが終わると目をつぶり耳に両手で蓋をしたらじっと集中する。
「団長、旦那様からお礼です。あと中型と小型の混じった飛行種の群れが街を襲ったそうです。対応はあちらで間に合うそうなので、報告だけ」
途中、こちらを見てそれだけ言うとまた目と耳を閉じた。
こうやって遠見をするのかと床に手足を伸ばして倒れた格好で、珍しさからラウルの姿をぼんやり眺めた。
起き上がれなくても指示は出せる。
ヤンとダリウスに頼んでどこかで倒れているデオルトを探してもらう。
それと城から離れていたおかげで汚染から免れたワイバーンの奴らを使って陛下と私の署名を入れた書簡を届けさせた。
グリーブス家に応援を頼んだ。
たった一日で、あの淫魔ひとりに近衛部隊と王城は壊滅した。
エヴは長椅子、陛下はソファー、私はそのまま床に。
寝台の横で魔導師長と近衛隊長がエヴの治療に当たっている。
「あれの二つ名や素性は分かるか?」
寝転んだままラウルに問いかけた。
じっと遠見に集中していたが、私の問いに顔をあげた。
「シルファヌス、と言っていたんですよね?」
「ああ、見た目は魔族よりエルフに似ていた」
それなのに本人は夢魔だと名乗っていた。
「…エルフの見た目の夢魔。…分かりませんね。魔導師長は何か心当たりありませんか?」
「ないねぇ。大概の淫魔は詳しいのだが。あと話しかけないで。集中力が途切れる」
片手に持った皿にからん、からんと破片を受けとる。
「あれは下位種や人族は襲いません。大昔は森の守護神でした」
「近衛隊長はご存じなのか」
「もとは神に近い存在なのに、淫を好んで自ら堕落しました。千年ほど生きて、狙うのは私達のような高魔力所持の妖精族やハイエルフです」
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