人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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空腹

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エヴのもとへ。
精が少ないと言っていた。
鼻と頬に包帯が巻いてある。
切れた口許にも当て布が置かれてる。
口許に顔を寄せて匂いから魔導師長とヤンとダリウスの匂いがした。
言わなかったが三人が注いだ。
仕方ないという気持ちと腹立ち。
かぷ、と軽く唇を噛む。
空いた隙間に舌を入れる。 
「…ん」 
んく、んくと喉が鳴る。
顔色が少し良くなった。
精の流れが静まったので顔を離そうとしたらエヴの身体が二重にぶれる。
「あ?」
寝込んだエヴの身体から、ぶれた身体が私の首に腕を巻き付く。
「ん、ふあ」
「ちょっ、と、待て、エヴ」
ペロペロと口内を舐めるエヴの肩を掴んで引き剥がすといつもの幼いエヴがいた。
「お、おい」
「んー、」
ふわふわ浮いて顔にまとわりつく。
下腹にまで手を出して。
慌てて後ろに下がる。
エヴを好きだがこんな幼い見かけは困る。
私の腰のほどもない大きさ。
単純に可愛いと思うだけで幼子相手の趣味はない。
辺りを見回してエヴの身を隠すものも見当たらない。
ソファーのクッションを掴んでエヴの身体に押し付けて隠す。
「持っとけ。隠せ、晒すな」
ふわふわ飛んでも実体がある。
追いかけてきたエヴをソファーへ仰向けに沈めて上からクッションで押さえつけた。
自由な腕を伸ばして私の顔を撫でてくすぐっている。
「子供がやめろ」
手から顔を背けるとへらへらと顔を緩め、むくむくと身体が大きくなる。
手足が伸びて身長も。
髪は金のまま。
クッションから隠した身体がはみ出た。
足を腰に絡めて。
現金なものでそれならと興味が出た。
「やるから大人しくしろ」
もうひとつ、クッションを押し付けて裸体を隠す。
胸元と下腹にふたつ。
このまま襲いたいが陛下の寝室でやる気はない。
なのに手を離した隙にエヴはクッションを放った。
当たり前に後ろにもたれて足を開く姿に血の気が引く。
これはエヴが望むことではない。
「やめろ」
どかしたクッションを上から押さえて開いた太もも閉じさせた。
淫魔の本能で動いてる。
私はエヴを望んでいるが違う。
自分の欲を満たしたいんじゃない。
このまま触ってはいけないと焦った。
「口付けからやるから」
そう言ったのに触れていた実体が透けた。
私の手からすり抜けて部屋を出ようとしている。
焦ったがペタペタと壁や天井を撫でて部屋から出られない。
ラウルと魔導師長がおそらく部屋に封印をしているのだろう。
捕まえようのない分身を放って長椅子に眠るエヴへ近寄った。
こうするのが早いと判断して口から精力を注げば分身が私の背に乗ってきた。
精を高めようと身体を撫でる手を握って掴まえた。
しばらく注ぎ続けると満足したらしい。
背中が軽くなり、すうっと消えた。
目を凝らせば薄れた分身がエヴの身体と重なっていく。
目をつぶった黒髪のエヴの顔を覗くと少し前に比べて血色は良くなった。
ひくひくとエヴの瞼が動いてゆっくり開いた。
「…エヴ」
「…あ、りがとうございました。…精力」
目が合うと盛大に顔をしかめて、罰が悪そうにもごもごとお礼を述べた。
傷の痛みで顔を歪めたのかと思ったら。
「覚えているのか?いつもは記憶がないのに」
むぅっと口を突き出して小さく頷く。
そして忌々しげに目を細めた。
「…あの小さい子、言うこと聞かない。嫌だって言うのに。ラウルに相談します」
もっと強い呪符にしてもらいたいと怪我のない手をシーツから出してひらひらと私に見せた。
私に負けないほど大量に呪符が巻かれている。
「全て淫魔の封印か?」
「魔力と精力が足らないからあの子が本能のままに暴れるんです。能力の封印と痛み止と強化封じ、魔力の生成を押さえるの。ヤンとダリウスが倒れたからもう嫌なんですけど」
私が倒れている間に分身が二人を襲ったと話す。
「それだけの呪符をつけると疲れるだろう」
「キツいです。だるいです」
ブスくれて答えた。
どうやら起きたらいつも通りらしい。
「…精が貯まればあの子は大人しくなります。…もう少し貰えますか?」
「エヴがいいなら」
「貰わないと人を襲いますもん」
あ、と口を開けた。
「口からでいいか?」
「あ"ぁん?怪我人相手に他を使いたんですか?」
あいつらと同じことをする気かと語気が荒くなる。
「違う。指か口付けだ」
今までにないほど目をつり上げて睨まれた。
慌てて言葉を遮って答えたら剣呑な目付きはそのままでもう一度、あ、と口を開けた。
「…口から、です」
「いいのか?」
指と答えると思ったのに。
「…団長のはふわふわで気持ちいいから。そっ、それに!その大きな指は苦しいです!」
後半は目をきょろきょろさせて言い訳のように答えた。
「私との口付けは気に入ったのか?」
顔を寄せてエヴの唇に重ねながら問いかけた。
しゃべると互いの肉がふにふにと当たる。
ぺろ、と唇に舌を。
エヴから。
隙間に舌を差し込むだけ。
問いかけには黙って何も答えない。
「返事を聞きたいんだが」
「…ん、」
差し込まれた舌を軽く、じゅっと吸う。
細めた目が気持ち良さそうだった。
教える気はなさそうでしばらく好きなように精を吸わせた。
部屋にリップ音やちゅくちゅくと粘膜の混ぜる音が響いた。
もういいと言われて大人しく身体を離す。
頬が上気している。
キスのせいだとは思うが、発熱の心配がよぎる。
手の甲を当てて撫でた。
額の髪も撫でて後ろへ。
気持ちがいいのかエヴは目をつぶって微かに笑みを浮かべていた。
「…団長が良かったんです、ずっと」
何のことか分からないが、黙ってエヴの話に耳を傾ける。
「怖いし、痛いし」
目を開けないまま口だけが動く。
私も手はエヴの頬や額をふわふわと撫でた。
「ヤンにも助けてほしかった。ダリウスとラウルも。早く来てほしかった。団長も」
「遅くなって悪かった」
「しょうがないのは分かってるけど、もっと早い方が良かったです」
「ああ、きつい思いをさせて後悔している」
あの時、操られたジェラルド伯と一戦交える方法もあったかと思うが、どんなに頭の中であの場をやり直してもいい手が見つからない。
魔導師長とヤン達をまとめて相手に出来る近衛隊長とあちらこちらと王宮中の人間や虫を含めた生き物にのり移って器を変えて隠れていたシルファヌス。
あの時はシルファヌスの存在は関知していなかった。
誰にのり移っていたのかも分からない。
仇は近衛隊長ひとりと考えていた。
「戦士なら覚悟しなきゃいけないのに。守護持ちだからって、自惚れてました」
黙ってエヴを撫でる。
私達も同じだった。
何も怪我はないと油断した。
「団長、好きです」
手が止まった。
まじまじとエヴを見つめた。
私の無言に目を開けて私を見ると顔をしかめた。
「…ごめんなさい」
「いや、急だから驚いただけだ」
「いいです、もう。忘れてください」
「嫌だ。初めてエヴにそんなはっきり言われた。忘れるものか」
尻尾がパタパタ揺れた。
そうだ。初めてだ。嬉しくてたまらない。
「どれくらい好きなのか知りたい」
ヤン達か、ロバート殿かと問う。
「…一番」
「一番?」
「団長がいいです。尻尾と耳も好きだし」
痛いだろうに身体を起こして自由のきく腕を伸ばしている。
エヴが望むならと身体を傾けて身を預けた。
背中に手を回して支えるのに首に巻いた片腕に力を入れて強くしがみついている。
溺れた時のように強く何度も引き寄せて密着しようとしていた。
「エヴ?」
呼び掛けても答えないで黙ってしがみつく。
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