白黒の猫~ずっと可愛い黒猫が欲しかったのに、気づけば茶とらの毛並みを撫でていた~

うめまつ

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カッとなって思いっきり床に投げつけた。

ぎゃっと悲鳴を上げてその顔の横に、床に穴が開きそうなほど強く踏みつけた。

「今の蹴りをお前の顔に叩き込むぞ」

おそらく顔面陥没して死ぬ。

踏みとどまった自分を誉めたい。

「だって!だってぇ!見るくらいいいじゃないですか!ヤりてぇの我慢してんだから!あの人だってああいうのが好きなんでしょぉ!嫌がらないし!喜んでるんだろ?!平気で男の相手して見せびらかして、マジで今日だってスゴかったんですから!きっと足らないから、男好きだからあの奴隷ともよろしくやってるし!」

恐怖で号泣しながらも口はよく回る。

顔を一発、横に殴った。

痛い痛い泣きわめきながら、それでもしつこくクソやかましい。

好きであいつがしてるんじゃないのは知ってる。

カナン様の病的な執着のせいだと言うのに。

何も言わないだけだ。

そんなこと、何も知らない若い奴らは。

胸くそ悪い。

「そんなに俺とヤりたいの?」

いつの間にか緩い予備服に着替え終えてダグが横から覗き込んでいた。

柔らかい笑みを張り付けて優しい声音。

回りを騙すこいつの特技。

「や、ヤりてぇっす」

鼻血を出して期待にあふれた顔でダグを見上げていた。

腹のひとつも蹴ってやろうと足を一歩下げた。

なのに俺より先にダグは、へぇ、と珍しいものを見たような感嘆をこぼして口を開いた。

「カナン様に頼めば?気が向けばいいって仰るかも?」

「ま、マジですか?」

あり得ねぇだろうがとダグを見つめた。

見ればダグの顔に本気が映ってる。

また何か勘違いしてるのか?

カナン様にそんなことを言ったら即座に死ぬぞと心の中で呟く。

「俺のアリィくらい役立つならね。いいって仰るんじゃない?アリィはそのために頑張ってるし。ご褒美に俺のケツをお願いしてるんだよ」

アリオンくらい。

つまり団長代理が勤まるレベルを求められている。

知らなかった話に興味が出て下げた足を完全に止める。

「出来る?」

ふるふると鼻血まみれの顔を横に。

「じゃあ、残念」

にっこりと微笑みを浮かべた。

諦めた気配のこいつを見てダグの笑みの後ろには安堵が見え隠れする。

無駄な争いが嫌いだから。

揉め事は身を犠牲にして避ける。

本音言うなら気楽に股を開いてさっさと黙らせたいんだろうな。

ヤらないのはカナン様が優先だから。

「その話、マジ?」

「マジ」

俺にもにっこりと。

こいつは本当に自分の価値を分かってねぇなぁ。

「へえー、俺も行けっかな」

体格と頭は恵まれているし、若さと言うと将来性もある。

しかも優遇されやすい専門職。

代理までは無理でもいい線は行ける。

話を要約するとこいつはアリオンの釣り餌。

俺も価値を見せればダグをちらつかせるくらいの餌にしてもらえるかもしれない。

「何がぁ?」

「いやぁ、何も」

なんでもないと笑うと鈍感なダグはいつも通り。

「ダ、ダグさん」

「なぁに?」

ごそごそと起きて一回くらいヤらせてくれとすがった目線でダグを拝む。

懲りねぇぇ!

「この、」

馬鹿が、と胸ぐらをまた掴んだ。

「ひぃ、ご、ごめんなさいぃ」

「ロニー、もう可哀想だよ?血だらけだし」

流血むりぃと呑気に呟いて戸棚からガーゼを渡してやっている。

「甘やかすな」

「うん、そうだねぇ。それよりご飯に行こうよ」

「ダグさん、あの、」

「てめぇはしつこいぞ!」

「ひぇ!」

怒鳴り付けるとこいつだけでなくダグまでびくぅっとはねた。

「お、お礼を!ガ、ガーゼのお礼を!」

「嘘つけ!懲りてねぇ!」

ちょっとでも絡もうとしやがって。 

ごっと正座した膝を蹴るとぎゃあぎゃぁ泣きわめく。

「仕方ないなぁ。ちょっとだけだよ?」

ダグの言葉に振り返って目を見開いた。

「お前、」
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