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でも仕方ないと諦めた。
イーサンから遅れて半泣きで仕事に行った。
すれ違う団員から顔どうしたと聞かれて、ミスったとだけ答えた。
今日は医務室にこもってよう、そう決めて部屋に向かってたら、そっちに近づくと不意に怒鳴り声が聞こえてきた。
くそとかふざけんなとか。
イーサンの声だった。
走って向かうとそれっきり怒鳴り声は止んでいたが、心配で足は止めなかった。
医務室のドアのぶを回したけど開かなくて鍵を使って中へ踏み込む。
「イーサン、外まで声が聞こえたけどどう、し、た?」
中に三人。
親父とイーサンとベイル部隊長。
親父とベイル部隊長は向かい合って腰かけていたが、イーサンは側で怒りに滾った顔をしながら仁王立ち。
親父も雰囲気から怒ってるのが一目で分かった。
扉を開けてたたらを踏んで固まる俺に機嫌の悪くて緊迫した視線が集まる。
「あれ?」
ベイル部隊長は夜勤じゃなかった?
「閉めろ」
「あ、うん」
「鍵も」
親父の声かけにすぐ従って扉を閉めた。
しばらく黙って親父は俺の包帯を睨んで眉間のシワが濃くなる。
向かいに座るベイル部隊長は目を伏せてじっとしてるし、それをイーサンはきつく睨んでる。
「ちょうどいい。本人に聞こう」
「親父?何?」
イーサンそっくりにむすくれてる。
「怪我は誰からだ?」
「あー……」
またその話か。
もう罰が悪い。
「ミスった。子供の振り回す棒を避けそびれた。イーサンにも話をしてる」
「見せなさい」
「イーサンに診せたけど?」
そう答えたのに黙って手招き。
仕方ないから包帯をすぽっと抜いて腰を屈めながら親父の顔に傷を寄せた。
少し触ったら俺の顔を左右に向けさせて他の怪我を確認した。
瞼を引っくり返したり首筋にまでがっつり診察。
「……泣くほど辛い目に」
「へ?」
地の底から這うような低い声と目の前の鬼の形相に固まる。
いきなり目の前に立つ俺を押し退けて立ち上がった。
腰の剣に手をかけながら、視線は俺の後ろの診察台に座るベイル部隊長だ。
「ちょ!タンマ!親父!」
止めようと思うのに首根っこをイーサンに捕まえられるし。
止めるのは間に合わなくて、がっつーんって、腰の剣を鞘ごと掴んで思いっきりベイル部隊長に叩きつけたからビビった。
ベイル部隊長も負けちゃいなくて、それを抜いた刀身であっさり受けとめるけど、どういうこと?
「ベイル部隊長、これは親としての怒りです」
「お、親父?」
なんでそんなに怒ってんの?
なんなの、これ。
「信用していたのですが、残念です」
俺を無視して互いに睨み合ってる。
互いの剣を腰に戻すと、ベイル部隊長の細い目を渋く歪ませて、今までにないくらい分かりやすく歯噛みしてる。
「待ってくれ、何これ?なんでこのくらいの怪我で、」
鍛練でよくあることじゃねぇか。
最近なんかダグにボコられてるのに。
「部隊長、弟の俺からのも貰ってくれますかね?」
「イーサン?!お前までやめろ!」
こいつからも、カチャリと金物の擦れる音が聞こえたから慌てて止めた。
「親父!話が見えないんだけど?!」
「ロニー、黙っとれ。熱意を見謝った俺が悪い。長年、側で見ていて乱暴する男ではないと思ったのに。許した自分自身が許せん」
「怪我をさせたのは身内だが、俺からロニーに手荒なことは一切していない」
「もう信用なりません。多少の強引さは目をつぶってきましたが、地位を傘に息子を虐げてると不審を抱いた今は子を守る義務を優先します。二度と我が子に近寄るな」
「俺もいます。兄貴に乱暴したってんなら上官だろうが、噛みつきますからね」
「親父?イーサン?」
二人が剣の柄に手を置いたまま守るように俺に背を向けて、苦虫を潰した顔のベイル部隊長と対峙している。
乱暴?
ベイル部隊長が?
俺に?
誤解が生まれとる!
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何もないから!ベイル部隊長とはそういうことないから!」
二人の肩を掴んで必死で言うとイーサンがぎろっと睨んでくる。
「何言ってんだよ。ケツにめたくそ痕をつけて。掘られたの丸分かりじゃねぇか」
処女!
俺達、清い処女だから!
「良い年した息子です。親がでばるなどみっともないと思いました。しかしそれが泣き腫らして怪我までこさえて帰って来たことに、家族としては納得のいくご説明を求めます」
「さっき伝えた通りだ。身内の失態について早めに謝罪をしたくて、出勤も前倒しでここに来た。怪我をさせてしまったことは悪かったと思ってる。泣き腫らしているのは話し合いをしているうちに色々と思うところがあってのことだ。虐げてるようなことはしていない」
「息子の現状を見てどう信じろと?」
「……言って伝わらないなら、どうしようもない」
ベイル部隊長が深くため息をついて肩を落とす。
「ならそういうことでよろしいですね。金輪際、息子に手を出すな」
睨み付ける親父の言葉に顔をしかめるだけ。
しばらくしてベイル部隊長は黙って頷いた。
「話は分かった」
そう言ってゆっくり立ち上がって撤退の気配。
え?
諦めんの?
ちょっと待ってくれって。
なんだよ、急にこの破局寸前な空気?!
昨日一晩中、イチャイチャしただけでお別れムード?
待って、待って。
「待ってくれって!ご、合意だから!」
二人にそう言うのに親父は信用ないと首を振るし、イーサンは訝しげに睨んでる。
おろおろしてベイル部隊長を見ると苦々しくも困った顔で俺を見つめてた。
「親父、イーサン、俺は、ベイル部隊長は何にも、だから、その、」
「ロニー、いくらお前からそう言われても怪我をさせたかもしれない相手に我が子を渡すのは出来ん」
「してないってば、親父。ベイル部隊長は何もしてない、マジ、」
乱暴なんかないって続けようとしたのに言いよどんだせいでイーサンから遮られた。
「したろーが。泣き腫らして全身、赤と紫の斑模様。おい、バカ兄貴。この顔と怪我で信用ねぇんだよ」
レイプじゃなきゃなんだと問い詰められた。
どう説明すればいいんだよ?
「そ、それは、イーサン」
「上官だからと庇わなくていい。身内を差し出して家の安寧を考えてなどいない。我が子の方が大事だ」
「俺も兄貴優先。姉貴やリアーナだって同じことを言うからな。兄貴だってそうだろう?」
そりゃぁもちろん、じゃなくて。
誤解が根深いし、二人から咎められてテンパってる。
違うって言ってるのに信用してもらえない。
困り顔のベイル部隊長に二人が殺気まみれの視線がバリバリ。
マジで一触即発。
親父の背中。
弟より少し小さいのに、めっちゃデカイ。
怒気も溢れて寄るの怖いけど安心する。
子供の頃みたいにこのまま親父の後ろに隠れていたいって思うくらい。
思ってたより自分は甘ったれだったと反省。
「お、親父、聞いて?イーサンも、頼むから」
でも、言わないと。
大事なことはちゃんと言わないと逃がす。
今、その時だってすごい分かる。
怒気を納めてほしくておずおずと親父の背中に手を置いた。
その隣のイーサンにも、肩に手を添えて。
二人が首をひねって俺と目が合うけど、気恥ずかしくてうつ向いた。
「ロニー?」
「兄貴?」
汗だらだら。
顔があちぃ。
絶対真っ赤だ。
多分、これから泣く。
昨日みたいに目頭が熱い。
じわじわ来てる。
家族に白状するはめになるなんて恥ずかしくて死ねる。
しかも親父とイーサンの溺愛が嬉しい俺もいるし。
今もベイル部隊長が困った顔で俺を心配そうに伺ってくる視線もくすぐったい。
ぼろぼろ泣きながら口を開いた。
「親父ぃ、イーサン。ひっく、」
「兄貴?!」
「ロニー?……ロニー?」
ぐずぐずと鼻をすする俺に二人が焦った。
イーサンから遅れて半泣きで仕事に行った。
すれ違う団員から顔どうしたと聞かれて、ミスったとだけ答えた。
今日は医務室にこもってよう、そう決めて部屋に向かってたら、そっちに近づくと不意に怒鳴り声が聞こえてきた。
くそとかふざけんなとか。
イーサンの声だった。
走って向かうとそれっきり怒鳴り声は止んでいたが、心配で足は止めなかった。
医務室のドアのぶを回したけど開かなくて鍵を使って中へ踏み込む。
「イーサン、外まで声が聞こえたけどどう、し、た?」
中に三人。
親父とイーサンとベイル部隊長。
親父とベイル部隊長は向かい合って腰かけていたが、イーサンは側で怒りに滾った顔をしながら仁王立ち。
親父も雰囲気から怒ってるのが一目で分かった。
扉を開けてたたらを踏んで固まる俺に機嫌の悪くて緊迫した視線が集まる。
「あれ?」
ベイル部隊長は夜勤じゃなかった?
「閉めろ」
「あ、うん」
「鍵も」
親父の声かけにすぐ従って扉を閉めた。
しばらく黙って親父は俺の包帯を睨んで眉間のシワが濃くなる。
向かいに座るベイル部隊長は目を伏せてじっとしてるし、それをイーサンはきつく睨んでる。
「ちょうどいい。本人に聞こう」
「親父?何?」
イーサンそっくりにむすくれてる。
「怪我は誰からだ?」
「あー……」
またその話か。
もう罰が悪い。
「ミスった。子供の振り回す棒を避けそびれた。イーサンにも話をしてる」
「見せなさい」
「イーサンに診せたけど?」
そう答えたのに黙って手招き。
仕方ないから包帯をすぽっと抜いて腰を屈めながら親父の顔に傷を寄せた。
少し触ったら俺の顔を左右に向けさせて他の怪我を確認した。
瞼を引っくり返したり首筋にまでがっつり診察。
「……泣くほど辛い目に」
「へ?」
地の底から這うような低い声と目の前の鬼の形相に固まる。
いきなり目の前に立つ俺を押し退けて立ち上がった。
腰の剣に手をかけながら、視線は俺の後ろの診察台に座るベイル部隊長だ。
「ちょ!タンマ!親父!」
止めようと思うのに首根っこをイーサンに捕まえられるし。
止めるのは間に合わなくて、がっつーんって、腰の剣を鞘ごと掴んで思いっきりベイル部隊長に叩きつけたからビビった。
ベイル部隊長も負けちゃいなくて、それを抜いた刀身であっさり受けとめるけど、どういうこと?
「ベイル部隊長、これは親としての怒りです」
「お、親父?」
なんでそんなに怒ってんの?
なんなの、これ。
「信用していたのですが、残念です」
俺を無視して互いに睨み合ってる。
互いの剣を腰に戻すと、ベイル部隊長の細い目を渋く歪ませて、今までにないくらい分かりやすく歯噛みしてる。
「待ってくれ、何これ?なんでこのくらいの怪我で、」
鍛練でよくあることじゃねぇか。
最近なんかダグにボコられてるのに。
「部隊長、弟の俺からのも貰ってくれますかね?」
「イーサン?!お前までやめろ!」
こいつからも、カチャリと金物の擦れる音が聞こえたから慌てて止めた。
「親父!話が見えないんだけど?!」
「ロニー、黙っとれ。熱意を見謝った俺が悪い。長年、側で見ていて乱暴する男ではないと思ったのに。許した自分自身が許せん」
「怪我をさせたのは身内だが、俺からロニーに手荒なことは一切していない」
「もう信用なりません。多少の強引さは目をつぶってきましたが、地位を傘に息子を虐げてると不審を抱いた今は子を守る義務を優先します。二度と我が子に近寄るな」
「俺もいます。兄貴に乱暴したってんなら上官だろうが、噛みつきますからね」
「親父?イーサン?」
二人が剣の柄に手を置いたまま守るように俺に背を向けて、苦虫を潰した顔のベイル部隊長と対峙している。
乱暴?
ベイル部隊長が?
俺に?
誤解が生まれとる!
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何もないから!ベイル部隊長とはそういうことないから!」
二人の肩を掴んで必死で言うとイーサンがぎろっと睨んでくる。
「何言ってんだよ。ケツにめたくそ痕をつけて。掘られたの丸分かりじゃねぇか」
処女!
俺達、清い処女だから!
「良い年した息子です。親がでばるなどみっともないと思いました。しかしそれが泣き腫らして怪我までこさえて帰って来たことに、家族としては納得のいくご説明を求めます」
「さっき伝えた通りだ。身内の失態について早めに謝罪をしたくて、出勤も前倒しでここに来た。怪我をさせてしまったことは悪かったと思ってる。泣き腫らしているのは話し合いをしているうちに色々と思うところがあってのことだ。虐げてるようなことはしていない」
「息子の現状を見てどう信じろと?」
「……言って伝わらないなら、どうしようもない」
ベイル部隊長が深くため息をついて肩を落とす。
「ならそういうことでよろしいですね。金輪際、息子に手を出すな」
睨み付ける親父の言葉に顔をしかめるだけ。
しばらくしてベイル部隊長は黙って頷いた。
「話は分かった」
そう言ってゆっくり立ち上がって撤退の気配。
え?
諦めんの?
ちょっと待ってくれって。
なんだよ、急にこの破局寸前な空気?!
昨日一晩中、イチャイチャしただけでお別れムード?
待って、待って。
「待ってくれって!ご、合意だから!」
二人にそう言うのに親父は信用ないと首を振るし、イーサンは訝しげに睨んでる。
おろおろしてベイル部隊長を見ると苦々しくも困った顔で俺を見つめてた。
「親父、イーサン、俺は、ベイル部隊長は何にも、だから、その、」
「ロニー、いくらお前からそう言われても怪我をさせたかもしれない相手に我が子を渡すのは出来ん」
「してないってば、親父。ベイル部隊長は何もしてない、マジ、」
乱暴なんかないって続けようとしたのに言いよどんだせいでイーサンから遮られた。
「したろーが。泣き腫らして全身、赤と紫の斑模様。おい、バカ兄貴。この顔と怪我で信用ねぇんだよ」
レイプじゃなきゃなんだと問い詰められた。
どう説明すればいいんだよ?
「そ、それは、イーサン」
「上官だからと庇わなくていい。身内を差し出して家の安寧を考えてなどいない。我が子の方が大事だ」
「俺も兄貴優先。姉貴やリアーナだって同じことを言うからな。兄貴だってそうだろう?」
そりゃぁもちろん、じゃなくて。
誤解が根深いし、二人から咎められてテンパってる。
違うって言ってるのに信用してもらえない。
困り顔のベイル部隊長に二人が殺気まみれの視線がバリバリ。
マジで一触即発。
親父の背中。
弟より少し小さいのに、めっちゃデカイ。
怒気も溢れて寄るの怖いけど安心する。
子供の頃みたいにこのまま親父の後ろに隠れていたいって思うくらい。
思ってたより自分は甘ったれだったと反省。
「お、親父、聞いて?イーサンも、頼むから」
でも、言わないと。
大事なことはちゃんと言わないと逃がす。
今、その時だってすごい分かる。
怒気を納めてほしくておずおずと親父の背中に手を置いた。
その隣のイーサンにも、肩に手を添えて。
二人が首をひねって俺と目が合うけど、気恥ずかしくてうつ向いた。
「ロニー?」
「兄貴?」
汗だらだら。
顔があちぃ。
絶対真っ赤だ。
多分、これから泣く。
昨日みたいに目頭が熱い。
じわじわ来てる。
家族に白状するはめになるなんて恥ずかしくて死ねる。
しかも親父とイーサンの溺愛が嬉しい俺もいるし。
今もベイル部隊長が困った顔で俺を心配そうに伺ってくる視線もくすぐったい。
ぼろぼろ泣きながら口を開いた。
「親父ぃ、イーサン。ひっく、」
「兄貴?!」
「ロニー?……ロニー?」
ぐずぐずと鼻をすする俺に二人が焦った。
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