30 / 34
30
しおりを挟む
俺は気が強くて堂々としてるタイプだと思ってたのに、恋愛やこういう愛情表現にはだめらしい。
二人に聞かれるのにぐたぐだで何にも言えねぇ。
辛かったのかと聞かれて首を横に振ってるのに、堪えてるのかと重ねて聞かれる。
ベイル部隊長のことが好きだと一言言えばいいだけなのに。
少し低い親父の肩に額を押し付けて、添えるだけだったイーサンの肩もがっしり握った。
おろおろしてる気配だが、イーサンのベイル部隊長への殺気は変わってない。
行かすかと捕まえた。
「……また嬉し泣きか?」
こくこくと頭を揺らした。
「家族の、優しさが染みます」
ベイル部隊長の声にぐずぐず泣きながら答えた。
ぐずぐず泣いて小さい声だから聞こえたか分かんねぇ。
でも親父は聞こえたっぽい。
俺の撫でようと手がうろうろしたから。
ぎゅうっと親父の肩にもっと強くしがみつく。
イーサンの肩も強く握ったが、お前は違う。
捕獲だ。
ベイル部隊長に殴りかかろうとするな。
違うって。
乱暴はないってば。
しゃべらねぇ俺が悪いんだけどさ。
「ロニー、自分で言わないと誰も分からない」
いつも言い方は鋭く厳しいのに優しいベイル部隊長の声に促されて口を開けるけど、泣いてるし緊張で息苦しい。
言うことなんか決まってるのに、俺のヘタレ。
親父とイーサンを横に押して左右に退いてもらって、少し前に出てうつ向いたままギクシャクとベイル部隊長に腕を広げて見せた。
察してくれたベイル部隊長が目の前に立ってくれた。
抱き締めると腕に抱き込んだベイル部隊長は、ほーっと長いため息吐いて回した手で俺の背中を叩いた。
「……これがお前の精一杯だよなぁ」
ヘタレは反省する。
でも逃がしたくなくてしっかり服を掴んで、鼻をすすり下を向いたまま頭を揺らした。
もう無理。
勘弁。
身内の前で公開処刑じゃん。
でも嬉しい。
この人が俺の腕の中にいるから。
しばらくベイル部隊長にしがみついたまま黙って泣いた。
さすがに親父達に伝わったみたいだ。
「お前がそんなに涙もろいとはなぁ」
親父が知らなかったと呟いた。
まだ泣いてるからなぁ。
親父の向かいに、ベイル部隊長と並んで診察台に腰かけてる。
貰ったガーゼに顔を埋めて、隣のベイル部隊長が肩を抱いて慰められてんのにまだメソメソしてた。
弟は外だ。
午後の見回りは任せたから。
あいつは呆れてた。
分かりにくいって。
「トロンソ小隊長、ロニーのことを任せてもらえるか?真面目に付き合いたい」
そんなこと言うからまた、ぶわっと目からあふれて自分の膝に体を縮めた。
この、くそ真面目。
ペラペラしゃべるなと思うのに嬉しくて仕方ねぇ。
「本人同士でどうぞ。でばるのは趣味じゃありません」
あっさりと親父は答えた。
「無体をしたというなら話は別ですけど。もう二度と誤解がないようにお願いします。ロニー、お前も気を付けなさい」
黙って頭を揺らした。
声出せねえ。
「新しい水を汲んでこよう。顔も頭も冷やしてやる」
「俺が、」
「いえ、ベイル部隊長の手を煩わせることではありませんから。息子をよろしくお願いします」
ベイル部隊長を遮ってそれだけ言ってさっさと外へ。
鍵の音もした。
副官のみっともないところ見せないように気遣い。
どーも、親父。
「うっ、ぷ、ちょ、ベイル部隊長っ」
「ロニー、愛してる」
熱っぽい声を出しながら、がっしり抱き締められて無理やり顔を顔を上に。
そしてすぐに口を塞がれた。
「ん、」
俺も受け入れて二人で熱っぽいキスしてたら、ゴンゴンって扉を殴る音が響いた。
「話し声は聞こえるからな!そこでサカるな!」
さーせん、親父。
「……それもそうか」
納得するベイル部隊長に手を引かれて仮眠室に連れて行かれそうになり、足を踏ん張った。
「ちょっと待ってください」
「なんだ?」
振り返った顔を見れば目付きがヤバい。
猿。
ヤル気満々じゃねぇか。
「ヤんないですよ」
「なんで?」
「んっ、」
引き寄せられてさわさわ隙間から手ぇ突っ込んでくる。
「トロンソ小隊長から許可を得たし、二人っきりの気遣いを」
「ちげぇし!俺に気を使ったんですよ!俺がこんなツラだから!」
そういうことじゃねぇよ、この猿!
「そうか?」
「くっ、ううっ」
ズボンの隙間から手を突っ込まれて焦れったく触るから力が抜けた。
にやぁって笑ってるのがムカつく。
「ここ、で嫌だ、やめてくださいっ」
じゃあ、中に行こうって耳元で囁いてぞわぞわが背筋に走ってたまんねぇ。
「や、め、……あっ、」
ベイル部隊長の息が熱い。
嫌だ嫌だと無駄な抵抗をしているとノックが鳴った。
「誰、むぐ、ううむ、」
助かったと思って返事を返すと、ベイル部隊長に片手で口を塞がれる。
「取り込み中だ。出直せ」
「ベイル部隊長、俺です。ダグです。ロニー、開けて」
「ダグ?また何かあったのか?」
また久々のカナン様かとよぎって、すぐにベイル部隊長を押し退けて扉を開けた。
同じように察したベイル部隊長も掴んでいた手を離した。
開けたら目の前に、初めて見るダグの豪華な鎧姿。
左の肩当てと胸当ては白銀の金属。
軽めのチェーンメイルと革を組み合わせて細かい紋様で彩られてる。
昇進して新しく新調したのか。
黒と白の見かけにめっちゃ似合うじゃんと感心して目を細めた。
一瞬、豪華な装いに目を奪われたが、よく見れば顔色もよくて、まっすぐ立つ様子から何かあったとも思えず、首をかしげた。
「ロニー、ちょっとどいて」
「ダグ?」
じっと俺の顔を見ていたと思ったら、いきなりダグが医務室に飛び込んで、俺の後ろのベイル部隊長に向けて剣身を逆さに柄を振り下ろした。
抜いた剣を後ろに隠していて気づかなかった。
「ダグ?!」
ベイル部隊長は後ろに飛びすさって目を丸めてダグを見つめていた。
柄の先は床の板張りにめり込んでる。
「何のつもりだ?」
頬を引くつかせてベイル部隊長がダグへ問いかけた。
「ベイル兄さんこそ何なの?俺怒ってんだけど」
「なんで?」
「さっきからロニーは嫌って言ってんじゃん?しつこくない?」
「き、聞いてたのかよ」
思わず上擦った声が漏れた。
うわ、はず。
情けないやり取りを聞かれたことも、今の動揺した声を知られるのも。
ベイル部隊長もさすがに顔をしかめて舌打ち。
「通路まで丸聞こえ。趣味ならやればいいけど、違うっぽいし?入ってみたら助かったって顔で俺見るし?どういうこと?ベイル兄さん。無理やりなわけ?」
もう一発、食らう?と呟いてめり込んだ柄を引き抜いて、次の攻撃の構え。
「やめろ、ダグ。上官に、」
「上官だけど、身内。ベイル部隊長は俺の兄さんだよ。兄さん、俺に上官だって押し通す?」
「……いやぁ、しないなぁ」
「だよねぇ」
二人で笑ってる。
それがお互いの信頼なんだろうけど、ダグの副団長への強気さが怖い。
兄弟って言っても本当の血の繋がりがあるわけでもないのに。
あり得ねぇ。
「ダグ、俺を兄と思うなら信用しろ。剣を振り回すな」
「えー?俺の兄さんだけど、無条件にはねぇ。ロニーは親友だし。どっちに味方するかは状況次第。で、これ何?説明して」
「ふふ、ロニーから聞け」
「ロニーから?」
ニヤニヤするベイル部隊長と不思議そうに俺を見るダグ。
その視線が恥ずかしくて顔を覆ってしゃがみこんだ。
「ロニー?」
「……場所」
ぼそっと答えるとすぐにオッケーって軽い返事が返ってきた。
「場所が問題だったんだね。あー、そっか。ヤるのはいいってことね。分かった」
口にするな、このアホ。
あっさりと理解されたけど恥ずかしい。
いたたまれない。
俺、お前のことマジで好きだったんだけど。
7年も待てるくらい。
今でも顔見るとドキドキするし、好きだと胸がざわつく。
間延びして穏やかな声も俺へ向ける柔らかい視線も好きだ。
白い首も、長い黒髪も綺麗だと思う。
「ベイル兄さん、相手に合わせなきゃ。ロニーにフラれるよ」
「気を付ける」
「ロニーは俺と違って繊細なんだから。俺みたいに人前で気にせず、咥えるタイプじゃないよ」
「お前は気にしないものなぁ」
「まあね。カナン様の望みに応えるのが仕事だし、見られて気にするほどのことじゃないし」
野外プレイなんかしょっちゅう。
見張りの目の前や明るいうちから執務室で押し倒したり、カナン様は人目を憚らない。
それに付き合うダグは受け入れるだけで、今まで気にした素振りを見せたことなかった。
ダグが平気だと分かってたのに。
それに今のダグのあっけらかんとした声からも本気だと分かるのに。
だめ、やっぱり無理かも。
こいつがある意味男らしすぎて無理、怖い。
以前は交合を見せびらかされた興奮でヤりてぇってのばっかりで気づかなかったが、野外プレイの場面を頭の中で描いて自分を置き換えてしまう。
ダグみたいに人前で組み敷かれるのを想像したらゲロ吐く。
発狂する自信がある。
ちゃんと理解していたつもりだったのに、あれがどういうもんなのか俺は分かってなかった。
男役ならまだしも人前で女役なんて、どんだけ精神えぐるか分かってなかった。
想像以上のダグのタフさに目眩がしてきた。
化け物レベルだ。
勝てねぇってのと、こういうので勝ちたくねぇってので感情がぐちゃぐちゃ。
微かに残った7年の片思いがガラガラ砕けた。
「どうしてこうなったのか。昔は子供で可愛かったのに。恐ろしい奴になった」
ベイル部隊長の含み笑いにダグもくすくす笑って答えてる。
二人とも余裕すぎん?
特にダグ。
「そお?てか、兄さんは盛りすぎ。領主のカナン様はともかく。副団長がさすがにヤバいっしょ。団長に咎められるし、兄さんも昇進したばかりで目立つことは止めなよ」
「留意するよ。ったく。口やかましくなった」
「兄さんが迂闊だからだよ。反省して」
「分かった」
「ロニーも、ほらぁ。いつまで泣いてるの?泣き止みなよ」
「うう、」
二人に腕を引っ張られて診察台へ腰かけた。
「こうしてると可愛いね」
慰めるようにダグにふわふわと頭を撫でられた。
「……ダグ、手ぇ出すなよ?アリオンとカナン様に報告するからな?」
「こわ、しないよ。泣いてるのが可愛いだけ、いたっ、ベイル兄さん?!」
悲鳴のような声に驚いて顔を上げるとベイル部隊長がダグに首を脇に締めて押さえつけていた。
二人に聞かれるのにぐたぐだで何にも言えねぇ。
辛かったのかと聞かれて首を横に振ってるのに、堪えてるのかと重ねて聞かれる。
ベイル部隊長のことが好きだと一言言えばいいだけなのに。
少し低い親父の肩に額を押し付けて、添えるだけだったイーサンの肩もがっしり握った。
おろおろしてる気配だが、イーサンのベイル部隊長への殺気は変わってない。
行かすかと捕まえた。
「……また嬉し泣きか?」
こくこくと頭を揺らした。
「家族の、優しさが染みます」
ベイル部隊長の声にぐずぐず泣きながら答えた。
ぐずぐず泣いて小さい声だから聞こえたか分かんねぇ。
でも親父は聞こえたっぽい。
俺の撫でようと手がうろうろしたから。
ぎゅうっと親父の肩にもっと強くしがみつく。
イーサンの肩も強く握ったが、お前は違う。
捕獲だ。
ベイル部隊長に殴りかかろうとするな。
違うって。
乱暴はないってば。
しゃべらねぇ俺が悪いんだけどさ。
「ロニー、自分で言わないと誰も分からない」
いつも言い方は鋭く厳しいのに優しいベイル部隊長の声に促されて口を開けるけど、泣いてるし緊張で息苦しい。
言うことなんか決まってるのに、俺のヘタレ。
親父とイーサンを横に押して左右に退いてもらって、少し前に出てうつ向いたままギクシャクとベイル部隊長に腕を広げて見せた。
察してくれたベイル部隊長が目の前に立ってくれた。
抱き締めると腕に抱き込んだベイル部隊長は、ほーっと長いため息吐いて回した手で俺の背中を叩いた。
「……これがお前の精一杯だよなぁ」
ヘタレは反省する。
でも逃がしたくなくてしっかり服を掴んで、鼻をすすり下を向いたまま頭を揺らした。
もう無理。
勘弁。
身内の前で公開処刑じゃん。
でも嬉しい。
この人が俺の腕の中にいるから。
しばらくベイル部隊長にしがみついたまま黙って泣いた。
さすがに親父達に伝わったみたいだ。
「お前がそんなに涙もろいとはなぁ」
親父が知らなかったと呟いた。
まだ泣いてるからなぁ。
親父の向かいに、ベイル部隊長と並んで診察台に腰かけてる。
貰ったガーゼに顔を埋めて、隣のベイル部隊長が肩を抱いて慰められてんのにまだメソメソしてた。
弟は外だ。
午後の見回りは任せたから。
あいつは呆れてた。
分かりにくいって。
「トロンソ小隊長、ロニーのことを任せてもらえるか?真面目に付き合いたい」
そんなこと言うからまた、ぶわっと目からあふれて自分の膝に体を縮めた。
この、くそ真面目。
ペラペラしゃべるなと思うのに嬉しくて仕方ねぇ。
「本人同士でどうぞ。でばるのは趣味じゃありません」
あっさりと親父は答えた。
「無体をしたというなら話は別ですけど。もう二度と誤解がないようにお願いします。ロニー、お前も気を付けなさい」
黙って頭を揺らした。
声出せねえ。
「新しい水を汲んでこよう。顔も頭も冷やしてやる」
「俺が、」
「いえ、ベイル部隊長の手を煩わせることではありませんから。息子をよろしくお願いします」
ベイル部隊長を遮ってそれだけ言ってさっさと外へ。
鍵の音もした。
副官のみっともないところ見せないように気遣い。
どーも、親父。
「うっ、ぷ、ちょ、ベイル部隊長っ」
「ロニー、愛してる」
熱っぽい声を出しながら、がっしり抱き締められて無理やり顔を顔を上に。
そしてすぐに口を塞がれた。
「ん、」
俺も受け入れて二人で熱っぽいキスしてたら、ゴンゴンって扉を殴る音が響いた。
「話し声は聞こえるからな!そこでサカるな!」
さーせん、親父。
「……それもそうか」
納得するベイル部隊長に手を引かれて仮眠室に連れて行かれそうになり、足を踏ん張った。
「ちょっと待ってください」
「なんだ?」
振り返った顔を見れば目付きがヤバい。
猿。
ヤル気満々じゃねぇか。
「ヤんないですよ」
「なんで?」
「んっ、」
引き寄せられてさわさわ隙間から手ぇ突っ込んでくる。
「トロンソ小隊長から許可を得たし、二人っきりの気遣いを」
「ちげぇし!俺に気を使ったんですよ!俺がこんなツラだから!」
そういうことじゃねぇよ、この猿!
「そうか?」
「くっ、ううっ」
ズボンの隙間から手を突っ込まれて焦れったく触るから力が抜けた。
にやぁって笑ってるのがムカつく。
「ここ、で嫌だ、やめてくださいっ」
じゃあ、中に行こうって耳元で囁いてぞわぞわが背筋に走ってたまんねぇ。
「や、め、……あっ、」
ベイル部隊長の息が熱い。
嫌だ嫌だと無駄な抵抗をしているとノックが鳴った。
「誰、むぐ、ううむ、」
助かったと思って返事を返すと、ベイル部隊長に片手で口を塞がれる。
「取り込み中だ。出直せ」
「ベイル部隊長、俺です。ダグです。ロニー、開けて」
「ダグ?また何かあったのか?」
また久々のカナン様かとよぎって、すぐにベイル部隊長を押し退けて扉を開けた。
同じように察したベイル部隊長も掴んでいた手を離した。
開けたら目の前に、初めて見るダグの豪華な鎧姿。
左の肩当てと胸当ては白銀の金属。
軽めのチェーンメイルと革を組み合わせて細かい紋様で彩られてる。
昇進して新しく新調したのか。
黒と白の見かけにめっちゃ似合うじゃんと感心して目を細めた。
一瞬、豪華な装いに目を奪われたが、よく見れば顔色もよくて、まっすぐ立つ様子から何かあったとも思えず、首をかしげた。
「ロニー、ちょっとどいて」
「ダグ?」
じっと俺の顔を見ていたと思ったら、いきなりダグが医務室に飛び込んで、俺の後ろのベイル部隊長に向けて剣身を逆さに柄を振り下ろした。
抜いた剣を後ろに隠していて気づかなかった。
「ダグ?!」
ベイル部隊長は後ろに飛びすさって目を丸めてダグを見つめていた。
柄の先は床の板張りにめり込んでる。
「何のつもりだ?」
頬を引くつかせてベイル部隊長がダグへ問いかけた。
「ベイル兄さんこそ何なの?俺怒ってんだけど」
「なんで?」
「さっきからロニーは嫌って言ってんじゃん?しつこくない?」
「き、聞いてたのかよ」
思わず上擦った声が漏れた。
うわ、はず。
情けないやり取りを聞かれたことも、今の動揺した声を知られるのも。
ベイル部隊長もさすがに顔をしかめて舌打ち。
「通路まで丸聞こえ。趣味ならやればいいけど、違うっぽいし?入ってみたら助かったって顔で俺見るし?どういうこと?ベイル兄さん。無理やりなわけ?」
もう一発、食らう?と呟いてめり込んだ柄を引き抜いて、次の攻撃の構え。
「やめろ、ダグ。上官に、」
「上官だけど、身内。ベイル部隊長は俺の兄さんだよ。兄さん、俺に上官だって押し通す?」
「……いやぁ、しないなぁ」
「だよねぇ」
二人で笑ってる。
それがお互いの信頼なんだろうけど、ダグの副団長への強気さが怖い。
兄弟って言っても本当の血の繋がりがあるわけでもないのに。
あり得ねぇ。
「ダグ、俺を兄と思うなら信用しろ。剣を振り回すな」
「えー?俺の兄さんだけど、無条件にはねぇ。ロニーは親友だし。どっちに味方するかは状況次第。で、これ何?説明して」
「ふふ、ロニーから聞け」
「ロニーから?」
ニヤニヤするベイル部隊長と不思議そうに俺を見るダグ。
その視線が恥ずかしくて顔を覆ってしゃがみこんだ。
「ロニー?」
「……場所」
ぼそっと答えるとすぐにオッケーって軽い返事が返ってきた。
「場所が問題だったんだね。あー、そっか。ヤるのはいいってことね。分かった」
口にするな、このアホ。
あっさりと理解されたけど恥ずかしい。
いたたまれない。
俺、お前のことマジで好きだったんだけど。
7年も待てるくらい。
今でも顔見るとドキドキするし、好きだと胸がざわつく。
間延びして穏やかな声も俺へ向ける柔らかい視線も好きだ。
白い首も、長い黒髪も綺麗だと思う。
「ベイル兄さん、相手に合わせなきゃ。ロニーにフラれるよ」
「気を付ける」
「ロニーは俺と違って繊細なんだから。俺みたいに人前で気にせず、咥えるタイプじゃないよ」
「お前は気にしないものなぁ」
「まあね。カナン様の望みに応えるのが仕事だし、見られて気にするほどのことじゃないし」
野外プレイなんかしょっちゅう。
見張りの目の前や明るいうちから執務室で押し倒したり、カナン様は人目を憚らない。
それに付き合うダグは受け入れるだけで、今まで気にした素振りを見せたことなかった。
ダグが平気だと分かってたのに。
それに今のダグのあっけらかんとした声からも本気だと分かるのに。
だめ、やっぱり無理かも。
こいつがある意味男らしすぎて無理、怖い。
以前は交合を見せびらかされた興奮でヤりてぇってのばっかりで気づかなかったが、野外プレイの場面を頭の中で描いて自分を置き換えてしまう。
ダグみたいに人前で組み敷かれるのを想像したらゲロ吐く。
発狂する自信がある。
ちゃんと理解していたつもりだったのに、あれがどういうもんなのか俺は分かってなかった。
男役ならまだしも人前で女役なんて、どんだけ精神えぐるか分かってなかった。
想像以上のダグのタフさに目眩がしてきた。
化け物レベルだ。
勝てねぇってのと、こういうので勝ちたくねぇってので感情がぐちゃぐちゃ。
微かに残った7年の片思いがガラガラ砕けた。
「どうしてこうなったのか。昔は子供で可愛かったのに。恐ろしい奴になった」
ベイル部隊長の含み笑いにダグもくすくす笑って答えてる。
二人とも余裕すぎん?
特にダグ。
「そお?てか、兄さんは盛りすぎ。領主のカナン様はともかく。副団長がさすがにヤバいっしょ。団長に咎められるし、兄さんも昇進したばかりで目立つことは止めなよ」
「留意するよ。ったく。口やかましくなった」
「兄さんが迂闊だからだよ。反省して」
「分かった」
「ロニーも、ほらぁ。いつまで泣いてるの?泣き止みなよ」
「うう、」
二人に腕を引っ張られて診察台へ腰かけた。
「こうしてると可愛いね」
慰めるようにダグにふわふわと頭を撫でられた。
「……ダグ、手ぇ出すなよ?アリオンとカナン様に報告するからな?」
「こわ、しないよ。泣いてるのが可愛いだけ、いたっ、ベイル兄さん?!」
悲鳴のような声に驚いて顔を上げるとベイル部隊長がダグに首を脇に締めて押さえつけていた。
0
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
窓のない部屋の、陽だまりみたいな君
MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。
そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。
そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。
完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。
「五分だけ、ここにいさせてくれないか」
一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。
次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。
住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる