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「どこにでございますか?」
「実家だよ。私のもとにいても仕方がないだろう。早く目の前から消えろ」
目の前って見てもないじゃん。
見もせずに帰れかい。
「帰れるところがあるなら帰りますけど」
あんたのおかげで帰れないんだ。
それに噂通り。
フラれて廃嫡の傷心から意固地になった。
次々送られる令嬢を即座に追い出すってね。
そのせいでうちみたいな家格の低い貧乏伯爵家の末っ子が呼ばれたんだ。
陛下直々のご用命。
持参金どころか逆に金をやるからひとり寄越せってね。
分かった途端、姉達の動きは早かった。
即効で縁のあった令息達と婚約して令息と縁のない私が残った。
先月デビューしたばかりで宛がなかった。
しかも知らされたのは姉達の婚約が決まってから。
四女の私にかける金がないからと親から社交界の出入りは制限されてたし、姉達は私に噂話だけペラペラ喋ってた。
貧乏くじの残念王子ってね。
両親まで結託してるし、姉達も意地悪だ。
頭の中に姉達の声が反芻してる。
“可哀想ね、ラインは。私なら耐えられない。ふふ”
“ごめんなさいね?押し付けたみたいで”
“王子と暮らすと社交界の出入りも出来なくなるそうね”
“ラインなら大丈夫よ?贅沢しないし、いえ、したことなくて分からないものね?”
“そうだったわね、ちょうど良かったのよね。ほほ”
けらけら、けらけらと三人で笑ってた。
その横で両親は私がいてよかったと笑っていた。
四人も娘はいらなかったけど役に立ったって。
私のおかげで姉達の持参金が用意できたって。
跡取りの兄達も残った金で部屋の改装が出来るとか新しい馬具を買えるとか喜んで、皆は帰ってくるなと言っていた。
貰ったお金を返したくないし、私が逃げれば違約金を払わなきゃいけなくなるから。
私に帰る場所なんかない。
思い出すと辛い。
「……ふっ、……ぐすっ」
目に涙が溜まって小さくえずいた。
「勝手ながら、滞在に、お部屋をお借りいたします」
涙声で喉が締め付けられて声が上擦る。
「帰れと言ったんだ!」
いきなりの怒号にびくっと全身が揺れた。
「どこに」
「馬鹿なのか。産まれ育った家に帰れと言ってるんだ!」
「……帰っても、またここに送り出されます」
そういう王命だもの。
今までのお見合いとは訳が違う。
「リカルド王子が、何人も、追い返したからです。帰れば私にも家にも罰があります」
あんたのせいだと涙目で睨んだ。
帰ってくるなと再三家族に言われたんだ。
ここしかない。
「そんなに目障りなら、目につかないように致します」
涙でにじんで王子の顔色は分からない。
でももう怒鳴って怒る気配はない。
これ以上泣き顔を晒すのも悔しいから黙って一礼してその場を離れた。
リカルド王子のお屋敷。
我が家よりは大きいし、使用人も大勢いる。
通路の端に隠れて顔を急いで拭いた。
「実家だよ。私のもとにいても仕方がないだろう。早く目の前から消えろ」
目の前って見てもないじゃん。
見もせずに帰れかい。
「帰れるところがあるなら帰りますけど」
あんたのおかげで帰れないんだ。
それに噂通り。
フラれて廃嫡の傷心から意固地になった。
次々送られる令嬢を即座に追い出すってね。
そのせいでうちみたいな家格の低い貧乏伯爵家の末っ子が呼ばれたんだ。
陛下直々のご用命。
持参金どころか逆に金をやるからひとり寄越せってね。
分かった途端、姉達の動きは早かった。
即効で縁のあった令息達と婚約して令息と縁のない私が残った。
先月デビューしたばかりで宛がなかった。
しかも知らされたのは姉達の婚約が決まってから。
四女の私にかける金がないからと親から社交界の出入りは制限されてたし、姉達は私に噂話だけペラペラ喋ってた。
貧乏くじの残念王子ってね。
両親まで結託してるし、姉達も意地悪だ。
頭の中に姉達の声が反芻してる。
“可哀想ね、ラインは。私なら耐えられない。ふふ”
“ごめんなさいね?押し付けたみたいで”
“王子と暮らすと社交界の出入りも出来なくなるそうね”
“ラインなら大丈夫よ?贅沢しないし、いえ、したことなくて分からないものね?”
“そうだったわね、ちょうど良かったのよね。ほほ”
けらけら、けらけらと三人で笑ってた。
その横で両親は私がいてよかったと笑っていた。
四人も娘はいらなかったけど役に立ったって。
私のおかげで姉達の持参金が用意できたって。
跡取りの兄達も残った金で部屋の改装が出来るとか新しい馬具を買えるとか喜んで、皆は帰ってくるなと言っていた。
貰ったお金を返したくないし、私が逃げれば違約金を払わなきゃいけなくなるから。
私に帰る場所なんかない。
思い出すと辛い。
「……ふっ、……ぐすっ」
目に涙が溜まって小さくえずいた。
「勝手ながら、滞在に、お部屋をお借りいたします」
涙声で喉が締め付けられて声が上擦る。
「帰れと言ったんだ!」
いきなりの怒号にびくっと全身が揺れた。
「どこに」
「馬鹿なのか。産まれ育った家に帰れと言ってるんだ!」
「……帰っても、またここに送り出されます」
そういう王命だもの。
今までのお見合いとは訳が違う。
「リカルド王子が、何人も、追い返したからです。帰れば私にも家にも罰があります」
あんたのせいだと涙目で睨んだ。
帰ってくるなと再三家族に言われたんだ。
ここしかない。
「そんなに目障りなら、目につかないように致します」
涙でにじんで王子の顔色は分からない。
でももう怒鳴って怒る気配はない。
これ以上泣き顔を晒すのも悔しいから黙って一礼してその場を離れた。
リカルド王子のお屋敷。
我が家よりは大きいし、使用人も大勢いる。
通路の端に隠れて顔を急いで拭いた。
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