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次はメイド長と執事長の二人と顔合わせ。

普通ならリカルド王子のお声かけのもと、さっきの部屋で面通しされるんたけど。

私は勝手にここに居着くんだから、勝手にすることにした。

ハウスキーパーを見つけて二人に会いたいと伝えたら、慌てて顔合わせさせてくれた。

「初めまして。本日よりお世話になります」

二人とも帰らなかったことに戸惑ってる。

「こちらにお住まいになるということなら。……奥様、とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「いいえ、リカルド王子は拒否されましたので呼ばれる資格はありません」

呼ばれたくもない。

「許可もなく勝手に私がここに住むのです。つきましてはお願いがあります」

頭を下げた。

本来、貴族が使用人に下げてはならない。

二人が慌ててる。

よかった。

いい反応。

ここで畳んでしまおう。

「本当に、リカルド王子の許しのないまま、勝手にここにおります。いつ力ずくで追い出されてもおかしくありません。帰ろうにも我が家は嫁に行って帰ってくるなど恥と考える家風で帰る宛もありません。ここを追い出されたら外で暮らすしかありません。お願いです。今後の将来のためにここでお勤めを教えてください」

「まあ、なんてことっ」

メイド長の悲鳴みたいな声に同情が混じってる。

やった!

もう一押し!

大袈裟すぎるかもしれないけど、膝をついた。

「お辞めなさい!」

執事長から腕を引かれて立たされちゃった。

顔が怒ってる。

やり過ぎた。

でもごり押したる。

働かせてくれと土下座ばりに頼み込んで、やっと途方に暮れた二人が頷いた。

やった。

メイドデビュー。

これでここを追い出されてもどうにかなるはず。

てか、マシなはず。

部屋も使用人部屋を貰った。

でも実家の部屋より広いしキレイ。

多分、メイド長の部屋。

譲ってくれたんだ。

メイド長達が黙ってるけどそこは分かる。

と言うわけで勝手にもっと下っぱの部屋に移動した。

一番ボロいところ。

「奥様!」

「奥様じゃありません。許しがありません。私がここの勤めで一番の下っぱです。ここで十分です」

部屋数が足らなくて昔から使用人部屋を使ってたもんね。

こんなもんよ。

いい部屋は跡継ぎの男達が取るし、その次に姉達。

貴族でも上に男女合わせて5人もいると大変なんだよ。

皆、ひとり部屋を譲らないし。

おかげでゲストルームがなくてジジババや親戚のお泊まりお断り。

昔もメイド長が私に部屋を譲ってくれたんだ。

あれも人の部屋を盗った気がして居心地悪かった。

その夜からせっせと働いた。

メイド長と執事長が青くなるけど知らんぷり。

新入りなんだからと皆に敬語。

存在自体を嫌がる人もいたけど気にしてられない。

いずれこのお屋敷を出て自活するんだから。
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