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王妃以外にも何枚が書き上げて執事長に預けると、その日の夕方には王妃本人が来られた。
でもなぜかお忍びで。
継母でも親なんだから普通に来ればいいのに。
寝台に寄りかかって座るリカルド王子を睨んで怒ってるし。
なんで?
リカルド王子はニコニコ笑って愛想がいいのに。
真っ黒なローブを羽織って寝室に入るまで顔を隠してた。
デビュタントの日と合わせて二度めの御目もじ。
御子様がいらっしゃると思えない美貌と立ち姿。
黄金の御髪。
青い透けるような瞳。
御目にかかった時は遠目からも穏やかな笑みを浮かべて優しそうと思ったのに。
外見の美しさと相まって今は吹き荒れる雪の女王みたい。
メイド長と執事長。
吹雪のような凍える空気の中、私がここにいるのもなんで?
「……よくも。……ここまで落ちぶれたくせに、まだ私の息子の邪魔をする気なのね。……本当に、あの女にそっくりな煩わしい子」
え、いきなり?
呪詛みたいに絞り出すから怖い。
「邪魔なんてとんでもない。あなたの大事な息子は私にとって可愛い弟です。何もかも譲ってしまいたいくらい」
「白々しい。口ではどうとでも言えるわ。大人しく過ごすというならこの手紙は何?私が王家の闇だとかなんだと失礼な中傷を書き連ねて」
指に挟んだ封筒。
リカルド王子のお送りした手紙。
執事長が側のテーブルの椅子を引いて腰かけるのを待つのに目もくれない。
メイド長がお茶のご用意をして勧めても汚らわしいと目を吊り上げてる。
私はこの中に巻き込まれて端に寄って空気。
一生懸命、存在を消します。
どうせ眼中にないのは分かるけど。
怖いからとことん空気。
私は空気。
うっすら気づいたけどリカルド王子も雪の女王に負けないくらい、ゆっくり空気が冷えてきて怖い。
「“大事な話”とは何かしら。将来を約束されて社交界いち美しく高貴な華の乙女を婚約者に持ちながら、恥を晒したリカルド王子。幽閉の身でつまらない妄想に苛まれているのね。生き人形のように寝台に寝ているのが証拠かしら。陛下にお願いして最高の医者を見つけてあげる」
「いえいえ、心身ともに絶好調だったんですよ。今は特にのんびり暮らす良さを知ってしまったので満足しています。それにしてもあれだけ私がお膳立てしてあげたのに。しつこくつまらないことをするから、寝台から出るのが億劫になってしまった。そのしつこさはどういうことなのかお話を聞きたくなりまして」
「ふふ、そうね、ひどい顔色。起きるのも辛そう。引き込もっている間に不摂生が過ぎたのじゃなくて?品のない庶民の娘を好むようになったもの。何か悪い病気をもらったのね。頭にかしら?可哀想に。王家の恥晒しだけど、継母として胸が痛むわ。でも頭がおかしくなったからと人恋しさに私を呼ぶのはやめなさいね?つまらない話を忙しい私に聞かさないで」
「つまらないと決めつけることありませんよ。相変わらずせっかちで人の話を理解しない方ですね。そろそろ長く続いたこの顛末をどう始末をつけるのかの話し合いをするのですから、きっと楽しめますよ。全てあなたが引っ掻き回したことに答えが出ますから」
「あら、私に負い目があるような口ぶりだわ。どういうつもりでそんなことを言ってるのかしら。“真実の愛”に狂って衆人環視の中、王族の誇りに傷をつけたことを忘れてしまったの?心も頭も可哀想になってしまったんだわ。何もかもを失ったあなたが何を言葉にして何をしようが全て戯れ言でしかならないと分からないなんて」
「ああ、婚約破棄の騒動は面白い劇だったでしょう?彼女は雇った旅芸人です。本当に素晴らしい演者でしたね。私の熱演も評価してください。あなただけでなく皆が騙されて」
え、なにそれ。
なんでそんな訳の分からないことしたの?
私だけじゃなく王妃も口をあんぐり開けてぽかんとしてる。
でもにやっと顔が歪んだ。
「ふふ、そんなことして何になるというの?ほほ、馬鹿な子。ほほほっ」
「面白い話もあるでしょう?ふふ」
「そうね、悪くはないわ。本当に頭がおかしいのは分かったから。ほほほ!」
ひとしきり笑って、帰ると仰った。
でもリカルド王子が引き留めてる。
「さあ、本題に入りましょう。狂人の戯れ言と無視もできずにここへ来た理由。まだ私を望む声が収まっていませんからね。弟のために一肌脱ごうと思ったのに、実の母親がこうも理解力がないのなら弟も立場が苦しくなってしまう。兄としてとても心配しております」
「……まあ、なんて口の聞き方をするの。あの子のために私はなんでもするのよ?それを馬鹿にするわけ?」
青白い火花がバチバチ、バチバチ。
こ、怖い。
うちの家族より怖い。
本当に、なんで私がここに居残りなの。
「大事な話というなら人払いくらいしなさい」
「ごもっとも」
ああ、これで私も解放される。
ホッとしたのに。
私は残れって言われた。
なんで私が居残り。
涙目になりそう。
足もすくんで震えるし。
「そのメイドも下がらせなさい」
氷の眼差しで睨まれて手が震えてきた。
「彼女はそのままで。父より預かった私の妻ですから。話を聞く立場にいます」
驚いて私を見つめる王妃の視線に殺されそう。
痛いくらい憎しみが混ざってる。
見えない手が私の首絞めてる。
怖くて息が出来ない。
涙出てきた。
「……下劣な趣味だこと。下級メイドのお仕着せを着せて侍らせてたなんて。身分の低い女を好むのは変わらないようね」
「おかげであなたから隠せました。妻を探していたのでしょう?子を成す心配から、この屋敷の女性全てに毒を盛るほど」
どく?
毒?!
でもなぜかお忍びで。
継母でも親なんだから普通に来ればいいのに。
寝台に寄りかかって座るリカルド王子を睨んで怒ってるし。
なんで?
リカルド王子はニコニコ笑って愛想がいいのに。
真っ黒なローブを羽織って寝室に入るまで顔を隠してた。
デビュタントの日と合わせて二度めの御目もじ。
御子様がいらっしゃると思えない美貌と立ち姿。
黄金の御髪。
青い透けるような瞳。
御目にかかった時は遠目からも穏やかな笑みを浮かべて優しそうと思ったのに。
外見の美しさと相まって今は吹き荒れる雪の女王みたい。
メイド長と執事長。
吹雪のような凍える空気の中、私がここにいるのもなんで?
「……よくも。……ここまで落ちぶれたくせに、まだ私の息子の邪魔をする気なのね。……本当に、あの女にそっくりな煩わしい子」
え、いきなり?
呪詛みたいに絞り出すから怖い。
「邪魔なんてとんでもない。あなたの大事な息子は私にとって可愛い弟です。何もかも譲ってしまいたいくらい」
「白々しい。口ではどうとでも言えるわ。大人しく過ごすというならこの手紙は何?私が王家の闇だとかなんだと失礼な中傷を書き連ねて」
指に挟んだ封筒。
リカルド王子のお送りした手紙。
執事長が側のテーブルの椅子を引いて腰かけるのを待つのに目もくれない。
メイド長がお茶のご用意をして勧めても汚らわしいと目を吊り上げてる。
私はこの中に巻き込まれて端に寄って空気。
一生懸命、存在を消します。
どうせ眼中にないのは分かるけど。
怖いからとことん空気。
私は空気。
うっすら気づいたけどリカルド王子も雪の女王に負けないくらい、ゆっくり空気が冷えてきて怖い。
「“大事な話”とは何かしら。将来を約束されて社交界いち美しく高貴な華の乙女を婚約者に持ちながら、恥を晒したリカルド王子。幽閉の身でつまらない妄想に苛まれているのね。生き人形のように寝台に寝ているのが証拠かしら。陛下にお願いして最高の医者を見つけてあげる」
「いえいえ、心身ともに絶好調だったんですよ。今は特にのんびり暮らす良さを知ってしまったので満足しています。それにしてもあれだけ私がお膳立てしてあげたのに。しつこくつまらないことをするから、寝台から出るのが億劫になってしまった。そのしつこさはどういうことなのかお話を聞きたくなりまして」
「ふふ、そうね、ひどい顔色。起きるのも辛そう。引き込もっている間に不摂生が過ぎたのじゃなくて?品のない庶民の娘を好むようになったもの。何か悪い病気をもらったのね。頭にかしら?可哀想に。王家の恥晒しだけど、継母として胸が痛むわ。でも頭がおかしくなったからと人恋しさに私を呼ぶのはやめなさいね?つまらない話を忙しい私に聞かさないで」
「つまらないと決めつけることありませんよ。相変わらずせっかちで人の話を理解しない方ですね。そろそろ長く続いたこの顛末をどう始末をつけるのかの話し合いをするのですから、きっと楽しめますよ。全てあなたが引っ掻き回したことに答えが出ますから」
「あら、私に負い目があるような口ぶりだわ。どういうつもりでそんなことを言ってるのかしら。“真実の愛”に狂って衆人環視の中、王族の誇りに傷をつけたことを忘れてしまったの?心も頭も可哀想になってしまったんだわ。何もかもを失ったあなたが何を言葉にして何をしようが全て戯れ言でしかならないと分からないなんて」
「ああ、婚約破棄の騒動は面白い劇だったでしょう?彼女は雇った旅芸人です。本当に素晴らしい演者でしたね。私の熱演も評価してください。あなただけでなく皆が騙されて」
え、なにそれ。
なんでそんな訳の分からないことしたの?
私だけじゃなく王妃も口をあんぐり開けてぽかんとしてる。
でもにやっと顔が歪んだ。
「ふふ、そんなことして何になるというの?ほほ、馬鹿な子。ほほほっ」
「面白い話もあるでしょう?ふふ」
「そうね、悪くはないわ。本当に頭がおかしいのは分かったから。ほほほ!」
ひとしきり笑って、帰ると仰った。
でもリカルド王子が引き留めてる。
「さあ、本題に入りましょう。狂人の戯れ言と無視もできずにここへ来た理由。まだ私を望む声が収まっていませんからね。弟のために一肌脱ごうと思ったのに、実の母親がこうも理解力がないのなら弟も立場が苦しくなってしまう。兄としてとても心配しております」
「……まあ、なんて口の聞き方をするの。あの子のために私はなんでもするのよ?それを馬鹿にするわけ?」
青白い火花がバチバチ、バチバチ。
こ、怖い。
うちの家族より怖い。
本当に、なんで私がここに居残りなの。
「大事な話というなら人払いくらいしなさい」
「ごもっとも」
ああ、これで私も解放される。
ホッとしたのに。
私は残れって言われた。
なんで私が居残り。
涙目になりそう。
足もすくんで震えるし。
「そのメイドも下がらせなさい」
氷の眼差しで睨まれて手が震えてきた。
「彼女はそのままで。父より預かった私の妻ですから。話を聞く立場にいます」
驚いて私を見つめる王妃の視線に殺されそう。
痛いくらい憎しみが混ざってる。
見えない手が私の首絞めてる。
怖くて息が出来ない。
涙出てきた。
「……下劣な趣味だこと。下級メイドのお仕着せを着せて侍らせてたなんて。身分の低い女を好むのは変わらないようね」
「おかげであなたから隠せました。妻を探していたのでしょう?子を成す心配から、この屋敷の女性全てに毒を盛るほど」
どく?
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