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「ライン義姉様は恥ずかしがりや?兄上といるといつも逃げたがるね」
「え、……うん。……そうなの。……ああいうの、恥ずかしくて」
お互い口調が砕けてきて仲良し。
ルルドラ王子とパブリックルームで盤の駒遊び中。
リカルド王子は陛下のお手伝いで執務室にいる。
隠居したのにとぼやいてた。
皇太子のルルドラ王子は成人前だからあまりお仕事に携われないし、もともとリカルド王子が手掛けてたお仕事が多いんだって。
陛下がお前が手広くするからだと文句言ってた。
誰かに任そうにも色々と複雑でそう簡単に任せられないみたい。
リカルド王子はぶすくれてたけど、忙しいのも楽しそう。
仕事、好きなのね。
きっと暇すぎたせいで私なんかを構うんだ。
「もう一年も夫婦なのに。もうすぐ結婚記念日だよね?」
「……うん」
「待って、そこに置くとこっちの駒でとられるよ。そのあとここを攻撃されるから手詰まりになる。ここに逃げた方がいい」
「本当だ。あ、ねぇ、これをこっちに動かしたら?」
「気づかなかった。それがいいよ」
少しは上達したもんね。
上手になったねとルルドラ王子に誉められた。
それと結婚記念日のお祝いに何が欲しいか訊かれたけど思い付かない。
「……何がいいかなぁ。でもちゃんと奥様はしてないのに、貰うのも気が引ける。ダメダメだし」
メイドのお仕事の方が得意。
腕がなまるから戻りたい。
「ちゃんと奥様してるじゃない?僕はライン義姉様が兄上のお嫁さんで嬉しいよ。ずっと僕の義姉でいてね」
「ルルドラ王子にそう言われると嬉しい。ありがとう」
「でも本当は僕のお嫁さんがよかったなぁ。いいなあ、兄上は」
「えー?そうなの?」
「そうだよ、ライン義姉様がいい。似た人と結婚したいなぁ」
「よくある色だからすぐに見つかるよ」
「色じゃないよ」
「んー?見かけ?身長?」
「ううん、性格」
「性格は見ただけじゃ分からないね」
「そう。探すのが大変そう。しかも皇太子だから好きに選べないし」
「今度の新年会で御披露目するでしょ?少しはご令嬢とお話出来るんじゃない?」
「僕、11才だよ?新年会に来るのは15才以上の女性ばかりだし、雛壇から挨拶したらすぐに帰る予定」
「そっかー」
「お母様がいれば王宮で年の近い人達を招いてお茶会とか何か催しをしてもらえるんだけど」
病気療養のためご実家に里帰りと公表されてるけど本当は王宮に幽閉の王妃様。
二度と出てこられない。
「どなたか代わりを勤めてくださればいいけど」
「ライン義姉様は?」
「無理だよぉ。デビュタントしか行ったことないし、リカルド王子と一緒に謹慎の身だもん」
「でも兄上は復帰したよ?」
「お仕事だけだし、復権はしてないもん。私は他の貴族と会ったこともないし、交流の手紙も書いたことないのよ」
「ライン義姉様のお家も変わってるよね。子供の集まるお茶会にも社交界の出入りも全くさせてないし、勉強も楽器も、ダンスも教えてないなんて」
「やっぱり変?」
「すごい変だよ」
そっかぁ。変だよね。
そんなにはっきり言われたのは初めて。
リカルド王子は少し眉をひそめるだけで何も言わなかったけど。
盤の勝負はいつも通り負けた。
でも少しはやり返せたからいいや。
前より上手だから。
休憩はお仕舞い。
次は楽器とダンス。
リカルド王子の代理で、今はルルドラ王子が私の先生。
教えるのもおさらいになっていいと言って引き受けてくれた。
「ライン義姉様はがんばり屋だね」
「上達したらご褒美があるの。楽しみ」
「飴?」
「うん。でも最近はケーキが多いかな」
「あはは、お菓子がいつもご褒美だよね。そう言えば前よりふっくらしてきた気がする」
「え、やっぱり?いけないっ、お菓子控えなきゃ」
ドレスがいくつか着れなくなった。
ピチピチで苦しいの。
身長のせいだけじゃない。
反省してたらルルドラ王子は首をかしげてた。
「えー?今くらいでいいんじゃない?気持ちいいから」
「そう?」
「うん」
手を伸ばしてふにふにと二の腕を掴んでる。
「添い寝の時、ここが気持ちいい。他も、柔らかくて気持ちいいし、や、優しいし、ライン義姉様のことが好きだよ」
「そうなんだぁ」
へぇ。
私も自分の二の腕ふにふに。
「あ、お嫁さんの理想がまたひとつ出来たね」
優しくて二の腕が気持ちいい人。
「……ライン義姉様は鈍いって言われない?」
「言われるけど、なんで?」
「僕もそう思ったから」
そっかぁ、ルルドラ王子から見ても私は鈍いんだ。
どの辺が?と思ってルルドラ王子の顔を見たら頬が赤かった。
すごい呆れた顔をしてる。
「……さっきから何なの?。……僕の精一杯だったのに。……お嫁さんはこんな馬鹿みたいに鈍くない人がいい」
「……ごめんね?」
なんで貶された、私は。
「え、……うん。……そうなの。……ああいうの、恥ずかしくて」
お互い口調が砕けてきて仲良し。
ルルドラ王子とパブリックルームで盤の駒遊び中。
リカルド王子は陛下のお手伝いで執務室にいる。
隠居したのにとぼやいてた。
皇太子のルルドラ王子は成人前だからあまりお仕事に携われないし、もともとリカルド王子が手掛けてたお仕事が多いんだって。
陛下がお前が手広くするからだと文句言ってた。
誰かに任そうにも色々と複雑でそう簡単に任せられないみたい。
リカルド王子はぶすくれてたけど、忙しいのも楽しそう。
仕事、好きなのね。
きっと暇すぎたせいで私なんかを構うんだ。
「もう一年も夫婦なのに。もうすぐ結婚記念日だよね?」
「……うん」
「待って、そこに置くとこっちの駒でとられるよ。そのあとここを攻撃されるから手詰まりになる。ここに逃げた方がいい」
「本当だ。あ、ねぇ、これをこっちに動かしたら?」
「気づかなかった。それがいいよ」
少しは上達したもんね。
上手になったねとルルドラ王子に誉められた。
それと結婚記念日のお祝いに何が欲しいか訊かれたけど思い付かない。
「……何がいいかなぁ。でもちゃんと奥様はしてないのに、貰うのも気が引ける。ダメダメだし」
メイドのお仕事の方が得意。
腕がなまるから戻りたい。
「ちゃんと奥様してるじゃない?僕はライン義姉様が兄上のお嫁さんで嬉しいよ。ずっと僕の義姉でいてね」
「ルルドラ王子にそう言われると嬉しい。ありがとう」
「でも本当は僕のお嫁さんがよかったなぁ。いいなあ、兄上は」
「えー?そうなの?」
「そうだよ、ライン義姉様がいい。似た人と結婚したいなぁ」
「よくある色だからすぐに見つかるよ」
「色じゃないよ」
「んー?見かけ?身長?」
「ううん、性格」
「性格は見ただけじゃ分からないね」
「そう。探すのが大変そう。しかも皇太子だから好きに選べないし」
「今度の新年会で御披露目するでしょ?少しはご令嬢とお話出来るんじゃない?」
「僕、11才だよ?新年会に来るのは15才以上の女性ばかりだし、雛壇から挨拶したらすぐに帰る予定」
「そっかー」
「お母様がいれば王宮で年の近い人達を招いてお茶会とか何か催しをしてもらえるんだけど」
病気療養のためご実家に里帰りと公表されてるけど本当は王宮に幽閉の王妃様。
二度と出てこられない。
「どなたか代わりを勤めてくださればいいけど」
「ライン義姉様は?」
「無理だよぉ。デビュタントしか行ったことないし、リカルド王子と一緒に謹慎の身だもん」
「でも兄上は復帰したよ?」
「お仕事だけだし、復権はしてないもん。私は他の貴族と会ったこともないし、交流の手紙も書いたことないのよ」
「ライン義姉様のお家も変わってるよね。子供の集まるお茶会にも社交界の出入りも全くさせてないし、勉強も楽器も、ダンスも教えてないなんて」
「やっぱり変?」
「すごい変だよ」
そっかぁ。変だよね。
そんなにはっきり言われたのは初めて。
リカルド王子は少し眉をひそめるだけで何も言わなかったけど。
盤の勝負はいつも通り負けた。
でも少しはやり返せたからいいや。
前より上手だから。
休憩はお仕舞い。
次は楽器とダンス。
リカルド王子の代理で、今はルルドラ王子が私の先生。
教えるのもおさらいになっていいと言って引き受けてくれた。
「ライン義姉様はがんばり屋だね」
「上達したらご褒美があるの。楽しみ」
「飴?」
「うん。でも最近はケーキが多いかな」
「あはは、お菓子がいつもご褒美だよね。そう言えば前よりふっくらしてきた気がする」
「え、やっぱり?いけないっ、お菓子控えなきゃ」
ドレスがいくつか着れなくなった。
ピチピチで苦しいの。
身長のせいだけじゃない。
反省してたらルルドラ王子は首をかしげてた。
「えー?今くらいでいいんじゃない?気持ちいいから」
「そう?」
「うん」
手を伸ばしてふにふにと二の腕を掴んでる。
「添い寝の時、ここが気持ちいい。他も、柔らかくて気持ちいいし、や、優しいし、ライン義姉様のことが好きだよ」
「そうなんだぁ」
へぇ。
私も自分の二の腕ふにふに。
「あ、お嫁さんの理想がまたひとつ出来たね」
優しくて二の腕が気持ちいい人。
「……ライン義姉様は鈍いって言われない?」
「言われるけど、なんで?」
「僕もそう思ったから」
そっかぁ、ルルドラ王子から見ても私は鈍いんだ。
どの辺が?と思ってルルドラ王子の顔を見たら頬が赤かった。
すごい呆れた顔をしてる。
「……さっきから何なの?。……僕の精一杯だったのに。……お嫁さんはこんな馬鹿みたいに鈍くない人がいい」
「……ごめんね?」
なんで貶された、私は。
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