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36※リカルドside
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「あんな幼い皇太子に?ふふ」
「私の弟は賢い。新皇太子を侮るな」
二面性においては私より政治に向いてる。
「留意いたしますわ」
小馬鹿にしてるのは透けて見えて眉をひそめた。
痛い目にあっても知らん。
あれは何だかんだで継母の血を継ぎ、側で育った。
執念深さは母親並みと疑っている。
見た目の可愛さだけではない。
「話は終わりだ。次に見かけても構うな」
「待って!」
とっとと逃げようと部屋から出ようとしたら慌てて引き留められた。
「……まだ何かあるのか」
ため息をつくと珍しく戸惑って掴んだ袖から手を離した。
「な、何かあるわけではありませんが」
「なら私は下がる。君も会場に戻ればいい。具合が悪いのは方便だろう」
私の言葉にムッと眉を寄せた。
「具合が悪いのは本当ですわ。懐かしい顔に驚かされて胸が苦しくなりましたもの」
「顔を見せて悪かったな。今日はこれで下がるからもう煩わせることもない」
割れた片眼鏡と剥がれた口髭のおかげで会場の散策は終わりだ。
「そういうことではなく、……何年も心を砕いた婚約者に会って動揺するのは仕方ないことでしょう。リカルド王子も同じではありませんの?」
「会場にいると分かっていた。見破られた驚きだけだ」
「嫌い合っていたわけじゃありませんわ。何年も信頼を築いていましたし。……私達はあのことさえなかったら結婚してたはずですよね?」
「……ああ、まあ」
継母の件がなければ流れのままだったと同意に頷く。
「そうですわよね。そうなるはずでしたのに」
なぜそうならなかったと不満げな様子に戸惑い不愉快になった。
「それこそ今さらだろう。そんな話をしてどうする?」
「だってあの方のせいで私達はこうなってしまったのですよ。なんとも思わないことがおかしいのです」
強硬な態度と話を聞かない頑なさに頭痛がしてきた。
「……君の言う通りなら私はおかしい部類らしい」
今のままで満足している。
「どうしてそうすぐに諦めてしまいますの」
「諦めてはいない。望む形になったと満足している」
「私達が犠牲になったのにそれでいいのですか?」
「婚約期間のことなら申し訳ないと思ってる。君に苦痛を与えて時間を無駄にしてしまった」
皇太子妃として厳しい教育をこなし、王妃は応援するふりをして不妊にしようとした。
そのことは悪いと思う。
私と関わらなければもう結婚して一人か二人の子をもうけてもおかしくない年齢だ。
そう思って答えたのにイライラして怒り始めた。
昔からこうやってよく爆発する。
いつも話を聞いていたから分かってるつもりだが、人に軽々しく言えない内容を私に訴えたいのだろう。
またかと思いつつ、話を聞けば落ち着くかとなだめるつもりで謝った。
「そのことではありませんっ。ああ、もうっ!本当に分かっていらっしゃらない!どうしてそんなに分からないのですか!」
「察しが悪くて悪かった」
「謝って誤魔化さないで!」
「分かった。話を聞くから落ち着け」
「私達の将来です!なぜ私達が犠牲にならなくてはいけないのよ!私とあなたが国を担う筈だったの、むが、」
「声が大きい。静かに話せ」
外に聞こえる。
急いで口に手を被せた。
「んんっ!もう!離してくださいまし!」
「しーっ、だから静かに、」
「うるさい!うるさーい!あなたのせいですからね!ばかばかばか!」
「馬鹿でも何でもいいから皇太子に歯向かう発言はやめろ」
「いやよ!あの毒マニアの陰険王妃とネクラ王子のせいでこうなったのよ!あなただって苦しめられて、んむっ!むー!ぷは!今に満足だなんておかしいのよ!将来を壊されて犬猫じゃあるまいし宛がわれた令嬢と無理やりけっ、こん、うぐ、むむっ」
「黙れ。その爆発癖をどうにかしろ。うんざりだ」
何年も付き合ったが本当にうんざりしてる。
もう関わらないですむと思ったのに。
正直言うと女は皆こういう気性なのかと思っていた。
継母もサーペント令嬢も。
他には脱いで迫ってくる女性もいたな。
そして廃嫡されて手のひら返し。
本当にラインのように真面目で穏やかなのが珍しい。
「はぁ?!誰のせいよ!ぐずぐず煮え切らないあなたが全部悪いんでしょ!?何年も受けた王妃教育は無駄になったし、こっちは結婚するつもりだったのに勝手に破棄してショックだったんだから!信じてたのに!やっともとに戻れると思ったら今度は私のことをいらないって何よ!」
「うだつの上がらない男はいらないと、」
「手紙の検閲なんか分かってるわよ!そう書くしかないじゃない!サイテー!サイテー!」
「叩くな。声を落とせ。大人しく、」
「失礼いたします」
いきなり戸が開いてルーラが入ってきたからぎょっとした。
「ノックをいたしましたが、聞こえなかったようです。返答を待たずに申し訳ありません。緊急のお知らせがございますので」
揉み合う私とサーペント令嬢を気にせずそれだけ告げた。
「何があった」
「用件は皇太子の控え室にてお尋ねくださいませ。私はサーペント公爵令嬢の身なりのお世話に残ります」
ルーラがサーペント令嬢の崩れた口紅と髪型に眉をひそめたから無言で手のひらを見せた。
ついてるのはそこだけだ。
誤解するなと視線で訴えた。
「皇太子がお待ちです。……奥様も。先程までお二人とも扉の前におりました。なだめる相手はあちらでございます。お早く。走れば追い付きますから」
「は?な、」
後半の小さな囁きに驚いて何か言う前にルーラはさっと向きを変えてサーペント令嬢のもとへ踵を返していた。
「身なりのお直しを失礼いたします」
「ええ、よろしく」
ルーラの非難の混じった視線に急かされてすぐに部屋をあとにした。
サーペント令嬢も引き留めない。
人前だと猫を被る性格と機転を利かせてこの場を引き受けたルーラに感謝した。
「私の弟は賢い。新皇太子を侮るな」
二面性においては私より政治に向いてる。
「留意いたしますわ」
小馬鹿にしてるのは透けて見えて眉をひそめた。
痛い目にあっても知らん。
あれは何だかんだで継母の血を継ぎ、側で育った。
執念深さは母親並みと疑っている。
見た目の可愛さだけではない。
「話は終わりだ。次に見かけても構うな」
「待って!」
とっとと逃げようと部屋から出ようとしたら慌てて引き留められた。
「……まだ何かあるのか」
ため息をつくと珍しく戸惑って掴んだ袖から手を離した。
「な、何かあるわけではありませんが」
「なら私は下がる。君も会場に戻ればいい。具合が悪いのは方便だろう」
私の言葉にムッと眉を寄せた。
「具合が悪いのは本当ですわ。懐かしい顔に驚かされて胸が苦しくなりましたもの」
「顔を見せて悪かったな。今日はこれで下がるからもう煩わせることもない」
割れた片眼鏡と剥がれた口髭のおかげで会場の散策は終わりだ。
「そういうことではなく、……何年も心を砕いた婚約者に会って動揺するのは仕方ないことでしょう。リカルド王子も同じではありませんの?」
「会場にいると分かっていた。見破られた驚きだけだ」
「嫌い合っていたわけじゃありませんわ。何年も信頼を築いていましたし。……私達はあのことさえなかったら結婚してたはずですよね?」
「……ああ、まあ」
継母の件がなければ流れのままだったと同意に頷く。
「そうですわよね。そうなるはずでしたのに」
なぜそうならなかったと不満げな様子に戸惑い不愉快になった。
「それこそ今さらだろう。そんな話をしてどうする?」
「だってあの方のせいで私達はこうなってしまったのですよ。なんとも思わないことがおかしいのです」
強硬な態度と話を聞かない頑なさに頭痛がしてきた。
「……君の言う通りなら私はおかしい部類らしい」
今のままで満足している。
「どうしてそうすぐに諦めてしまいますの」
「諦めてはいない。望む形になったと満足している」
「私達が犠牲になったのにそれでいいのですか?」
「婚約期間のことなら申し訳ないと思ってる。君に苦痛を与えて時間を無駄にしてしまった」
皇太子妃として厳しい教育をこなし、王妃は応援するふりをして不妊にしようとした。
そのことは悪いと思う。
私と関わらなければもう結婚して一人か二人の子をもうけてもおかしくない年齢だ。
そう思って答えたのにイライラして怒り始めた。
昔からこうやってよく爆発する。
いつも話を聞いていたから分かってるつもりだが、人に軽々しく言えない内容を私に訴えたいのだろう。
またかと思いつつ、話を聞けば落ち着くかとなだめるつもりで謝った。
「そのことではありませんっ。ああ、もうっ!本当に分かっていらっしゃらない!どうしてそんなに分からないのですか!」
「察しが悪くて悪かった」
「謝って誤魔化さないで!」
「分かった。話を聞くから落ち着け」
「私達の将来です!なぜ私達が犠牲にならなくてはいけないのよ!私とあなたが国を担う筈だったの、むが、」
「声が大きい。静かに話せ」
外に聞こえる。
急いで口に手を被せた。
「んんっ!もう!離してくださいまし!」
「しーっ、だから静かに、」
「うるさい!うるさーい!あなたのせいですからね!ばかばかばか!」
「馬鹿でも何でもいいから皇太子に歯向かう発言はやめろ」
「いやよ!あの毒マニアの陰険王妃とネクラ王子のせいでこうなったのよ!あなただって苦しめられて、んむっ!むー!ぷは!今に満足だなんておかしいのよ!将来を壊されて犬猫じゃあるまいし宛がわれた令嬢と無理やりけっ、こん、うぐ、むむっ」
「黙れ。その爆発癖をどうにかしろ。うんざりだ」
何年も付き合ったが本当にうんざりしてる。
もう関わらないですむと思ったのに。
正直言うと女は皆こういう気性なのかと思っていた。
継母もサーペント令嬢も。
他には脱いで迫ってくる女性もいたな。
そして廃嫡されて手のひら返し。
本当にラインのように真面目で穏やかなのが珍しい。
「はぁ?!誰のせいよ!ぐずぐず煮え切らないあなたが全部悪いんでしょ!?何年も受けた王妃教育は無駄になったし、こっちは結婚するつもりだったのに勝手に破棄してショックだったんだから!信じてたのに!やっともとに戻れると思ったら今度は私のことをいらないって何よ!」
「うだつの上がらない男はいらないと、」
「手紙の検閲なんか分かってるわよ!そう書くしかないじゃない!サイテー!サイテー!」
「叩くな。声を落とせ。大人しく、」
「失礼いたします」
いきなり戸が開いてルーラが入ってきたからぎょっとした。
「ノックをいたしましたが、聞こえなかったようです。返答を待たずに申し訳ありません。緊急のお知らせがございますので」
揉み合う私とサーペント令嬢を気にせずそれだけ告げた。
「何があった」
「用件は皇太子の控え室にてお尋ねくださいませ。私はサーペント公爵令嬢の身なりのお世話に残ります」
ルーラがサーペント令嬢の崩れた口紅と髪型に眉をひそめたから無言で手のひらを見せた。
ついてるのはそこだけだ。
誤解するなと視線で訴えた。
「皇太子がお待ちです。……奥様も。先程までお二人とも扉の前におりました。なだめる相手はあちらでございます。お早く。走れば追い付きますから」
「は?な、」
後半の小さな囁きに驚いて何か言う前にルーラはさっと向きを変えてサーペント令嬢のもとへ踵を返していた。
「身なりのお直しを失礼いたします」
「ええ、よろしく」
ルーラの非難の混じった視線に急かされてすぐに部屋をあとにした。
サーペント令嬢も引き留めない。
人前だと猫を被る性格と機転を利かせてこの場を引き受けたルーラに感謝した。
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