婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

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38※ルルドラside

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あのやり取りのあと変わらないのはライン義姉様だけだった。

兄上とは少し関係が変わった。

「そこに置くと負けるよ」

「え?どうして?」

いつも通りライン義姉様の側仕え達が僕らを見守りながら二人でパブリックルーム。

相変わらず盤遊びは僕が強い。

「ほら、こことここ」

駒を動かして僕の勝ち。

「うう、こうなら?」

「無理だよ」

次の手でまた駒を潰した。

「……降参です」

しょんぼりとしながら答えた。

駒の動きを覚えたけど単純な戦略ですぐに勝てる。

気が向けばわざと粘らせるけど簡単に思い通りなってしまってつまらなかった。

交流会で同年代と遊ぶけどそれも同じ。

張り合える相手がいない。

ご機嫌取りにわざと負ける相手ばかり。

それなら一生懸命かかってくるライン義姉様との方が楽しめた。

「途中こうしたら良かった。そしたらもっと攻撃の幅が広がったよ」

「でもこうするとこっちから来るもの」

「でもこの駒で手を塞げたよ?」

「あ、そうか」

なるほどと真面目に頷く。

「またルルドラの勝ちか」

仕事を終えた兄上が部屋に訪れた。

「一度でも良い勝負が出来るといいのですが。ルルドラ王子も張り合いがないと思います」

苦笑いのライン義姉様に兄上は柔らかく笑みを返してる。

そしてすぐに盤を眺めて駒をひとつ動かす。

「これで逆転する」

あっさりと先程の形勢をひっくり返した。

悔しくて睨むとにやっと口許を歪ませた。

「こうなったらどうする?」

「こうしますっ」

次の手。

考える暇もなく次々と。

お互いの駒が半数に減ったけどまだやめない。

「ライン」

「え?何でしょうか?」

熱中していたのに唐突に名前を呼んだから僕も顔を上げた。

「午後から孤児院の訪問だったろう?先に食事をして支度しなさい。まだ私達は勝負がつきそうにないから気にするな」

「あ、そうでした。失礼いたします」

すぐにルーラ達を連れて部屋を出て、残ったのは兄上と僕。

「ルルドラも勝負を投げ出したくはないだろう?」

にぃっと歪む笑みにムッとした。

負けたくない。

あれから色々とちょっかいかけるけど兄上の先手にやられてる。

ライン義姉様のことも。

二人っきりになれない。

必ず兄上の腹心が側にいる。

以前より隙がない。

「ラインはやらんぞ」

こうやって当たり前のように忠告を口にするし。

「ライン義姉様から来ます」

「行かない。あれは真面目だ」

「真面目だからこそ僕の方が好きでしょ。緊張しなくてすむし」

「お前が子供だからだ」

「いいえ、年下好きです」

「違う」

「閨もまだのくせに」

「いらん世話だ。黙れ、童貞のクソガキ」

「寝込み襲った変態。痴漢」

「……ふぅん。……それより私の勝ちだ」

「ん?……あーっ!くそぉ!」

「はは、クソガキがざまぁみろ。変に色気づくからだ」

「兄上のせいでしょうが」

見せびらかしたせいだ。

今はこういう間柄。

盤遊びでも何でもいい。

勝ったら皇太子への復帰とライン義姉様を譲れという取り決めになった。

少し背が延びたけど体格の差があるから剣はまだ全然相手にならない。

こっそり奪うつもりで動いたけど、ことごとく潰してくる兄上の周到な陰険さに呆れた。

兄上に執着するサーペント令嬢も駒として巻き込もうとしたのに、それさえも先手を打たれた。

どうやったのか回りを懐柔して他国の后妃として送り出すということに決まった。

表から消えて人脈も途切れたと思ったのに細々と分からない繋がりを持ってるし。

未成年とは言え僕が皇太子だし、交流会で人脈もあるのに。

あの手この手と涼しい顔であしらう兄上に母上がブチキレるのも分かる。

本当にムカつく。

ライン義姉様の扱いは下手くそなくせに。

この間も無理やり迫って泣かせてたとおしゃべりなメイド達の噂になってる。

イライラしながら盤に駒を戻す。

「もう一回」

「あと一回な?」

「だめですよ。僕が勝つまでやります」

「冗談じゃない。せめて政権の復帰くらいだ。時期を早めてやる」

「では次の内容はそれで」

「それなら構わないよ。勝てるならいいな」

「嫌味ですね」

一度も勝てた試しがない。

「クソガキにはちょうどいい」

睨むとふふっと鼻で笑ってる。

「嫌な人ですね」

「生意気になったからだ。まあ、それでも可愛いげがある」

「余裕ですか」

「このくらいならなぁ。……そう言えばサーペント令嬢も可愛いものだった。……別にあのくらい」

顎をさすってふと思い出したように呟いた。

あの激しい悋気のことを言いたいんだろうけど。

でも間が悪い。

「……そうでしたか」

「あ、」

身支度を終えたライン義姉様が扉の側で冷たく見つめていた。

「ライン?」

「行く前にご挨拶をと思いまして。お二人とも、ごゆるりとお過ごしくださいませ。お勤めに行って参ります」

てきぱきと動くライン義姉様に兄上が慌てている。

「待て」

「待ちません。急ぎますので。どうぞ思い出に耽ってくださいませ。お邪魔いたしません」

「また誤解しているだろう!」

「いいえ、誤解も何も書類上の間柄です。弁えておりますっ」

追いかけようと立ち上がったらテーブルに体を引っ掛かって派手に盤をひっくり返してる。

本当に下手くそ。

いつも必ず顔を見てから行くし、そろそろここに顔を出すと分かりそうなものなのに。

後ろにいるのも気づかないでもと婚約者の名前をこぼすし。

「ふ、ふふっ、ぶふふっ」

ライン義姉様をなだめる兄上の声を聞きながらテーブルに突っ伏して笑った。

あーあ、ライン義姉様も素直じゃない。

好きだからこうやって拗ねるんだ。

兄上以外には大人しいのに、可愛くやきもち焼いてる。

そこは面白くないけどあの兄上を困らせるのはライン義姉様だけだ。

化粧が崩れるからやめてと叫んでるのも聞こえてまた無理やり迫ったのかと吹き出した。

そして息を整えて僕も追いかけたら通路で壁に追い込まれて半泣きのライン義姉様を見つけた。

「ライン義姉様、いってらっしゃい」

知らぬふりで近寄ると兄上から逃げるように僕に駆け寄る。

「行って参りますね」

ほっとした様子で僕を盾にするからいつも兄上が悔しがる。

「頬にキスしていい?」

「はい」

少し屈んで頬に唇を当てる。

そしてちらっと兄上にだけ見えるようにペロッと舌を出した。

僕の態度にかっとなって前のめりにたたらを踏んで固まってる。

ふふん、仕返しだよ。

「どきなさい。ライン、こっち」

「あ、」

無理やり僕らに割り込んでライン義姉様の頬にキスしてる。

唇も奪われそうになり、驚いたライン義姉様は身を引いて逃げてる。

強引なのは怖がるのに。

本当に下手くそで笑ってしまう。

「さ、先を急ぎますので!」

やっぱり怖がって兄上から逃げるように走って行ってしまった。

「下手くそですね」

「……言うな」

勝ち誇って兄上にそう言うとむすくれた返事が返ってきた。

二人の相愛は間違いないけどギリギリまで邪魔してやると心に誓った。

面倒な皇太子を引き受けて初恋も奪われたんだからこのくらいいいよね、兄上。
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