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48※近衛隊長
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道中では時折、腰のベルトに引っかけた赤いスカーフを叩く。
視線は動かさず仕草だけ。
馬上から辺りを見渡せば人波の中から青い布を身につけた通行人がフォルクス先輩を見ていた。
「目印は赤いスカーフではありませんでしたか?」
「青の人員はルートの安全確認。赤は護衛」
「……かなり規模が大きいようですね」
「そうだな。それなりに。人員はリカルド様所有の商会の人間」
「管理しているというのはそういうことですか」
「そう。いずれルルドラ様に譲るお考えだ。これを機に近衛隊長のお前も把握しとけってことだろ」
「……恐ろしい方ですね」
お一人でこんな組織を作ったのか。
「昔からああやって勝手に動き回る方だから。年頃の夜遊びとか覚えそうで気になって俺が勝手に引っ付いて回っただけだ。街の奴らもそんなのばっかり」
「は?」
「昔から王宮から抜けてたろ。退職後は個人で護衛を続けてた」
今はリカルド王子の伝で警護専門に扱う商会の相談役を任されてると言う。
「子供相手に剣術指南をされてるんじゃなかったんですか?」
「それもしてるよ。大人と一緒に子供も預かる。嘘は言ってないしこういうのが性に合ってる」
「栄えある近衛隊長の座を降りてですか?」
「名誉はあったね。誇らしかったし。でも気を張るのに疲れたし。実力だけで上にいったけど
、いずれ年取って無理じゃん。退職後は貯金だけの生活になるし、実家は頼れないし。粘ってもそのうち若いのに力負けして辞すると思うとさ。悔しすぎ。この先どうしようかなっていつも悩んでた。それに比べて今は将来安泰だし気楽で楽しいよ。危険もないし先生やってりゃいいもん」
もとは貧乏子爵の貰われっ子だよと笑った。
幼い頃に貴族籍から抜けたご両親を亡くして、親戚の子爵の養子に迎えられたが、あまりいい子供時代ではなかったと聞いている。
近衛隊長まで上り詰めたのに。
私よりも相応しい人だといまだに思う。
「惜しいです。部下の多くがそう思ってます」
「へぇ、じゃあ存分に惜しんでくれよ。まわりにそう思われてるうちに辞めたかったから嬉しいね」
「……ひねくれてる」
「当たり前。他人より性根が悪いから成り上がったんだよ。やっぱり良いところの奴には分かんないかな」
「止めてください」
にやーっと笑ってからかう。
私の実家は近衛の中でも家格が高い。
フォルクス先輩とは違って伯爵。
かなり裕福で私は次男だからスペアという位置にいるし、騎士を多く出した家系ということで回りと見劣りしない。
それより今はルーラのことが頭に浮かんだ。
しつこく口説いてとうとう隠したがっていた体の秘密を言わせてしまった。
確かに私の立場なら不妊と分かった女性との関係は難しい。
あの時の苦しそうな表情を思い出して気分が沈んでいく。
「先輩が悩んでたとは知りませんでした」
「まあね。それよりヤバイのに睨まれてたから。リカルド様と親しすぎて。出自の低い俺を嫌っていたしねぇ。危ないから王宮から出たかったんだわ」
「……あの方ですか?」
リカルド王子と対立していたのは亡くなった后妃だけだ。
しかし表面的な取り繕いが上手い方で知る者は少なかった。
私達近衛の者達も、陛下も気づいていなかった。
リカルド王子とそれなりに距離があると感じていただけで、お美しくお優しい方だと王宮の内外でそう思われていた。
「そうそう、あのお方。今は跡形もなく溶けちまったけど、あのおっそろしいブリザードの女王様。それもだし、目立ちすぎるとね。意外なところから妬まれる。出世しすぎた。大事なものを人質に捕られる前にとんずらしたかったの」
「お気づきだったんですね」
「辞める前にちゃんと忠告したじゃん。陛下のお側だけを守れって」
「そうですけど」
退職の前に王妃と皇太子はそれぞれの護衛がいるから近衛は必要ないと強く言い含められた。
それだけ教えられて戸惑っていたら、例のお二方はそれで構わないと受け入れて、すんなりと話が通ったのお互いに好都合と捉えていたように思う。
当時を思い出して物思いに耽っていると不意にフォルクス先輩は馬車を見てにっと口角を上げた。
「あの奥様は穏やかな春の陽気みたいな方だな。ポカポカする。リカルド様とルルドラ様のまわりが暖かい」
「奥様の暖かさに部下まで引き寄せられて困ってます」
「はは、そうか。でもお前まで腑抜けるなよ。要なんだから」
「はい」
「女を追うなとは言わんけどさぁ。程々にしとけよ」
陛下にもお花畑と言われてフォルクス先輩からも。
奥様の側使えに執心しすぎると反省するしかない。
視線は動かさず仕草だけ。
馬上から辺りを見渡せば人波の中から青い布を身につけた通行人がフォルクス先輩を見ていた。
「目印は赤いスカーフではありませんでしたか?」
「青の人員はルートの安全確認。赤は護衛」
「……かなり規模が大きいようですね」
「そうだな。それなりに。人員はリカルド様所有の商会の人間」
「管理しているというのはそういうことですか」
「そう。いずれルルドラ様に譲るお考えだ。これを機に近衛隊長のお前も把握しとけってことだろ」
「……恐ろしい方ですね」
お一人でこんな組織を作ったのか。
「昔からああやって勝手に動き回る方だから。年頃の夜遊びとか覚えそうで気になって俺が勝手に引っ付いて回っただけだ。街の奴らもそんなのばっかり」
「は?」
「昔から王宮から抜けてたろ。退職後は個人で護衛を続けてた」
今はリカルド王子の伝で警護専門に扱う商会の相談役を任されてると言う。
「子供相手に剣術指南をされてるんじゃなかったんですか?」
「それもしてるよ。大人と一緒に子供も預かる。嘘は言ってないしこういうのが性に合ってる」
「栄えある近衛隊長の座を降りてですか?」
「名誉はあったね。誇らしかったし。でも気を張るのに疲れたし。実力だけで上にいったけど
、いずれ年取って無理じゃん。退職後は貯金だけの生活になるし、実家は頼れないし。粘ってもそのうち若いのに力負けして辞すると思うとさ。悔しすぎ。この先どうしようかなっていつも悩んでた。それに比べて今は将来安泰だし気楽で楽しいよ。危険もないし先生やってりゃいいもん」
もとは貧乏子爵の貰われっ子だよと笑った。
幼い頃に貴族籍から抜けたご両親を亡くして、親戚の子爵の養子に迎えられたが、あまりいい子供時代ではなかったと聞いている。
近衛隊長まで上り詰めたのに。
私よりも相応しい人だといまだに思う。
「惜しいです。部下の多くがそう思ってます」
「へぇ、じゃあ存分に惜しんでくれよ。まわりにそう思われてるうちに辞めたかったから嬉しいね」
「……ひねくれてる」
「当たり前。他人より性根が悪いから成り上がったんだよ。やっぱり良いところの奴には分かんないかな」
「止めてください」
にやーっと笑ってからかう。
私の実家は近衛の中でも家格が高い。
フォルクス先輩とは違って伯爵。
かなり裕福で私は次男だからスペアという位置にいるし、騎士を多く出した家系ということで回りと見劣りしない。
それより今はルーラのことが頭に浮かんだ。
しつこく口説いてとうとう隠したがっていた体の秘密を言わせてしまった。
確かに私の立場なら不妊と分かった女性との関係は難しい。
あの時の苦しそうな表情を思い出して気分が沈んでいく。
「先輩が悩んでたとは知りませんでした」
「まあね。それよりヤバイのに睨まれてたから。リカルド様と親しすぎて。出自の低い俺を嫌っていたしねぇ。危ないから王宮から出たかったんだわ」
「……あの方ですか?」
リカルド王子と対立していたのは亡くなった后妃だけだ。
しかし表面的な取り繕いが上手い方で知る者は少なかった。
私達近衛の者達も、陛下も気づいていなかった。
リカルド王子とそれなりに距離があると感じていただけで、お美しくお優しい方だと王宮の内外でそう思われていた。
「そうそう、あのお方。今は跡形もなく溶けちまったけど、あのおっそろしいブリザードの女王様。それもだし、目立ちすぎるとね。意外なところから妬まれる。出世しすぎた。大事なものを人質に捕られる前にとんずらしたかったの」
「お気づきだったんですね」
「辞める前にちゃんと忠告したじゃん。陛下のお側だけを守れって」
「そうですけど」
退職の前に王妃と皇太子はそれぞれの護衛がいるから近衛は必要ないと強く言い含められた。
それだけ教えられて戸惑っていたら、例のお二方はそれで構わないと受け入れて、すんなりと話が通ったのお互いに好都合と捉えていたように思う。
当時を思い出して物思いに耽っていると不意にフォルクス先輩は馬車を見てにっと口角を上げた。
「あの奥様は穏やかな春の陽気みたいな方だな。ポカポカする。リカルド様とルルドラ様のまわりが暖かい」
「奥様の暖かさに部下まで引き寄せられて困ってます」
「はは、そうか。でもお前まで腑抜けるなよ。要なんだから」
「はい」
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陛下にもお花畑と言われてフォルクス先輩からも。
奥様の側使えに執心しすぎると反省するしかない。
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