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51※ルーラ
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本当に間に合うのかしら。
落ち着かなくて飲むつもりがないのに何度もカップを持ってため息ばかり出る。
落ち着かないのはそればかりじゃないのよね。
ちらっと隣に腰かける大柄な近衛隊長を盗み見る。
こっそり見たのにばちっと視線があってまたそっぽを向く。
じろじろ見ないでよね。
この人の暑苦しい視線が嫌なのよ。
いっつも私を目で追いかけて何がそんなに楽しいのかニコニコ笑ってるし。
こっちは冷たくしてるのに。
これ以上冷淡にあしらうのも失礼な態度になってしまうし。
この間はついはしゃいでペラペラしゃべってしまったけど。
あれで距離が近くなったと勘違いされても困るわ。
誰かと親しくなるのは嫌なの。
信じて裏切られるのは一度で充分。
美しくお優しい主人と信じた王妃。
何の草花か知らずに育てて粉薬に精製した。
可愛がられてると信じてた。
お優しい王妃、親しい同僚達。
平民の私に回りが親切で、働きやすくありがたいと思っていた。
大事な草花の手入れを頼まれて特別な食事を私にだけ。
いつも話しかけてくださって体調を気遣っていた。
それも全部薬の作用を知りたいがためなのに、バカな私は王妃の優しさに感動していた。
いくつも作ったあの薬も王妃と病弱な赤ん坊だったルルドラ王子のためのものと信じて。
知らなかったとは言え荷担した。
私の立場から知らなかったと言っても王妃と共に罰せられる。
いえ、きっと私を主犯にするお考えだったはず。
死にかけた私を離宮に閉じ込めていたのはそれが理由に思えた。
寝たきりに近い状態になって離宮の使用人部屋から出られなくなっていた時期を思い出す。
朦朧としていたら夜半に忍び込んだフォルクス様と執事長に担がれてリカルド王子の別邸で治療を受けた。
起き上がれるほど回復し、ぼやけていた意識が戻ってまとまらなかった思考もまともになるとリカルド王子に事の顛末を聞かされて泣いた。
信じるかと問われて頷いた。
動けなくとも聞こえていたもの。
四肢が動かず寝台で涎や排泄物を垂らして寝ていたら王妃は何度も私を見に来て、私の有り様を喜んでいたから。
“よく効くわねぇ。リカルドもこうなると思うと嬉しいわ。先に試した薬も良くできていたのよ。マリアナ嬢も公務の休みが増えてきたの。ほほほ”
返答が出来ない私に何でも話して、体を張ってよくやったと誉められて思考の壊れていた私は愚かにも喜んでしまった。
薬のせいだけどあれを思い出して身震いをする。
食事を取れずに寝たきりだった私は糞尿にまみれて皮と骨だった。
それを笑っていた。
王妃の笑みが恐ろしかった。
回りの使用人達も同じ。
王妃へ微笑んでいた。
親しいと思っていた同僚も、みんな私の処遇を理解していたんだ。
あの優しさや微笑みは偽物。
あれ以来人が恐ろしい。
時折こうやって心が荒れて寒さに震える。
表面的に平気な不利をしても王妃の残した爪痕に胸が苦しくなる。
今の私が心から落ち着くのは無邪気に慕ってくださる奥様、命を救ってくださったリカルド王子、臥せっていた時に私の世話をして下さったメイド長達。
信じる人を思い浮かべてあの方がた以外に心を許したくないときつく手に持ったカップを握り締めた。
早く奥様の側に戻りたい。
ぬるくなったお茶をひと口すすってふと心に浮かぶ。
年下の可愛い声で私の名前を呼ぶの。
初めてお屋敷で挨拶した時は何が狙いだと警戒して監視してた。
リカルド王子が追い払うのに居着くって何よ。
メイド長達は見る目があるのか分からないけどあの子を気にした様子はなくて行儀見習いの親戚を預かった感覚みたいだった。
接してみたら失敗ばかり。
私より字を読めないしマナーを知らない。
何こいつって思った。
本気なのかわざとなのか分からなくて戸惑った。
でも一週間もしたら本当に何も知らないんだと分かって気が緩んだ。
呼べばすぐ来るし仕事を押し付けたら真面目にこなす。
監視しとかないと失敗するから側で見てないといけないけど。
こんな貴族の娘もいるんだと不思議になるだけで慕ってくるから気に入った。
回りも世間知らずな若い子にものを教えるのが楽しくて可愛がってた。
でも誰にでもなつくのが面白くなくって。
あの子の一番になりたいから夜も仕事を押し付けるふりしておやつを持って遊びに行った。
細いから少しでも食べさせて太らせようって思ったのよね。
一度、話の途中で泣き出して可哀想になって目元を舐めた。
自分が幼い頃にお母さんがしたみたいに。
驚いて目を真ん丸くするのがとても可愛かった。
子供がいたら。
もし私に子供が産まれるならこんな子がいいって。
泣き虫で甘えん坊な子。
私なら大事にするもの。
たくさん可愛がるのにって思わず馬鹿なこと考えちゃった。
もう無理だとお医者さんから言われてるのに。
回りに騙された自分が憎くなる。
ぬるい優しさと愛情を見せるこの男も嫌い。
どうして今なのと言いたくなるし、今さら女として愛されたくない。
今の私で充分だったのに違ったらよかったってそればかり。
人に愛されて子供を産んで普通の幸せを望みたくなってしまう。
答えのないことを鬱々と。
少し涙の滲んだ目元を指の背でこすった。
ラインは私の子供の代わり。
主人の大事な奥様だけど私の可愛い子供。
そんな気持ちだった。
落ち着かなくて飲むつもりがないのに何度もカップを持ってため息ばかり出る。
落ち着かないのはそればかりじゃないのよね。
ちらっと隣に腰かける大柄な近衛隊長を盗み見る。
こっそり見たのにばちっと視線があってまたそっぽを向く。
じろじろ見ないでよね。
この人の暑苦しい視線が嫌なのよ。
いっつも私を目で追いかけて何がそんなに楽しいのかニコニコ笑ってるし。
こっちは冷たくしてるのに。
これ以上冷淡にあしらうのも失礼な態度になってしまうし。
この間はついはしゃいでペラペラしゃべってしまったけど。
あれで距離が近くなったと勘違いされても困るわ。
誰かと親しくなるのは嫌なの。
信じて裏切られるのは一度で充分。
美しくお優しい主人と信じた王妃。
何の草花か知らずに育てて粉薬に精製した。
可愛がられてると信じてた。
お優しい王妃、親しい同僚達。
平民の私に回りが親切で、働きやすくありがたいと思っていた。
大事な草花の手入れを頼まれて特別な食事を私にだけ。
いつも話しかけてくださって体調を気遣っていた。
それも全部薬の作用を知りたいがためなのに、バカな私は王妃の優しさに感動していた。
いくつも作ったあの薬も王妃と病弱な赤ん坊だったルルドラ王子のためのものと信じて。
知らなかったとは言え荷担した。
私の立場から知らなかったと言っても王妃と共に罰せられる。
いえ、きっと私を主犯にするお考えだったはず。
死にかけた私を離宮に閉じ込めていたのはそれが理由に思えた。
寝たきりに近い状態になって離宮の使用人部屋から出られなくなっていた時期を思い出す。
朦朧としていたら夜半に忍び込んだフォルクス様と執事長に担がれてリカルド王子の別邸で治療を受けた。
起き上がれるほど回復し、ぼやけていた意識が戻ってまとまらなかった思考もまともになるとリカルド王子に事の顛末を聞かされて泣いた。
信じるかと問われて頷いた。
動けなくとも聞こえていたもの。
四肢が動かず寝台で涎や排泄物を垂らして寝ていたら王妃は何度も私を見に来て、私の有り様を喜んでいたから。
“よく効くわねぇ。リカルドもこうなると思うと嬉しいわ。先に試した薬も良くできていたのよ。マリアナ嬢も公務の休みが増えてきたの。ほほほ”
返答が出来ない私に何でも話して、体を張ってよくやったと誉められて思考の壊れていた私は愚かにも喜んでしまった。
薬のせいだけどあれを思い出して身震いをする。
食事を取れずに寝たきりだった私は糞尿にまみれて皮と骨だった。
それを笑っていた。
王妃の笑みが恐ろしかった。
回りの使用人達も同じ。
王妃へ微笑んでいた。
親しいと思っていた同僚も、みんな私の処遇を理解していたんだ。
あの優しさや微笑みは偽物。
あれ以来人が恐ろしい。
時折こうやって心が荒れて寒さに震える。
表面的に平気な不利をしても王妃の残した爪痕に胸が苦しくなる。
今の私が心から落ち着くのは無邪気に慕ってくださる奥様、命を救ってくださったリカルド王子、臥せっていた時に私の世話をして下さったメイド長達。
信じる人を思い浮かべてあの方がた以外に心を許したくないときつく手に持ったカップを握り締めた。
早く奥様の側に戻りたい。
ぬるくなったお茶をひと口すすってふと心に浮かぶ。
年下の可愛い声で私の名前を呼ぶの。
初めてお屋敷で挨拶した時は何が狙いだと警戒して監視してた。
リカルド王子が追い払うのに居着くって何よ。
メイド長達は見る目があるのか分からないけどあの子を気にした様子はなくて行儀見習いの親戚を預かった感覚みたいだった。
接してみたら失敗ばかり。
私より字を読めないしマナーを知らない。
何こいつって思った。
本気なのかわざとなのか分からなくて戸惑った。
でも一週間もしたら本当に何も知らないんだと分かって気が緩んだ。
呼べばすぐ来るし仕事を押し付けたら真面目にこなす。
監視しとかないと失敗するから側で見てないといけないけど。
こんな貴族の娘もいるんだと不思議になるだけで慕ってくるから気に入った。
回りも世間知らずな若い子にものを教えるのが楽しくて可愛がってた。
でも誰にでもなつくのが面白くなくって。
あの子の一番になりたいから夜も仕事を押し付けるふりしておやつを持って遊びに行った。
細いから少しでも食べさせて太らせようって思ったのよね。
一度、話の途中で泣き出して可哀想になって目元を舐めた。
自分が幼い頃にお母さんがしたみたいに。
驚いて目を真ん丸くするのがとても可愛かった。
子供がいたら。
もし私に子供が産まれるならこんな子がいいって。
泣き虫で甘えん坊な子。
私なら大事にするもの。
たくさん可愛がるのにって思わず馬鹿なこと考えちゃった。
もう無理だとお医者さんから言われてるのに。
回りに騙された自分が憎くなる。
ぬるい優しさと愛情を見せるこの男も嫌い。
どうして今なのと言いたくなるし、今さら女として愛されたくない。
今の私で充分だったのに違ったらよかったってそればかり。
人に愛されて子供を産んで普通の幸せを望みたくなってしまう。
答えのないことを鬱々と。
少し涙の滲んだ目元を指の背でこすった。
ラインは私の子供の代わり。
主人の大事な奥様だけど私の可愛い子供。
そんな気持ちだった。
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