婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

文字の大きさ
57 / 120

57※ルーラ

しおりを挟む
いつまでも皇太子のお部屋にいるわけにはいかないけど涙が止めどなく溢れてどこにも行けない。

「ふ、う、……ひっ、く」

押さえたいのにしゃくりが止まらない。

憎たらしい。

そう思えればいいのに自業自得という思いが消えない。

言われるがまま作ったんだもの。

あれの正体が何でどう使うかなんて知らなかったもの。

私のせいじゃない。

知らなかったから仕方ない。

ああ、でも。王妃は言ってた。

私以外にも飲ませて試したって。

10年前、勤めて5年目の頃。

植物の育て方、作業の工程、服薬の量も把握できたから私はいらないって。

寝物語に話を聞かせていた。

知らなかったで済む?

私の作ったもので私の知らない人が私みたいになった。

死んだ人もいるって。

無理。

吐きそう。

人殺し。

違う。

飲ませたのは私じゃない。

作っただけ。

私じゃない。

でも作ったのは私。

「……ひっ、……ぅ、奥様、リカルド王子」

すまなかったと声をかけて医師を呼んでくださった。

私にそんな価値はない。

申し訳ありません。

リカルド王子のお母様を死なせた毒は私が作りました。

私のせいです。

王妃のもとで自分が何をしたのか知りたくて勉強した。

でも分かったら恐ろしくなった。

死なせて欲しいと処罰を願ったら全ての告白を聞いた上で死ぬことはないと諭された。

聞いて驚いたが死なすつもりで助けたわけではないと仰っていた。

だから何か恩を返さねばと必死で働いた。

罪悪感で生きていることが苦しいと、死なせて欲しいと恨めしくなる時もある。

でも意味もなく死ぬのは嫌だ。

何も残さず、人を苦しめただけで死にたくない。

誰かのために生きたかった。

「……ら、いん」

年下の可愛い女の子。

細すぎて心配して。

固まった表情で暗かったのに。

気に入らなくて意地悪しても慕ってくるからほだされて、気まぐれで針仕事は早いのねって誉めたら朝日が登ったみたいにパッと明るくなったの。

ありがとうございますって元気よく答えて、その日はずっと幸せそうにしてた。

すごく眩しくて目を奪われた。

もっと笑顔にしたくて。

あの子の一番になりたくて。

家族に大事にされてないあの子を笑わせたかった。

子供っぽいあの子のおかげで母親の気分を味わえた。

奥様として扱うのに今もこっそりルーラさんって甘えてくる。

それにメイド長や同僚も寝たきりで動かない私の世話を交代でしてくれた。

背中と腰をさすった。

面倒を見てもらうまで寝たきりと汚物で肌が荒れて床擦れが酷かった。

傷跡はまだ残ってる。

でも彼女達の手当てと毎日のお世話のおかげで爛れて汁が出ていた床擦れは治った。

「……ふぅー」

やっと涙が落ち着いた。

私は恵まれてる。

まだリカルド王子と奥様にお仕えしなきゃ。

罪悪感や義務感じゃなくて、ここにいたい。

お二人のお側。

それとメイド長や皆といたいのよ。

もう一度、鏡で確認しながら乱れた髪型を整えた。

お化粧は仕方ない。

全部拭いてしまおう。

泣いて腫れた目をどうにかしなくては。

人に会わないようにこっそりと自分の部屋へ急いだ。

なのにタイミングが悪い。

「ルーラ!どうしたんだ?!」

「大声はやめてくださいませ」

途中で見回りの近衛兵にばったり。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした

佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。 その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。 長女ソフィア。 美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。 そして──もう一人。 妹、レーネ・アルヴィス。 社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。 姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。 だが彼女は知っている。 貴族社会では、 誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。 王立学園に入学したレーネは、 礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。 やがて── 軽んじていた者たちは気づく。 「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。 これは、 静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

婚約破棄されたので、とりあえず王太子のことは忘れます!

パリパリかぷちーの
恋愛
クライネルト公爵令嬢のリーチュは、王太子ジークフリートから卒業パーティーで大勢の前で婚約破棄を告げられる。しかし、王太子妃教育から解放されることを喜ぶリーチュは全く意に介さず、むしろ祝杯をあげる始末。彼女は領地の離宮に引きこもり、趣味である薬草園作りに没頭する自由な日々を謳歌し始める。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

手放したのは、貴方の方です

空月そらら
恋愛
侯爵令嬢アリアナは、第一王子に尽くすも「地味で華がない」と一方的に婚約破棄される。 侮辱と共に隣国の"冷徹公爵"ライオネルへの嫁入りを嘲笑されるが、その公爵本人から才能を見込まれ、本当に縁談が舞い込む。 隣国で、それまで隠してきた類稀なる才能を開花させ、ライオネルからの敬意と不器用な愛を受け、輝き始めるアリアナ。 一方、彼女という宝を手放したことに気づかず、国を傾かせ始めた元婚約者の王子。 彼がその重大な過ちに気づき後悔した時には、もう遅かった。 手放したのは、貴方の方です――アリアナは過去を振り切り、隣国で確かな幸せを掴んでいた。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

処理中です...