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番外編※リカルド
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ラインは苦境に対してかなり我慢強い。
細かく言うなら感情に蓋をして内を晒すのは苦手だ。
ラインの分かりやすさを理解して、傾けていた鏡をテーブルに置いた。
「ただいま戻りました」
部屋に入ってきたのはディアナ。
湯気の昇る湯桶を二つ。
カートの上下段に乗せて寝台の方へ押している。
「奥様、失礼いたします。湯あみを、」
「いいです!自分で!自分でします!一人で、しますっ」
部屋から出てほしいと願う。
怯えたラインに困惑した様子のディアナの目配せに頷きを返す。
「好きにさせろ」
「……かしこまりました」
態度から納得できないという本音が見えた。
「ラインの言う通りにする。だが、これは許せ」
立ち上がって部屋に置かれた衝立を運ぶ。
「一人にしてくださいっ」
「……目隠しはしておくから。呼ばないかぎり近寄らない。……せめて私かディアナを部屋に残せ。……今は歩けないほど辛いのだろう?」
痛みで。
私が心配しているのは烏の警告。
本当なら一番に医者に見せたい。
不安でしょうがなかった。
私の最後の一言に怯えた顔からスン、と感情が消えてギクシャクと頭を揺らす。
それを確認してから、私は手鏡を置いたテーブルの席へ戻った。
側にディアナ。
衝立の奥からチャポ、と湯を触る音と布が微かに擦れる音。
うめき声を圧し殺して、息を殺して、気配を消して。
私達に何も悟らせようとしない。
私達は諦めて耳の神経を尖らせラインの様子を探った。
「申し訳ありませんっ。少々お側を、」
根負けしたのはディアナだ。
堪えていたのに目に涙をためて。
私が黙って手を振るとすぐに部屋を飛び出した。
その後も隔たりから聞こえるのはふーっと堪えるような吐息だけ。
強情。
泣きわめけばいいのに。
私達がいるのに。
人に寄り添うくせに自分の側には寄せ付けたがらない。
ここまで尽くしているのにと1人待つ間、虚しさがもたげた。
「そちらに、いらっしゃいますか?」
「いる」
ディアナはいますかと問うのでいないと返す。
「どうした?」
「き、着替えを」
出してなかったのか。
あ、いや違う。
私が衝立を動かした時にかけてあった衣類を床に放ったせいか。
置きっぱなしにした衣類の山から寝間着を拾って隙間から差し出すが届かず、奥で無理に動こうとする気配に気づいてしまい、咄嗟に動くなと叱った。
「やめろ。そっちへ行くから」
「……はい」
消え入りそうな声の了承。
入るとベットの端に腰かけたラインは頭からすっぽりシーツを被って隠れて埃避けのカバーをかけた家具のように。
それを見たら動けなくなった。
「……」
何かしてやりたい。
声をかけたい。
さっと置いて椅子に戻るつもりだったのに、いつまでも眺めてしまう。
こうまでして、姿を見られたくないのなら。
ラインが望むようにそっとしなくては。
心が落ち着くまで待たなくては。
そう思うのにシーツ越しの姿を見ただけで顔がぐしゃぐしゃに歪む。
息苦しくなり、目頭が熱く涙が滲んできた。
潤んだ視界でよく見えないのに目を離せない。
棒立ちでラインを見つめていたら隙間から顔を覗かせた。
「……あ、れ?」
まだ私がいることに驚いてる。
不思議そうに見つめる瞳の色はいつもと同じ。
何も変わらない。
だけど顔をこちらへ向けたのに視線をそらして私を見ようとはしなかった。
その仕草で今まで築いた関係が崩れたと、それだけが伝わった。
「ひ、」
気づいたらラインを。
逃げる気配を見せたラインの上にのし掛かっていた。
細かく言うなら感情に蓋をして内を晒すのは苦手だ。
ラインの分かりやすさを理解して、傾けていた鏡をテーブルに置いた。
「ただいま戻りました」
部屋に入ってきたのはディアナ。
湯気の昇る湯桶を二つ。
カートの上下段に乗せて寝台の方へ押している。
「奥様、失礼いたします。湯あみを、」
「いいです!自分で!自分でします!一人で、しますっ」
部屋から出てほしいと願う。
怯えたラインに困惑した様子のディアナの目配せに頷きを返す。
「好きにさせろ」
「……かしこまりました」
態度から納得できないという本音が見えた。
「ラインの言う通りにする。だが、これは許せ」
立ち上がって部屋に置かれた衝立を運ぶ。
「一人にしてくださいっ」
「……目隠しはしておくから。呼ばないかぎり近寄らない。……せめて私かディアナを部屋に残せ。……今は歩けないほど辛いのだろう?」
痛みで。
私が心配しているのは烏の警告。
本当なら一番に医者に見せたい。
不安でしょうがなかった。
私の最後の一言に怯えた顔からスン、と感情が消えてギクシャクと頭を揺らす。
それを確認してから、私は手鏡を置いたテーブルの席へ戻った。
側にディアナ。
衝立の奥からチャポ、と湯を触る音と布が微かに擦れる音。
うめき声を圧し殺して、息を殺して、気配を消して。
私達に何も悟らせようとしない。
私達は諦めて耳の神経を尖らせラインの様子を探った。
「申し訳ありませんっ。少々お側を、」
根負けしたのはディアナだ。
堪えていたのに目に涙をためて。
私が黙って手を振るとすぐに部屋を飛び出した。
その後も隔たりから聞こえるのはふーっと堪えるような吐息だけ。
強情。
泣きわめけばいいのに。
私達がいるのに。
人に寄り添うくせに自分の側には寄せ付けたがらない。
ここまで尽くしているのにと1人待つ間、虚しさがもたげた。
「そちらに、いらっしゃいますか?」
「いる」
ディアナはいますかと問うのでいないと返す。
「どうした?」
「き、着替えを」
出してなかったのか。
あ、いや違う。
私が衝立を動かした時にかけてあった衣類を床に放ったせいか。
置きっぱなしにした衣類の山から寝間着を拾って隙間から差し出すが届かず、奥で無理に動こうとする気配に気づいてしまい、咄嗟に動くなと叱った。
「やめろ。そっちへ行くから」
「……はい」
消え入りそうな声の了承。
入るとベットの端に腰かけたラインは頭からすっぽりシーツを被って隠れて埃避けのカバーをかけた家具のように。
それを見たら動けなくなった。
「……」
何かしてやりたい。
声をかけたい。
さっと置いて椅子に戻るつもりだったのに、いつまでも眺めてしまう。
こうまでして、姿を見られたくないのなら。
ラインが望むようにそっとしなくては。
心が落ち着くまで待たなくては。
そう思うのにシーツ越しの姿を見ただけで顔がぐしゃぐしゃに歪む。
息苦しくなり、目頭が熱く涙が滲んできた。
潤んだ視界でよく見えないのに目を離せない。
棒立ちでラインを見つめていたら隙間から顔を覗かせた。
「……あ、れ?」
まだ私がいることに驚いてる。
不思議そうに見つめる瞳の色はいつもと同じ。
何も変わらない。
だけど顔をこちらへ向けたのに視線をそらして私を見ようとはしなかった。
その仕草で今まで築いた関係が崩れたと、それだけが伝わった。
「ひ、」
気づいたらラインを。
逃げる気配を見せたラインの上にのし掛かっていた。
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