婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

文字の大きさ
118 / 120
番外編※ルルドラ

4

しおりを挟む
近衛隊長を連れて正解だった。

兄上の腹心のライオネルも。

激昂し暴れる公爵を抑えるのに役立った。

「お前は子供のくせに母親と同じ道を辿りおって!」

「ふふ、彼女からお誘いがありまして」

「ああ!無欲の淑女など持て囃されていたくせに!影で言われていたあの下劣な話が真実か!?」

噂通りの女だったと怒鳴り散らす様が無様。

言葉ひとつ、嘘と真実の見極めも出来ない年寄り。

見苦しすぎて笑いが出る。

「望み通り差し上げましょうか?兄上の子供かもしれないが僕の子かもしれない」

「いらん!今すぐ女ごと腹にいるうちに殺してやりたいくらいだ!」

「でしょうね!あはは!」

泡を吹くほど怒鳴り、孫のために離縁させて他の女を用意しなくてはと叫んだ。

おかしくて笑いが止まらない。

嘲笑う僕の様子に気狂いと罵る。

おかしいのはこの年寄りだ。

だってそうだろう?

産まれるまで分からないじゃないか。

兄の子かもしれないのに。

僕の嘘かもしれないのに。

ライン義姉様のことも誰のことも考えていない。

そんなのどうでもいいんだ。

やっぱりこんな身勝手な人間が当たり前。

ライン義姉様と兄上が聖人すぎる。

「それより書類はどこですか?それさえ頂いたら用はありませんよ」

近衛隊長が奮闘してる隙に書斎を漁った。

ようやく欲しかった書類を見つけ近衛の数人を残し、あとはライオネルを連れて公爵の屋敷を抜けた。

「皇太子、これは一体」

「家同士の契約は実の親より優先されるからね」

目を通せと意味を込めて渡す。

「義姉上が欲しがっていた」

「……承服いたしました」

産まれた子供の権利書。

性別に関わらず子供は全て公爵家で引き取って育てるとある。

馬鹿なことに父上の許可印まで。

兄上がこれを見たら間違いなく烈火のごとく怒り父上を絞めるだろう。

僕も参加する。

いい加減許せなかった。

年寄りどもはいつまで僕らを物と思っている。

「父上は愚かだ」

「……跡目争いを避けるためでございましょう」

自分の結婚が待っているのかとよぎったら吐き気がした。

全て母に重なる。

パーティーや簡易のお見合いで知り合う令嬢たち。

あのむせかえる熱量とプレッシャー。

あいつらの欲を満足させなければ、あれは簡単に母のような化け物になる。

「……吐き気がするね」

チラッとライオネルは不機嫌な僕を盗み見たあと黙って書類をコートの内ポケットに仕舞う。

馬車に酔ったのかと馬鹿な質問はない。

何が気に入らないのか理解しているらしい。

「こちらの書類はリカルド王子へお渡しします」

「だめ。これは僕が義姉様に渡す。兄上には報告だけ」

僕からのプレゼントなんだから。

今回、義姉様の喜ぶ顔を独占するのは僕だよ。

「ふふ、兄上なら父上や僕に気兼ねしてすぐ動くことは無理だったよ。諦めたふりをしたはす。せいぜい時間をかけて取り返したんじゃないかな。どうせこのことだって知っていたはずだ。おかしいんだよ。よく考えたら。あの兄上が知らないはずない。なのに今まで何もしなかったってそういうことだよね」

使用人らしく無表情を装うが、口の端が微かに上がったのを見過ごさなかった。

完璧を装った男の本音。

崩れた仮面は僕への評価を漏らした。

減点だね。

こいつは内心で僕と兄上の違いを査定している。

僕がする側だというのに。

兄上は素晴らしい。

だけど大切なものが多すぎるから回りを巻き添えに傷ついてばかり。

やっぱり偽善的で愚鈍だ。

事が起こるまで静観する姿が目に浮かび、馬鹿らしいと笑ってしまった。

全てを望むことは難しい。

本当に欲しいものだけを望めばいい。

兄上はライン義姉様だけでなく、僕のことも父上のことも、全ての平和と安定を望むんだ。

そんなことしていたら誰かが誰かのために我慢してばかりになるじゃないか。

だから僕がライン義姉様の望みを叶えてあげるんだ。

僕は兄よりも父よりもライン義姉様が大好きだもの。

笑みの消えた顔で嫌いになると言われただけで世界が真っ暗になるほど。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした

佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。 その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。 長女ソフィア。 美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。 そして──もう一人。 妹、レーネ・アルヴィス。 社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。 姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。 だが彼女は知っている。 貴族社会では、 誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。 王立学園に入学したレーネは、 礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。 やがて── 軽んじていた者たちは気づく。 「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。 これは、 静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

婚約破棄されたので、とりあえず王太子のことは忘れます!

パリパリかぷちーの
恋愛
クライネルト公爵令嬢のリーチュは、王太子ジークフリートから卒業パーティーで大勢の前で婚約破棄を告げられる。しかし、王太子妃教育から解放されることを喜ぶリーチュは全く意に介さず、むしろ祝杯をあげる始末。彼女は領地の離宮に引きこもり、趣味である薬草園作りに没頭する自由な日々を謳歌し始める。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

手放したのは、貴方の方です

空月そらら
恋愛
侯爵令嬢アリアナは、第一王子に尽くすも「地味で華がない」と一方的に婚約破棄される。 侮辱と共に隣国の"冷徹公爵"ライオネルへの嫁入りを嘲笑されるが、その公爵本人から才能を見込まれ、本当に縁談が舞い込む。 隣国で、それまで隠してきた類稀なる才能を開花させ、ライオネルからの敬意と不器用な愛を受け、輝き始めるアリアナ。 一方、彼女という宝を手放したことに気づかず、国を傾かせ始めた元婚約者の王子。 彼がその重大な過ちに気づき後悔した時には、もう遅かった。 手放したのは、貴方の方です――アリアナは過去を振り切り、隣国で確かな幸せを掴んでいた。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

処理中です...