婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

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番外編※ルルドラ

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義姉様に渡すと案の定とても喜んだ。

「すごい!お願いしてまだ日がたっていないのにもう手に入れたの!?」

「もとのアイデアがよかったんだ」

「ふふ、公爵が欲しいのはリカルド王子の血筋だもの。亡くなられた前王妃に似た子供がほしいの。だから私に似ていたら、この子がどうなるのか不安だった」

声を震わせて涙に目をにじませた。

「そんなことまで考えてたの?」

「うん。産まれるこの子を苦しませたくなくて」

「……まさか、いるの?」

そして、さするお腹に気づいて目を向けた。

「たぶん。月のものが来ないから」

「つ、つき、」

まさか、僕の。

「あなたは全く関係ないからね。その前から来てないの」

「……そんなこと言ってない。思ってもない」

知らなかった。

あとで調べよう。

「今、目がキラキラしてた。慌てるより喜ぶなんて信じられない。変な期待しないで。絶対違うから。来月、ううん、今月来なかったら確定。ディアナさん達もさすがに分かるし、リカルド王子に報告しなきゃ」

「……そういうことは分かるの?」

何も知らないと思ったのに。

意外だった。

「え?……ああ、そうね。……こういうことだけは躾られたの。貴族の娘なのに字をまともに読めなくて、書けない。ダンスもマナーも知らなくて。……夜の、そういう、方法と妊娠の関することだけ、ふふ。変よね」

「ふぅん。……そう」

自嘲ぎみな笑みに相づちだけ返した。

いつものようにいじめてもよかったけど嫌われたくなかった。

「馬鹿にしていいよ。いつもみたいに」

「しないよ」

今は綺麗な字を書いて本もたくさん読む。

皇太子の僕を相手に見劣りしないダンスもできる。

人の恋心を利用することも平気。

僕を天使みたいと言ってたけど、それは兄上と義姉様のことだといつも思ってた。

でも当たり前の態度で兄は男の手を切り裂いた。

きっと母の処分も同じように決めた。

義姉様は僕が逆らえないのを理解してこんなことを頼んでくる。

清廉潔白を求められる皇太子の僕にこんな汚れ役。

兄上を越えた素晴らしい皇太子が望まれてるのに。

「それ、ちょうだい」

「苦労したんだ。キスくらいしてよ」

「はぁ?」

ただで渡すのは惜しい。

嫌な顔のひとつでも見たくなった。

「いーやーよ!」

「あっ!返してよ!」

ばっと勢いよく手から取り上げて走って逃げる。

まだ足が痛むと思ってたから油断した。

「待って!」

「やーだ!あはは!」

本気で走れば僕が早い。

だけど楽しそうな声とお腹を支える手を見るとね。

「危ないよ!そんなに走らないで!」

「わかった。でも寄らないで。ゾッとするから」

虫を見る目付きで寒そうに体を抱き締めるのを微笑み返す。

気持ち悪がられてるだけで嫌われてはいない。

それにライン義姉様限定でこの顔が好きだった。

他の者なら殺したくなるのに。

「ひどいね。感謝がない」

「してるわよ?気持ちだけ」

「気持ちだけじゃ足らないよ。もっと何かないの?」

「えー?欲張りよ?」

呆れて目を丸く見開く。

そして、何かあるかしらと首を捻った。

「何か思い付いてよ。ふふ」

「考えるから待って」

「はいはい」

悩んで頬に手を添えて頭上を見上げたりと頭を揺らす。

さらさらと一緒に揺れる髪。

むうっと尖らせた唇を見つめた。

待ってるとドタドタと走る音。

「ルルドラ!お前と言うやつは!!この馬鹿者!」

怒り狂った父上。

それを追いかける兄上とライオネル。

その後ろに近衛隊長。

もう報告が終わったのか。

「どうかしました?」

「ど、どうかしましたじゃない!?」

殴りかかる父上をライオネルと近衛隊長が止めてる。

「はあ、……はあ。……また勝手に、やらかしたな」

兄上だけが冷静。

走ったから息があがってる。

僕へ手を差し出すから、書類はあっちとライン義姉様へと指を向けた。

ライン義姉様は書類を抱き締めて嫌だと首を振った。

「私のです」

「見るだけだから貸しなさい」

「……はい」

渋々手渡して、兄上は受け取るとすぐにざっと中身を確認してため息を吐いた。

「ルルドラはこれをどう考える?」

ひらひらと振って見せびらかす。

「ゴミです。破って燃やします。ライン義姉様のために」

子供なんか興味ないけど、ライン義姉様が望むならそうするべきだ。

「極端」

苦笑いを見せる。

「公的な、陛下の許可印が押された書類だ。勝手な処分は処罰の対象。契約者はラインの実家の統主と公爵家統主。これは家同士の契約を泥棒したようなものだ」

「僕が間違いだと責めますか?」

「いや、陛下の次にこの采配を取り消せる立場だ。よろしく頼むよ」

「兄上は正攻法で取り返すつもりだったんでしょう?」

肯定に笑みを浮かべて頭を揺らした。

「……まぁな。揉めない形を望んでいたし。これはお前の立場を守る盾にもなるから、どうするか決めかねていた」

「そうやって誰かのためにと考えてばかりだからライン義姉様は苦労するんです」

「反省するよ。私じゃなくてお前に頼んだのがその証拠だな」

兄上の寂しそうな視線に見つめられてライン義姉様は首をすくめて謝った。

「怒ってない。気がかりだったのだろう?」

僕たちの勝手な行動に怒ることなく泰然とやり過ごす。

兄上の余裕は腹が立つ。

「……回りに気を使って。……悩んで苦労しまくって、若ハゲになってライン義姉様に嫌われればいい」

「ははは!気を付けようがないな、それは!」

腹を抱えて笑ったらスッキリしたのか笑顔で書類をライン義姉様へ返した。

「ライン、私がハゲたらどうする?」

「え?……カツラとか?リカルド王子はつるつるのスキンヘッドになられても似合いそうですけど」

似合うわけない。

こんな美形の顔立ちで。

「髪くらい気にしないのだろう」

「そうですね。……リカルド王子こそ、私の髪がなくなったら。……嫌いになりますよね?男の人ならまだしも、女なのに」

聞いただけで泣きそうになってる。

「構わん。好きな色のカツラを作れ。起こってもいないことに傷ついた顔をするな。お前が悲しむと辛い」

どうしたらいいか分からなくなると弱音を吐いた。

「申し訳ありません」

「謝らなくていい。それに私達はいずれ年を取るんだ。姿形が変わっても想い合えたらそれでいい」

甘い空気に胸焼け起こした。

ライン義姉様の桃色に薄く染まった頬、潤んだ瞳。

幸せそうなライン義姉様をいとおしそうに見つめる兄上も。

「見せつけられて腹が立ちます」

「いて、」

向こうずねを狙って蹴ってやった。

軽くね。

「やめろ」

苦笑いで叱るだけだ。

心配そうに寄り添うライン義姉様の肩を自然に引き寄せてこめかみにキスしてべったり。

羨ましくて睨むけど、二人の世界。

「ムカつく」

「ふふ、その短気を改善しないとラインだって逃げ出すからな?」

「そんなこと、」

ない、と言おうとしたのに。

「逃げます。夜逃げします。意地悪な人は嫌いですもの」

「……ちょっと。……ライン義姉様。やっぱり感謝が足らないんじゃない?特別に優しくしてるのに」

「他に比べたら優しくしてくれてるのわかってるよ。でもいつもトゲトゲしてるから少し離れてないと痛い思いばかりになっちゃう」

「ふふ、ほらなぁ?」

べったりひっついたライン義姉様を自慢げに見せびらかしてる。

羨ましくてジト目で睨んだ。

「こ、この馬鹿者!黙って聞いておればお前達はなんと呑気なことを!」

静かだった父上の怒鳴り声に耳を塞いだ。

ライオネル達は身柄だけじゃなくて父上の口も塞げばいいのに。
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