伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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38、組み手

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「リリィ嬢の侍従は強かったよ。」

湯あみから上がり、ラウンジに行くとキース様が楽しそうに話しかけてきます。
皆さん、先に湯あみが済んでいたようでラウンジで寛いでいます。

「ヨルンガも参加していたのですか?」

見当たらないからお母様に連れられて屋敷に戻ったのかと思ってました。

「ああ。サンマルク伯爵に報告があると言ってたが、屋敷に戻る前に父上を巻き込んで無理やり付き合わせた。先ほどサンマルク伯爵の屋敷へ向かったよ。馬車で対峙した時から、なんか妙に強い感じがして気になってたんだよなぁ。」

「実際に面白いくらい強かった。」

ソファーで寛ぐバン様が満足そうに呟きました。

「馬車の時も、一発やってやろうって思ってさ、あいつなかなか挑発に乗ってこなくて意地になっちまった。まあ、あれはやり過ぎたよ。あの時は本当にごめんな。」

「そうそう、兄貴のせい。」

「おい!お前なぁ!」

「いで!いで!ごめんって兄貴!痛い!リリィ嬢、助けて!」


キース様が頭にゴツッゴツッと何度も拳を落として叱るのに、バン様は楽しそうに笑って、お二人のやり取りに私もつられて笑いました。

「あいつ、剣は下手くそな。組み合いはマシだけど。何度組み合っても妙な体術で転ばされるんだ。父上が面白いくらいポンポン投げ飛ばされてたぞ。」

「ああ?バカか、剣も悪くなかった。バン、お前は負けたからって負け惜しみよくないぞ。」

「そ、そんなんじゃねーし。」

「そうだな、バン、キース。相手の強さを認めることは大事だ。なぁ?」

「ええ、あなた。」

笑って聞いていたランディック辺境伯がぴったり寄り添って座るランディック夫人に優しく話しかけます。

お互いうっとりと見つめ合って、二人の仲睦まじい様子に顔が熱くなります。

これが噂のラブラブですのね、空気が甘いってこういうことですのねと、熱いほっぺたを両手で覆ってディーナに教わったことを思い出して呟きました。
  
側で涼しげに控えるディーナもきっと頭の中で絶叫してるはずです。
 
夕方、ヨルンガが私のもとに明日はお父様が迎えに来ると報告に参りました。
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