伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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48、演奏会

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演奏会が始まり、男性は正装の方がおられましたが、時には奇をてらった異国の衣装や光輝く派手な衣装を着ている方々がいらっしゃいました。

難しい曲ばかりではなく、気持ちが陽気になるような明るい曲や新しい曲などとても多彩でした。

素敵な男性ばかりで会場は失神されるご令嬢があまりに多くてキース様とバン様が運んでいらっしゃるのを遠目から見つけました。

お二人とも働き者です。

「私も失神してみたいわ。」

「なぜ?」

「あんな風に儚げに倒れてみたいと思いましたの。私は元気なんですもの。」

「クスクス、なるほど。」

恋愛小説で淑女はよく貧血を起こします。
実際問題、それだと危なくて馬に乗れません。
サラとディーナはコルセットの絞めすぎと言ってました。
夢がありません。

それと、一人行動に慣れた私がエスコートを忘れるミスを起こしたことが恥ずかしかったです。

第四王子が、僕を忘れてるよと微笑まれて私の手に優しく触れてエスコートされるので、顔が熱くなりました。



恐れ多いことに私は会場のロイヤルボックス席に招待されていたのです。
他の王子様たちもそれぞれ女性を伴って、第一王子のエスコートに他国の皇女様、第二王子には我が国の公爵令嬢、第三王子はクリス様を。
この中でもっとも歳が若く身分の低い私を皆様は小さい子供を構うように気を遣っておられました。


私がクリス様だけ愛称で呼び掛けますので、恐れ多いことに第四王子もお名前を呼ぶことを私に許されます。
ロルフ様のご家族とご令嬢が私を見てクスクス笑ってらっしゃるし、皆様の前で、緊張してなかなか呼べずにいたら、嫌だったかな?と心配されました。

緊張しているからと伝えると、また優しげな眼差しで見つめるので、なんだかすごくくすぐったくて扇で顔を隠しました。

隠れないでと囁かれても恥ずかしくて、出来ません。
見逃してほしいです。
虐めないで下さいとお願いするだけで精一杯で、そんな私を皆様はクスクス笑い、自分達も名前で呼ぶようにとご命令されました。

そうしている間も、飲み物やら何やら細々と気遣って下さって、私は扇の隙間から少し覗いてはい、いいえと小さく答えるばかりで、気の利いた受け答えが出来ないのにロルフ様は私の側でせっせとお世話をされるのです。


演奏会では休憩が挟まれて、気分転換の為に時折ホールで過ごします。
途中、隣国の第二王子に絡まれるハプニングがございました。

また私が気に入らないと仰るのだと思ったら、今回は少し違って、なぜ呼んだのに来ないのだとご立腹でした。


どうやら今日のエスコートのご指名を第二王子が打診していたそうですが、第二王子とお会いする前からロルフ様とのエスコートが決まっていたので私に話が来ることもなく立ち消えになったとロルフ様が説明されました。

第二王子の隣には退場された公爵令嬢がいらっしゃって、お二人とも美しく黄金色の髪がとても輝いていました。

輝くようなお二人に私なんかでは恐れ多いと思いましたし、ロルフ様がお二人がお似合いだと誉めておられました。

ロルフ様が第二王子に何かを囁かれ、男同士何かお話しされたあと、不機嫌でしたが、すんなりとその場を離れました。

何のお話をしたのか尋ねると、第四王子は大したことじゃないと微笑まれました。

嫌っていたのに、急にエスコートに誘うなど不思議で、ロルフ様が首をかしげて考えています。


あの時の歩みよりは失敗でしたし、私もどうしてでしょうかねぇ、と答えました。
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