伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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49、妖精※ロルフ

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リリィを初めて見たのはデビュタント当日。

謁見の間だった。

父である陛下の側で年相応にデカイ兄たちに囲まれ、成長期前の俺は余計小さく見えたと思う。

白いドレスの女性たちが次々挨拶をする。

どの女性も王家のお茶会で面識があり、緊張した様子はなかった。

俺より先に成長期を過ぎた自分より大きな女性たちに、本当に同い年なのかと憂鬱になった。

いつも彼女たちは兄たちに憧れて頬を染めて俺に興味なかった。
今もそれぞれが挨拶の合間に好みの王子に秋波を送って俺には目もくれない。

立派で優しい兄達はそれぞれ容姿が整っていて、弟の俺は自慢に思っていた。

嫉妬するどころか、彼女たちが憧れるのも当然だと納得する。

だが、彼女らはとてもあからさまで、普段からバカにする態度を見せるので苦手だった。

堂々とした女性達の中に小柄な女の子がいた。

誰も見たことのない女の子は一際注目を浴びた。

確実に俺より小さい女の子。

単純に背が低いのではなく、顔も首も手も、何もかも小さく作られたビスクドールみたいだった。

落ち着いた光を放つシルバーの髪が目立っていた。

顔を上げたら薄いアイスブルーの瞳が輝いていた。

見た目は女の子が好む可愛らしい人形のようだった。

十分に教育された所作を見せてはいるが、瞳からは緊張と好奇心、喜びが垣間見え、感情の露見が彼女を余計幼くさせた。


彼女の姿に息を飲んだのは俺だけではなく、彼女を見ていた多くの者が見とれていた。

そういった空気を気に入らないといった態度のご令嬢にも気づいた。

父は本当に今年デビューなのかと側近に確認し、母に至っては小さい、可愛いとぶつぶつ呟いて手の中の扇を忙しなく弄っていた。
兄たちは呆気に取られていたが、気を持ち直して穏やかに微笑んだ。

末っ子で侮られやすい地位の俺は周りの様子を眺め、あの子が兄たちの誰に見とれるかじっと観察した。

俺ではない、俺のはずないと頭でごまかすのに、心はこっちを見ろと望んで苦しかった。

あの子は誰も見つめなかった。

邪気のない瞳が父と母を見つめ、俺たちにも敬愛を表した。

拍子抜けして彼女の退場を見つめいたら、兄たちがあれはなんだ?妖精か?と呟いていた。

そうかも、と母が呟き、父は大袈裟だと言うが満更でもない様子で口許が緩んでいる。

兄たちは社交場で散り散りにサンマルク伯爵夫妻とランディック夫妻に彼女は何者だと念入りに聞き出していた。

俺はある程度の社交をこなし、遠くから彼女の様子と兄たちの動向をつぶさに観察した。

俺は彼女の交遊関係が奇妙に感じた。

初めての社交場のはずなのに家族とは過ごさず、ランディック家の長男を伴い、年上のご令嬢たちと交流していた。

時折、年配の貴族と交流し、その中に敏腕と称された前外務大臣のウォルリック卿がいたことに驚いた。

現役を引退して社交界から離れているが、政務をこなす兄たちは父の薦めで時折彼を頼っている。

兄たちはウォルリック卿の機嫌を損ねるな、視線だけで人を殺せるのだと。

俺も何度かお会いして厳しい人物だと把握している。

彼女とウォルリック卿は端から見ると祖父と孫のような穏やかな関係のようだった。

離れるウォルリック卿に自ら声をかけた。

「お久しぶりです、ウォルリック卿。」

「ロルフ様、ご無沙汰しております。」

相変わらず眼光鋭く厳しい雰囲気に先ほどの年寄り染みた空気はどうしたと言いたくなった。

当たり障りない会話を広げようとしたが、ウォルリック卿は器用に片眉をピクリと上げて、ご用件は?と聞き返す。

剣呑な視線に顔が引きつりながら、リリィ嬢のことを尋ねた。

話す程のことはない、聞いてどうするのかとあしらわれ、必死で乞う。
勝ち誇った顔のウォルリック卿に初めてこのくそじじぃと心の中で毒づいた。

夏になれば墓参りに毎年訪れて幼い彼女がウォルリック卿の案内をしていたそうだ。

子供に昔話などつまらないだろうに、ウォルリック卿の昔話を喜び、自分で育てた大きな馬に乗って、孤児院の活動に尽力し、屋敷の使用人や領民に広く慕われていると。

孫ではないが、ウォルリック卿の孫自慢が落ち着くと逆に聞いてどうする?どういうつもりだ、と厳しく問い詰められ、俺の立場でいたずらに近寄るなと釘を刺された。

くそじじぃめ。
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