伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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50、妄想※第二王子

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黄金の王子。

国ではそう呼ばれていた。

正妃の第2子でありながら、くすんだ色を持つ第1子の兄より俺の髪と瞳は王座に相応しいと下々から敬われていた。

王家の色をもっとも濃い私に、皆がひれ伏し何もかもすべて私の物であった。

あとは私に相応しい婚約者を選ぶべく毎日の社交場で女性を吟味している毎日だったが、どの女もパッとせず私にかしずくだけで、この国に私に似合った女がいると思えなくなった。

側妃腹の第三王子が外遊先から面白い話を持って帰ってきた。

結婚適齢期の子息令嬢が大がかりな演奏会を催すと。

他国の人間も多数招かれ、若い子息令嬢と交流会を目的とした大規模なお見合いパーティーだ。

自国に相応しい女がいないなら外に探しに行かねばと参加を決めた。

第三王子と多数の外交官が、他国は色彩豊かで我が国とは価値観が違うと再三言っていたが、私の容姿が素晴らしいことは変わらない。

多くの者が私にひれ伏すはずだ。

実際、あちらの迎賓館のパーティーでは沢山の女達に囲まれた。

ただ驚いたのは私の目に触れるのなどあり得ないような色が混ざっていたことだ。

汚らわしいと遠ざけ、やっと、私程ではないが美しい金の髪の女を側に置いてやった。

髪の色が赤や黒などあり得ん。

貴い私に触れさせるなど不敬だ。

染めろと言えばお目汚し申し訳ありませんと女達は能面のようになり近づかなかった。

そうやって女達を払いのけ、ようやく落ち着いたのに取り巻きの女は事あるごとに灰色の女を呼びつけ用事を言い渡す。

私がもっとも嫌う色だ。

灰色の貧相な娘は取り巻きの女がどんなにきつく当たろうが、意に介さず飄々と仕事をこなし、見ているこっちの方がイライラした。

「お前は醜い上にバカだ。」

「あら、そうですか?」

きょとんとアイスブルーの目を丸くし、また飄々とした態度で仕事に戻った。

娘の灰色の髪も、私と同じ目の色も気に食わなかった。

私と同じ色を持ってるのに何か違う物を見ている。

醜い灰色の髪と王家の瞳を持つ娘は私にかしずかないことが許せなかった。

いつの間にか金髪の女が来なくなり、国から連れてきた外交官が私の側にいるようになった。

あの娘が馬に乗る姿を見て驚いた。

小柄な体で近年流行りだした淑女の乗り方で立派な体格の青毛を自由自在に操り、明るい日差しを受けて灰色の髪がシルバーに輝いていた。

何度も追いかけて側にいるように言ったが、ご令嬢の付き添いですので、とそのまま離れていく。

醜いのを我慢してやろうと言うのに。

乗馬姿が見たくて苦手な馬に何度も乗って追いかけた。

だが、国から連れてきた侍従や護衛どもが邪魔をして上手くいかない。

演奏会前日になんとか供を撒いて娘を見つけた。

私には向けない眼差しをクリスティーン嬢や護衛に向けていた。

なぜ貴い王家の瞳を私以外に向けるのか。

クリスティーン嬢と娘の間に割って入って娘を叱ろうとするのにクリスティーン嬢が邪魔をする。
腹立だしかったが、娘に止められて落ち着けた。

「髪を染めようと思いますの。何色がよろしいでしょうか?」

あまりに唐突な話に驚いて聞き返したら、私がいる間、私の為に、私の好みに染めると言うのだ。

染髪が長期間、勧められないのは知っている。
だから、気に入らない女に染めろと強いていたのは追っ払う為で本気じゃなかった。

娘の言葉に私と同じ金に染めろと頭の中はそればかり回り、この国の言葉が出なかった。

母国語で何度も呟く。

『俺の為に、俺の好みに。』

金に染まった髪とアイスブルーの瞳の娘が私の隣に立つ。

美しく成長した娘と私の結婚式や戴冠式など、引くほど飛躍した想像が頭を廻る。

この時やっと、この貧相な娘をとことん気に入っていると自覚し、あまりの事に体が震えた。

急に娘が謝り頭を下げ、チラッと下から伺う不安げな瞳に息が出来なくなった。

染めろと言えば、歯止めが効かない気がして何もするなと掠れた声で答えて逃げた。

侍従たちにごねて演奏会のエスコートを打診したが、もう予定があると断られ、当日は第四王子と仲良く並んでいた。

しかも今まであんなにのらりくらりしてたのに、エスコートされてもじもじと恥ずかしそうに困ってる姿が許せなくて突っかかった。

エスコートしてやろうと思ったのに拒否したと言うと不思議そうに目を丸めて首をかしげていた。
そんな目で見られたいんじゃない。

いつも丸くなるだけの瞳にもっと慕われたかった。


分からせたくて説明しようとするのにチビの第四王子に肩を掴まれ母国語で、これ以上は外交問題になりますと囁かれた。

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