伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

文字の大きさ
64 / 98

64、怒り

しおりを挟む
ロルフ様は私に駆け寄り気遣いますが、第二王子はサフィア様の腕を掴み地面に引き倒してしまいました。

「第二王子!サフィア様に何をするのですか!?」

思わずサフィア様の元へ駆け寄り庇いました。

周囲が驚いて、サフィア様も目を丸くして私の顔を見つめます。

「な?なぜだ!お前に乱暴したから、俺は!」

「第二王子まで乱暴なことは止めてください。」

「この俺がお前のためにしてやったのに。どういうつもりだ!」

私を庇って前に立とうとするロルフ様を押し退け、第二王子と対峙しました。

「何があろうと無抵抗のご令嬢がこんな乱暴に地に伏されていいものですか。乱暴をされたあとは立っていただけでした。」


憎々しげに私を睨み付け、ぶつぶつ呟いていますがよく聞こえません。

後ろを見るとロルフ様が手を引いてソファーに座らせていました。

「サフィア様、お怪我はございませんか?」


サフィア様に膝まずいて尋ねました。
上から話しかけるのは不敬です。

「あんた、ひっく!あんたなんか、あんたなんかぁ!」

まだ興奮していて、サフィア様の振り上げる手をロルフ様が止めます。

「みんな、バカにして!」

「サフィア嬢、俺達はそんなこと思ってませんよ。」

「うぅっ、イヤよ!離してよお!王族だとしても三男以下のあんたなんかに、うわぁん!」

「大声は止しなさい。急いで人払いをさせましたが騒げば会場に聞こえてしまう。」


周りを目をやり、控えていた給仕が少なくなっているので対応に奔放しているのだと思いました。

泣きじゃくるサフィア嬢にロルフ様が宥め、それを見た第二王子がそれ見たことかとサフィア様を貶します。

「リリィ、こんな女庇ってどうする気だ?高位貴族へのご機嫌取りか?ははは!」

「第二王子、お止めください。」
 
「名前を呼ぶ許可をやってないのに図々しく王族の私について回り、この私が気に入ったお前を害したんだ。」

名前を呼ぶ栄誉を与えたのはお前だと私の肩を掴み、膝まずく私を見上げさせます。

それを聞いたサフィア様がまた激しくむせび泣き、ロルフ様はサフィア様の椅子から倒れる体を抱き止め、第二王子を睨んでいます。

「サフィア様は我が国の筆頭公爵家ご令嬢であり、王家の血を引く尊い存在です。我が国の尊いご令嬢のお心を乱した第二王子のお名前を呼ぶなど、死んでも致しません。」


私は掴まれていることが不快で、逃れるように立ち上がり、すがるように手を伸ばす第二王子を一瞥し距離をとりました。

中庭の奥からはガチャガチャと甲冑を身に着けた王宮の騎士数名が駆けつけ、ワインに赤く染まった私と対峙されて睨みつける第二王子、号泣しながら倒れ伏すサフィア様と支えるロルフ様。

この異様な光景に戸惑っています。


「ロルフ様、サフィア様。」

ロルフ様に視線を合わせ呼び掛けます。

泣き疲れ、憔悴したサフィア様はのろのろと私を見上げてきました。

「ここは私達だけですし、サフィア様はご気分が優れず倒れた、その騒ぎで私はワインのデキャンタを倒してドレスを汚してしまった。それだけということに出来ませんか?」

一様に皆様は驚愕の表情を浮かべ、給仕はいち早くに意を決したように頷いてくれます。

「…サフィア嬢を庇いたいというなら分かった。しかし、陛下とザボン公爵へは伝える。その後どのように扱われるか約束出来ない。」

「陛下とザボン公爵様ならきっとサフィア様をお守りされると思います。サフィア様、どうかご了承くださいませ。」  

再度、サフィア様の目線に合うように膝まずき、サフィア様は溢れそうな程大きく目を見開き、掠れる声でどうしてと呟きます。

「サフィア様のお心を考えればお辛かったはずです。これ以上苦しむことのないように願っております。」

「ああっ、あなたは。」

顔を手で覆いロルフ様の腕の中で、泣き声と共にごめんなさいと何度も聞こえてきました。

「好きだったから。フィンレー様を好きなだけだったの。」

サフィア様のお話に何度も頷き、これ以上人払いをさせることは難しいだろうとロルフ様に促され立ち上がります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。

芹澤©️
恋愛
王太子の元へ側室として嫁いだ伯爵令嬢は、初夜の晩に宣言した。 「申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。」

逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います

みゅー
恋愛
アドリエンヌは魔法が使えず、それを知ったシャウラに魔法学園の卒業式の日に断罪されることになる。しかも、シャウラに嫌がらせをされたと濡れ衣を着せられてしまう。 当然王太子殿下との婚約は破棄となったが気づくと時間を遡り、絶大な力を手に入れていた。 今度こそ人生を楽しむため、自分にまるで興味を持っていない王太子殿下との婚約を穏便に解消し、自由に幸せに生きると決めたアドリエンヌ。 それなのに国の秘密に関わることになり、王太子殿下には監視という名目で付きまとわれるようになる。 だが、そんな日常の中でアドリエンヌは信頼できる仲間たちと国を救うことになる。 そして、その中で王太子殿下との信頼関係を気づいて行き……

処理中です...