伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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80、添い寝

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丸まったままベッドに降ろされました。

耳を塞いだ手を誰かにほどかれますが、夢中で押さえたせいで髪の毛をぶちぶち千切ってしまったようです。

指に沢山髪の毛の絡まっていました。

お腹が気持ち悪くて横になれず、土下座の体勢で体を丸めて突っ伏します。

今日は恐れ多くも陛下と謁見し、高位の公爵様にもお会いして疲れたのだと己に言い聞かせます。

第二王子の、気持ち悪い執着を無視して必死で他のことに思いを巡らせます。

程なくして、いつもの厳しいガレヌス医師が走って来てくれました。

診察するから仰向けになれと言われても、気持ち悪くて動けません。

出来ないとわんわん泣くと、痛み止を飲んだあとに診察をすると言われました。

薬を飲もうと起き上がれば、げえげえ吐いてしまい、サラ達が慌てています。

王妃からせっかく頂いたドレスを汚してしまって悲しかったです。

横になれず、椅子に乗ったヨルンガの体に抱えられて診察を受け、吐き気止めだと、つんとする乾燥した葉っぱを口に咥えさせられ、横に寝ると気分が悪いので、一晩中ヨルンガを背もたれにして休みました。

ヨルンガに休んでいいと言いたいのに言葉が出なくて、時々、濡れた布を唇に当てて口の中を潤してくれたことがありがたく静かに看病を受けました。

明日は陛下のペットを見せてもらうのです。

早く治ってと一生懸命心の中で願いました。

次の日になっても、全快とは言えずベッドに横たわります。

ポムとシピがベッド脇で丸くなってこちらを心配そうに見つめていました。

早朝、再度ガレヌス医師に、精神的な疲労だと診断を受けて、いつも厳しいのに優しくおでこを撫でるのです。

おかしいと笑うと、子供には優しいんですと返されました。

私はもうレディなのに。

でも、こんなに手がかかるなら赤子と一緒ね、と納得します。

今日、陛下のペットを見たいと言うと、延期ですと呆れられ、ちゃんと陛下にお願いしてあげますと約束をしてくれました。

「お願い。私、とっても楽しみにしてたから。」

「楽しみになさい。そうすれば早く治ります。」

いい子いい子とおでこを撫でて、また吐き気止めのつんとする葉っぱを突っ込んで部屋を出ていきました。

ガレヌス医師をベッドから見送り、いつも私が痛がると喜ぶのに優しく何度も撫でていたのが、やっぱり可笑しくてクスクス笑いました。

診察後は、サラが朝食を運んでくれてました。

ベッドにテーブルを乗せてセッティングしています。

「こちらのシェフが色々と種類を揃えてくださいました。」

普通の朝食はこんなに種類を出さないのに、いくつものスープと果物が少しずつ取り分けてありました。

飲み物も、絞ったリンゴやオレンジ、牛乳と並んでいます。

「こんなに沢山の種類をどうして?」

「昨日から、全然食べてらっしゃらないので、シェフが心配して気遣って下さったんです。残して構わないから試してみて欲しいそうです。」

「心配かけてしまったのね。」

行儀が良くないのですが、それぞれつつくように少しずつ食べます。

全体の量は少なかったので思ったよりお皿を空に出来ました。

「もうよろしいですか?」

「ええ、もう。…美味しかったから、思ったより食べれた。」

テーブルの片付けを頼み、ノロノロとベッドに伏して休みました。

うとうとするのですが、なかなか本格的な眠気が来ずぼんやりと過ごします。

寝返りも辛かったので本当にじっと大人しくしました。

時折、毎日、無為に王妃の宮殿で過ごすことが申し訳なく恥ずかしくなり体を動かしたくなりましたが、体の動かし方を忘れてしまったような感じで首を起き上がらせるのもキツく感じました。

午後、もう一度ガレヌス医師が来て、眠れない、体が重くて動けないと相談すると、疲労の症状だと説明を受けました。

今は寝てなさいと言われて、いつまでも寝てばかりでこちらにお世話になるのが申し訳ないと応えると、このまま宮殿に留まらないと診察できないとムッとされました。

「王妃から託された患者を最後まで診ますよ。安心してこちらのお世話になりなさい。」

今度は吐き気止めの葉っぱを突っ込まれずに済みました。

夜は睡眠薬を飲んで休むのですが、それでも目が冴えてじっとベッドの天蓋を眺めて過ごしました。 

気持ちがざわついて目を閉じるのに、目蓋の下で目がキョロキョロ世話しなく動き、疲れて天蓋の一点を見つめるしかありませんでした。

夜中、戸が開く音が聞こえてシピがわふっと吠えました。

月明かりで見えたのは、髪を下ろし寝間着を召した王妃でした。

「リリィ、まだ眠れないのね。」

顔を覗き込まれ、こく、ときごちなく頷きます。

「そう思って添い寝に来たのよ。」

シピと挟んで、王妃がもぞもぞと私の隣に寝転がります。

お薬が効いているのか寝不足のせいか、頭が動かず。

恐れ多くも王妃が私と添い寝すると仰っているのに、すんなりと受け入れていました。

王妃が私をきゅっとふかふかの胸に抱き込むので、布が目元に当たり自然と目を瞑ります。

一緒に優しい香りが肺に広がって深く呼吸しました。

重たくて動かなかったはずなのに、手が王妃の体を掴んですりすりと顔を寄せしがみつきます。

クンクンと胸一杯に香りを嗅ぐと、なぜか気持ちが穏やかになります。

「ふふ、リリィ。くすぐったいわ。ウフフ。昔、息子らにこうするとよく寝ていたの。陛下は今もぐっすり眠るのよ。だからリリィもおやすみなさい。クスクス。」

とても優しい声が聞こえて、こくこくと頷いて、王妃に引っ付いて眠りました。

起きると、日が高くて隣には誰もいません。

シピはどこか出掛けたようで、ポムは窓辺で寝そべっています。

シーツや枕に鼻を寄せてスンスン匂いを嗅ぐと王妃の香りがします。

「おはようございます。起きられましたね。」

「…おはよう」

「昨日はよくお休みでした。ようございました。」

サラとディーナの安心する声が聞こえて朝の支度をしてくれてます。

ヨルンガがベッドサイドで洗顔の支度をし、タオルを絞っています。

「お顔をどうぞ。気分はいかがですか?」

「…ヨルンガ。あのね、すごいの。…胸が、大きくてふかふか。…すごい気持ちよかった。」

夢見心地でそう言うと、少し間を置いて、さようですかと応えがありました。

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