82 / 98
82、猫
しおりを挟む
「リリィ、迎えに来たよ。」
「ロルフ様。わざわざ申し訳ありません。」
午後になると、部屋にロルフ様が迎えに来られて宮殿の奥へ案内されました。
王妃の宮殿と繋がっていて、細いと通路に近衛が立っています。
その入り口にはヘラクレス様が待っていました。
「すまないが、ここから従者の付き添いは出来ない。代わりに運ぶからおいで。」
ヘラクレス様がニコニコと手を広げてます。
「侍従はダメなのですか…?知りなかった…」
「決まりでね。安全の為に身分のある許された者しかダメなんだ。」
しょんぼりする私をヘラクレス様が受け取ってニコニコされてます。
恐れ多くも王子に抱えられ、手を離れるヨルンガを見つめました。
「ヨルンガ、い、行ってきます。」
「いってらっしゃいませ。」
「そう縮こまるな。」
「は、い。」
「晩餐もこちらで食べていけと母が言っていた。侍従はもう部屋に戻っておくといい。帰りはこちらから送り届けよう。」
「…承知いたしました。」
ヘラクレス様は広い歩幅でずんずん歩くので、指先から膝までがっちり固定された足がいつもより重くて、歩を進める度にぷらぷら揺れて少し体に響きました。
ヨルンガはいつも静かに歩くのでそんなことはなかったと思いました。
「兄上、リリィの足が揺れて痛そうですよ。もう少しゆっくり」
「そうなのか?すまん。大丈夫か?」
「あ、いいえ。あの、お気遣いありがとうございます。」
プライベートには、あまり人がいないそうで、メイドや執事を見掛けません。
調度品等も少なくあっさりとした内装です。
通路を抜けて中庭に辿り着くと、草花が繁り、蔦薔薇があちらこちらに絡んで大きなアーチを作っています。
豪華なアーチを抜けて噴水が見えました。
蔦薔薇の屋根の下に大きな敷物が敷かれ、陛下が王妃の膝を枕にゆったりと寝そべっていました。
近くではアダム様はネロと、ナヴィーン様は白い大きな猫と草むらに転がって戯れています。
「よく来た。こちらに座れ。」
陛下と王妃の隣に招かれヘラクレス様が私を降ろしてくださいました。
「陛下、お招き感謝いたします。」
ロルフ様がクッションを整えて下さって、陛下が起き上がって、これも使えと、側のクッションをロルフ様に投げ渡してました。
まわりに側仕えはいないようで、自分達でお茶を注いで、お皿のお菓子を摘まんで自由に過ごされています。
「ダーシャ、オリガ。おいで。リリィ嬢だ。仲良くしなさい。」
呼ばれて走ってきた大きな2匹に陛下が囲まれ、グリグリと頭を混ぜています。
二頭とも白黒の猫と思ったら、一頭は少し小さめの真っ黒い猫です。
小さめと言っても、それでも私くらいの大きさ。
日に当たるとうっすらと丸い模様が見えます。
「ぐるるる。」
「ぐう。」
「初めまして、よろしく。ダーシャ、オリガ。」
次に私が2匹に囲まれ、匂いを嗅がれます。
ただ鼻を寄せられるだけなのですが、力が強くて転がされてしまいます。
間にネロが入って庇われ、大きな黒と白の縞柄のダーシャと転がってじゃれ始めました。
少し小さめのオリガはまだ私の上でスンスンと鼻を押し付けて嗅いでいます。
お腹や首に顔を埋めて強く嗅がれるので、体を捩ると踏まれて押さえられてしまいます。
起き上がろうにも動けず、ネロとダーシャも一緒にのし掛かってきます。
見かねた陛下が3頭を制し、下敷きの私を引き上げて、王妃と陛下の間に座らせました。
「ほほ、ほほほ。リリィ。髪が、まあ。」
王妃が髪を整え直してくださって、抱き締められました。
また王妃のいい香りにうっとりとしてぴったり引っ付きました。
「むっ。こら、余の王妃に甘えるな。もう貸さんぞ。」
「あ、申し訳ありません。」
「まあ、陛下ったら。怒らないで。私が抱いて離したくないのよ。」
「アダム、あっちで構ってやれ。王妃が余を構わん。」
「もう、仕方ない人ね。アダム、リリィをお願いね。」
「良いですよ。父上、母上。」
「リリィ、あっちで遊ぶぞ。こうなると二人にしてあげなきゃいけない。」
アダム様に抱えられその場を離れると、蔦薔薇の隙間から陛下が王妃を膝にのせてぎゅうぎゅう抱き締めていらっしゃるのが見えて、頬が熱くなりました。
やっぱり王妃とお休みになれなくて寂しかったのだと思います。
皆様と一緒に隣のアーチに囲まれた広場に移動しました。
そちらにも大きな木陰があり、敷物が敷かれてました。
「びっくりしたろう、あの二人、本当に仲良くてね。特に父上がべったりなんだよ。くくっ、ふふ。」
アダム様が私を膝に抱えたまま敷物に座ります。
「小さい頃なんか、俺達が母上に甘えてもあんななってたんだぜ。すぐ交代とか言って除け者にする。」
「そうそう。いつも俺達をアダム兄さんに押し付けて。今思うと可哀想だった。」
「ふふ。二人の仲のおかげで、可愛い弟が三人もいるんだ。構わないよ。」
「そりゃぁ、弟は可愛いけど。末のロルフなんか俺達が育てたぞ。なあ?」
「ええ、父上といるより兄上達にお世話されてましたね。」
「くふふ。ナヴィーンもヘラクレスも、妹か弟がほしいとねだったんだ。願いが叶って良かったじゃないか。俺も欲しがったからな。ふふ。ロルフも欲しがってたな。」
「残念ながら俺で最後でしたね。以前、父上が謝ってくれました。頑張ったが、五人目は来ないと。」
「ぶふ。そうか、初耳だな。」
お喋りしながらも、ロルフ様とヘラクレス様、ナヴィーン様がそれぞれお茶とお菓子を運んで、手早く広げていきます。
絶対、私より手際がいいです。
「ぐるる。」
「お、オリガ、ダーシャ。お前らも追い出されたか。来い、遊んでやる。」
「俺も。」
「おう。」
ナヴィーン様とヘラクレス様が走って行かれました。
ネロが隣に寝転んだので、アダム様が私をネロを枕にするように乗せました。
「私は少し寝る。眠い。」
「適当に起こしますね。おやすみなさい。」
「ふぁぁ。ロルフ、頼む。」
クッションを枕にごろんと横たわりました。
本当に自由です。
「いつもこんなだから。アダム兄さんは昼寝して、ナヴィーン兄さんとヘラクレス兄さんはいつも走り回るんだ。」
「ロルフ様はいつも何を?」
「バラバラかな。昼寝に付き合ったり遊びに付き合ったり。」
「今日は遊ばなくてよろしいのですか?」
「うん。今日はリリィと付き合う。いいかな?」
「でも、私、横になるしか出来ませんよ。」
「いいね。一緒に横になろう。」
3人でごろ寝して、アダム様の寝息を横に私とロルフ様は起こさないように小声でお喋りを続けました。
時折、ナヴィーン様とヘラクレス様が汗だくで戻ってきて、果実水やお茶を飲み干してまた走っていきます。
「疲れた。寝る。」
ヘロヘロになったお二人が倒れるように寝転び、ごうごういびきをかいて眠ったので、ロルフ様と二人で笑ってしまいました。
ダーシャとオリガも疲れたようでネロの側で固まって丸まります。
「ロルフ様。わざわざ申し訳ありません。」
午後になると、部屋にロルフ様が迎えに来られて宮殿の奥へ案内されました。
王妃の宮殿と繋がっていて、細いと通路に近衛が立っています。
その入り口にはヘラクレス様が待っていました。
「すまないが、ここから従者の付き添いは出来ない。代わりに運ぶからおいで。」
ヘラクレス様がニコニコと手を広げてます。
「侍従はダメなのですか…?知りなかった…」
「決まりでね。安全の為に身分のある許された者しかダメなんだ。」
しょんぼりする私をヘラクレス様が受け取ってニコニコされてます。
恐れ多くも王子に抱えられ、手を離れるヨルンガを見つめました。
「ヨルンガ、い、行ってきます。」
「いってらっしゃいませ。」
「そう縮こまるな。」
「は、い。」
「晩餐もこちらで食べていけと母が言っていた。侍従はもう部屋に戻っておくといい。帰りはこちらから送り届けよう。」
「…承知いたしました。」
ヘラクレス様は広い歩幅でずんずん歩くので、指先から膝までがっちり固定された足がいつもより重くて、歩を進める度にぷらぷら揺れて少し体に響きました。
ヨルンガはいつも静かに歩くのでそんなことはなかったと思いました。
「兄上、リリィの足が揺れて痛そうですよ。もう少しゆっくり」
「そうなのか?すまん。大丈夫か?」
「あ、いいえ。あの、お気遣いありがとうございます。」
プライベートには、あまり人がいないそうで、メイドや執事を見掛けません。
調度品等も少なくあっさりとした内装です。
通路を抜けて中庭に辿り着くと、草花が繁り、蔦薔薇があちらこちらに絡んで大きなアーチを作っています。
豪華なアーチを抜けて噴水が見えました。
蔦薔薇の屋根の下に大きな敷物が敷かれ、陛下が王妃の膝を枕にゆったりと寝そべっていました。
近くではアダム様はネロと、ナヴィーン様は白い大きな猫と草むらに転がって戯れています。
「よく来た。こちらに座れ。」
陛下と王妃の隣に招かれヘラクレス様が私を降ろしてくださいました。
「陛下、お招き感謝いたします。」
ロルフ様がクッションを整えて下さって、陛下が起き上がって、これも使えと、側のクッションをロルフ様に投げ渡してました。
まわりに側仕えはいないようで、自分達でお茶を注いで、お皿のお菓子を摘まんで自由に過ごされています。
「ダーシャ、オリガ。おいで。リリィ嬢だ。仲良くしなさい。」
呼ばれて走ってきた大きな2匹に陛下が囲まれ、グリグリと頭を混ぜています。
二頭とも白黒の猫と思ったら、一頭は少し小さめの真っ黒い猫です。
小さめと言っても、それでも私くらいの大きさ。
日に当たるとうっすらと丸い模様が見えます。
「ぐるるる。」
「ぐう。」
「初めまして、よろしく。ダーシャ、オリガ。」
次に私が2匹に囲まれ、匂いを嗅がれます。
ただ鼻を寄せられるだけなのですが、力が強くて転がされてしまいます。
間にネロが入って庇われ、大きな黒と白の縞柄のダーシャと転がってじゃれ始めました。
少し小さめのオリガはまだ私の上でスンスンと鼻を押し付けて嗅いでいます。
お腹や首に顔を埋めて強く嗅がれるので、体を捩ると踏まれて押さえられてしまいます。
起き上がろうにも動けず、ネロとダーシャも一緒にのし掛かってきます。
見かねた陛下が3頭を制し、下敷きの私を引き上げて、王妃と陛下の間に座らせました。
「ほほ、ほほほ。リリィ。髪が、まあ。」
王妃が髪を整え直してくださって、抱き締められました。
また王妃のいい香りにうっとりとしてぴったり引っ付きました。
「むっ。こら、余の王妃に甘えるな。もう貸さんぞ。」
「あ、申し訳ありません。」
「まあ、陛下ったら。怒らないで。私が抱いて離したくないのよ。」
「アダム、あっちで構ってやれ。王妃が余を構わん。」
「もう、仕方ない人ね。アダム、リリィをお願いね。」
「良いですよ。父上、母上。」
「リリィ、あっちで遊ぶぞ。こうなると二人にしてあげなきゃいけない。」
アダム様に抱えられその場を離れると、蔦薔薇の隙間から陛下が王妃を膝にのせてぎゅうぎゅう抱き締めていらっしゃるのが見えて、頬が熱くなりました。
やっぱり王妃とお休みになれなくて寂しかったのだと思います。
皆様と一緒に隣のアーチに囲まれた広場に移動しました。
そちらにも大きな木陰があり、敷物が敷かれてました。
「びっくりしたろう、あの二人、本当に仲良くてね。特に父上がべったりなんだよ。くくっ、ふふ。」
アダム様が私を膝に抱えたまま敷物に座ります。
「小さい頃なんか、俺達が母上に甘えてもあんななってたんだぜ。すぐ交代とか言って除け者にする。」
「そうそう。いつも俺達をアダム兄さんに押し付けて。今思うと可哀想だった。」
「ふふ。二人の仲のおかげで、可愛い弟が三人もいるんだ。構わないよ。」
「そりゃぁ、弟は可愛いけど。末のロルフなんか俺達が育てたぞ。なあ?」
「ええ、父上といるより兄上達にお世話されてましたね。」
「くふふ。ナヴィーンもヘラクレスも、妹か弟がほしいとねだったんだ。願いが叶って良かったじゃないか。俺も欲しがったからな。ふふ。ロルフも欲しがってたな。」
「残念ながら俺で最後でしたね。以前、父上が謝ってくれました。頑張ったが、五人目は来ないと。」
「ぶふ。そうか、初耳だな。」
お喋りしながらも、ロルフ様とヘラクレス様、ナヴィーン様がそれぞれお茶とお菓子を運んで、手早く広げていきます。
絶対、私より手際がいいです。
「ぐるる。」
「お、オリガ、ダーシャ。お前らも追い出されたか。来い、遊んでやる。」
「俺も。」
「おう。」
ナヴィーン様とヘラクレス様が走って行かれました。
ネロが隣に寝転んだので、アダム様が私をネロを枕にするように乗せました。
「私は少し寝る。眠い。」
「適当に起こしますね。おやすみなさい。」
「ふぁぁ。ロルフ、頼む。」
クッションを枕にごろんと横たわりました。
本当に自由です。
「いつもこんなだから。アダム兄さんは昼寝して、ナヴィーン兄さんとヘラクレス兄さんはいつも走り回るんだ。」
「ロルフ様はいつも何を?」
「バラバラかな。昼寝に付き合ったり遊びに付き合ったり。」
「今日は遊ばなくてよろしいのですか?」
「うん。今日はリリィと付き合う。いいかな?」
「でも、私、横になるしか出来ませんよ。」
「いいね。一緒に横になろう。」
3人でごろ寝して、アダム様の寝息を横に私とロルフ様は起こさないように小声でお喋りを続けました。
時折、ナヴィーン様とヘラクレス様が汗だくで戻ってきて、果実水やお茶を飲み干してまた走っていきます。
「疲れた。寝る。」
ヘロヘロになったお二人が倒れるように寝転び、ごうごういびきをかいて眠ったので、ロルフ様と二人で笑ってしまいました。
ダーシャとオリガも疲れたようでネロの側で固まって丸まります。
2
あなたにおすすめの小説
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる