伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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84、子供※アダム

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膝の上で、ストールに隠れてすんすん泣いている。

側のネロとダーシャが気になってチラチラ見てくる。

3頭の中で1番若いオリガは弟らを追いかけて走ってる。

リリィの実家が、あまり家族仲が良くないのは察していた。

治療を名目で母の宮殿預かりとなってるが、父親のサンマルク伯爵から小まめに問い合わせが来ているが、リリィに手紙を送る風ではなく、母親と姉からは無しのつぶてだ。

ランディック夫妻と友人らしい令嬢達とのやり取りは頻繁らしいが。

家族からいつ戻るのかと問い合わせはなく、ランディック夫妻より問い合わせが来る。

キースとバンから私のもとにリリィの安否を気遣う手紙が届き、目をかけてほしいと頼まれた。

周りが気にかけているのに、家族から、宮殿への心遣いは届くが、リリィには何もない。

あまり見たことのないあっさりした関係に驚いた。

王子が四人もいれば、多少後継者争いが起きると覚悟していたのに、同じ両親から生まれ、それぞれの気質が良かったのか、どの弟も下を可愛がり上を敬う。

ダーシャ達が大人しいのは、弟達が長兄として敬うからだ。

父が母を一人占めする以外は、かなり恵まれた環境だ。

「申し訳ありません。すん。」

「構わんよ。」

弟らが小さい頃を思い出して懐かしくなった。

泣けば慰めてやった。

リリィの頭に顎を乗せて抱き抱える。

「私、レディなのに。泣いてばかりでみっともない。」

「君くらいの時、私もそんなもんだった。よく泣いた。」

「信じられません。」

「本当だ。信じなさい。」

「…。」

ぐずぐず泣く声は静まり、じっと話を聞く気配がする。

「第一王子だからね。色々気苦労はあった。弟達も泣きはしないが、それなりに苦労しているよ。君も同じだ。頑張っているのだろう。わかるよ。」

「…ありがとうございます。」

「ほら、ご褒美のダーシャ達と遊ばなくていいのか?ダーシャ、ネロ。おいで。」

「がぅ」

「ぐうるる」

2頭に慰められ首にしがみついて顔を埋めている。

寝転んだので、足にクッションを挟めてやる。

恥ずかしがったが、気にするなと言うと大人しくしていた。

「私が泣いた話は内緒だぞ?」

裾が捲れないように膝掛けを掛けてやる。

ダーシャの首にしがみついたまま、隙間からこちらを見やり、こくこくと頷いて見せる。

「…アダム様、私、本当に泣き虫なんです。今朝はガレヌス医師から特別に頂いたお薬が苦くて、すごい泣いちゃったんです。今、泣いたよりもっといっぱい。」

「ふっ、そうか。」

ガレヌスはかなり荒っぽい。

私達もだいぶ泣かされた。

「私も、内緒にしてくださいね。」

「ふふ、分かった。だが、ガレヌスの薬なら、ヘラクレス達は未だに泣かされてるぞ。」

「え?まぁ、そんな。うふふ。」

私は病気を用心してるのでずいぶん飲んでないが。

ヘラクレスとナヴィーンは自身の体力を過信し、すぐ不摂生をして風邪を引くからな。

毎年、冬になると懲りずにガレヌスに薬を飲まされてる。

昔、父が盛り過ぎて母に無理をさせた時、ガレヌスが性欲減退の薬だと無理やり飲ませてた。

それでも弟が3人も出来たのだ。

ガレヌスが陛下は偉大ですと冷めた目で誉めてた。

「くく、ふふ。ガレヌスを怒らせぬよう気を付けるといい。手酷く扱われるから。父上にさえああいう男だ。」

「はい。気を付けます。…そう言えば、陛下と王妃、は?」

「ふふ、あの二人ならもう部屋だ。父が万年春だから。くく。」

何と言ってもガレヌス特製の薬に負けぬほどだ。

「まんねん、はるですか?」

「ふ、気にするな。二人が仲よいだけだから。はは、は。」

「…はあ。」

わからないといった顔がおかしくて笑いが出る。

父は薬を避ける為に私達に兄弟はいらんかと仄めかしていたのを思い出す。

幼い私達は安直に欲しいとねだった。

「仲良し…。あ、ラブラブと言うものですね。」

機嫌良く笑っていると、思い付いたように呟いた。

「ふふ、そうだ。そういう相手と連れ合いになれた父と母は幸運だろう。ああ、君の姉君の婚姻が決まったそうだな。おめでとう。」

「お姉様の?」

「昨日、父との話し合いの時に決まったらしい。あれの。フィンレー王子の弟だ。かの国に輿入れする。」

「あの方の、…そうですか。…お姉様ならきっとお務めを立派に果たされます。喜ばしいことです。」

ぶるっと身震いしたのは気のせいではなさそうだ。

ぶつぶつと震える声で呟く。

「伯爵家から王族に、素晴らしい話です。お姉様はさすがです。」

「嫌な話だったようだな。顔色が悪い。何が、気掛かりだ?」

姉君との疎遠を教えるつもりが、逆効果だったようだ。

正直に話せと促せば、戸惑いながらも堰を切ったように話し出した。

「…私は、あの方が、分かりません。一体、私の何をお求めだったのでしょうか。私などに。なぜ私だったのか。…分からない。どうすれば良かったのか。もう関わらないと思ったのに。それが、縁続きになるなんて。このようなことを、不敬ではありますが。」

「安心しろ。私もあれは気持ち悪い。」

昨日、かなり気持ち悪かった。

ああも拗れてまだ追いかけようとするのを止めるのに苦労した。

治療に連れていっても、恨み言と熱望でうるさく喚いてガレヌスが手荒に治療していた。

あれも、自分の患者に手を出されたと立腹で許せなかったようだ。

刑罰に処すと喚いていても、近衛達が我が国の伝統的な治療ですとしれっと答えれば悔しそうにしていた。

「第三王子が手綱を握るつもりのようだ。外には出さぬと。引き取る時にそう仄めかしていた。」

その時にこれで扱いやすくなったと呟いたのが聞こえた。

ここまで引っ掻き回したのも第三王子の思惑もあっただろう。

あれのバカさ加減が露呈したおかげで外交団の中でかなり優位に立てたようだ。

「二度と、あの目で見つめられたくありません…」

餌食になったのが余程堪えたようだ。

ぎゅっと身を縮め呟いた。

本当に、こんなに小さい娘の何を気に入ったのか。

どう見てもまだ子供だ。

頭を撫でようと手をかざすと怯んだ瞳を向けられ手が止まった。

脅えた様子に心配したネロが引き止めるように、私の手をあむっと咥えて伺うように見上げてくる。

「ネロはアダム様が大好きですね。可愛く甘えてます。うふふ。」

「そうだな。」

「できたー!」

「早く見せてやろう!」

「リリィー!」

花壇の側で、大人しく3人が固まっていたと思ったら、ヘラクレス達が騒々しく走って戻ってきた。

「どうした?」

「ロルフが作ったんだ。出来たから見せに来た。ほら、早く見せてやれ。」

「リリィ、はい。」

顔を赤らめたロルフが蔦薔薇の花輪を頭に乗せる。

「器用だろ?あ、俺達がちゃんと棘は取ったからな。」

「キレイ。アンバー様の御髪の色。ありがとうございます。」

濃い褐色の赤は確かにアンバー嬢の髪色だった。

「ほら、やっぱり赤薔薇に盗られるぞ。だから他の色がいいって言ったのに。」

「ピンクとか黄色が良かったんじゃないか?ロルフが選んだんだ。深紅の赤が良いって。」

「くふ、ふふ、赤薔薇の君か。」

「リリィが喜ぶから良いんです。赤薔薇の妖精なんだから。」

「そうか、ふふ。」

そろそろ部屋に戻ろうかと声をかけ、ロルフ達に片付けを頼み、リリィをラウンジに運んだ。

「お片付けもご自身でされるのですね。」

「中庭のプライベートに人は入れない。家族だけで過ごすから。手間だが、好きに過ごせる。たまにはいい。」

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