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93、貢献
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妖精と呼ばれることも、アンバー様に可愛がられてることも。
果てはお姉様やアンバー様のこともきつい物言いで蔑みました。
「みっとともない。」
頬を掴まれ上を見上げさせられます。
「どうやって王子達に取り入ったの?教えてほしいわ。」
グリグリと掴んだ頬を振られて肘掛けと背もたれのない椅子からよろけて落ちました。
「そんなところで寝転んで。邪魔だわ。」
皆でドレスを踏んでいます。
そのせいで立てません。
後ろに以前、私のお菓子を潰したご令嬢達もいます。
私の様に嬉しそうに微笑んでいました。
時が過ぎるのを待つ他に考えが浮かびません。
「どうせ、みそっかすの王子を使ったんでしょ。」
「小賢しいわよね。」
憎たらしいと踏んだスカートをグリグリと踏み固めて勝手なことばかり仰っていました。
がさがさと荒く草を踏みしめる音が近づいて、ご令嬢達もはっと音の方を振り返りました。
「やめろ!」
給仕がロルフ様を連れて戻ってきました。
私とご令嬢達への間に立って庇われました。
「なーんだぁ。ほほほ!驚いて損したわ。ほほ。」
女性達は小柄なロルフ様を見下して笑っています。
「邪魔だわ、第四王子。」
「名ばかりのみそっかす。くすくす。」
「退いてくださいませ?女同士のことに殿方が口出し無用ですわ。」
「いつも兄王子達のあとをちょこちょこ付いて回るだけ。役立たずの四番目。」
「私達、高位の令嬢のもとへ婿入りするしか脳がないくせに。」
嘲笑う背の高いご令嬢達の言葉にかっとなりました。
「違います!ロルフ様は立派にお仕事をされてます!」
「バカなの?こんな小さいなりで。私達よりも小さい。何が出来るの?」
「や、薬学と植物の研究をされて立派に王家への貢献をされてます!」
国で流通している薬の大半に関わっています。
薬の名前を片っ端から言いました。
改良された作物も。
「この、お菓子にも!ロルフ様が改良された作物がつかわれてるんです!」
ばんっとテーブルを叩きました。
手のひらが痛くてじんじんします。
「そのドレス!その生地の生産が増えるように環境に強い品種の改良も!」
先頭のご令嬢をどんと突き飛ばしました。
高位のご令嬢になんてことをと気持ちは怯えるのに言葉が止まりません。
「これだけの!貢献をされているんです!ひけらかさずに!恥知らずの世間知らずはあなた達です!」
名前の公表はされなくとも、学者の先生達からたくさん聞いていました。
なぜ公表しないのか尋ねれば、そっちの方が学者の先生達の地位が上がるからとお答えになります。
先生達は確かに日頃の作業は自分達だが、お金を融通しアイデアを出すのはロルフ様だと皆が口にしてました。
彼らはロルフ様を敬って大事にされています。
ふーふーと息が上がってます。
向こうも怒りに任せた瞳で睨んできますが、負けじと睨み返します。
ぐいっとロルフ様に腕を引かれ、ロルフ様の後ろへ。
「出任せを。」
「事実だ。全員下がれ。」
「何を、」
穏やかなロルフ様の低い声です。
こんな口調も初めてでした。
ご令嬢達も初めてのようで、怯んでます。
「四番目のみそっかすとお前達が貶しても俺は王族だ。不敬だとわからないのか。そこまでバカか?」
「なんですって!」
「うるさい。お前達の行いは王家から報告する。今まで放っておいたがもう我慢ならん。全てだ。お前達のしたことは全て報告する。兄達について回ってふざけた策を弄したことも、俺に対する暴言も。」
「あっ、今さら、何を。」
「ああ、今さらだ。だが、遅くはない。つまらんことと黙っていただけだ。陛下と王妃もご存じだ。兄達も。いつでもこちらは伝える準備は出来ている。分からなかったお前らがバカなんだ。」
どんなお顔をしているのか私からは見えません。
青ざめるご令嬢達を見上げて、尖った低い声でお話を続けます。
「下がれ。ここは許されたものしか入れない。会場にも戻すな。全員、外へ摘まみ出せ。」
お話になる間に、多くの近衛が駆けつけていました。
引きずられて連れていかれるご令嬢達の甲高い罵声と泣き声にぞっとしました。
事のなり行きを黙って見つめ、あたりが静かになるとロルフ様の背中が怖くて一歩下がります。
どんな顔をされてるのか恐ろしかったのです。
今までの自分も、不敬だったのではと怖くなりました。
「終わったか?」
はっと気づくとアダム様が近衛をつれてこちらを眺めていらしゃいました。
「はい。」
「いずれ図に乗った輩の片付けが必要だとは思っていたが、盛大にやったな。」
「…はい。手荒になりました。申し訳ありません。」
「ふふ、ヒバが輿入れする前に母上は傲慢な令嬢達の躾を多少するつもりだった。構わないよ。」
アダム様が下げるロルフ様の頭に手をぽんと置いてグリグリと回します。
「ふ、リリィが怯えてるよ。」
「あ、」
アダム様の視線に体が強張ってしまいました。
「…はい。…失敗しました。…嫌われたでしょうか?」
後ろ姿からわかるほど肩を落としています。
「ふふ、くふふ、自分で聞け。」
「顔を見る勇気がありません。」
「ふふ、リリィ。ロルフがへこんでしまった。どうしたらいい?」
「え、え?」
「ロルフは妖精に首ったけなんだ。怖がられて落ち込んでいる。」
「え!え!」
「そこまで言わなくても…」
落ち込んだ肩がますます小さく縮んでいます。
「あ、え?わ、私。」
「ロルフ、私は間違ったことを言ったか?」
「…いいえ。…お言葉の通りです。…百合の妖精が好きです。ずっと一緒にいたいくらい。」
隙間から見える耳がどんどん赤く染まって、私も顔が熱くなって息苦しくなりました。
両手で顔を押さえよろよろとその場にしゃがみこんでしまい、アダム様に促されたロルフ様が振り返ります。
ぺたんと座り込む私の側に膝をついて。
赤い肩を撫でられてました。
「またガレヌスに診てもらおう。」
「苦い、お薬は嫌です。」
「大丈夫だよ。これなら湿布くらいだ。」
「…はい。あの、王妃からお借りしたドレスを汚してしまいました。申し訳ありません。」
「いいよ。リリィのせいじゃない。」
頭を下げて視線から逃げました。
恥ずかしくてどうしたらいいのかわかりません。
顔が熱いです。
体も、熱くてたまりません。
「やっぱり、嫌われたかな?」
ふるふると頭を下げたまま首を振りました。
顔を隠した両手を握られ、ロルフ様の手に優しく包まれます。
「リリィのことが大好きなんだ。」
「…はい。」
上擦ってしまい変な声です。
「でも、私、分からなくて。アンバー様やバン様に子供だと言われてて。私、どうしたらいいか。ああ、やっぱり子供です。申し訳ありません。」
「いいよ、大丈夫だよ。今はオリガ達の方が好きだろ?」
「あう、…はい。」
側のアダム様が盛大に吹き出していました。
はい。
オリガ達の方が素直に大好きと言えます。
「でも、2番目に俺のこと好きじゃない?母にそっくりな顔が、」
「は、はい。」
「なら独り占めできるよ。いいと思わない?」
素敵な提案に思わず、はっとして顔を上げました。
アダム様が後ろでお腹を抱えてます。
「あ、あの、」
「ふふ、よかった。」
恥ずかしくて視線がさ迷いましたが、またいつものお優しい眼差しに見とれてぽわっと気が抜けます。
綺麗な瞳。
穏やかな笑顔に胸が苦しくて、目に涙が滲みました。
その後、またお着替えをして会場に戻りました。
ロルフ様にエスコートされて。
二人で父と母に相談し、陛下と王妃にも。
ウォルリック卿とランディック辺境伯夫妻も。
後日の話し合いで、私の気持ちがはっきりするまで待とうと。
まだ私が子供だからと皆さんに言われて、もう少しお互いの気持ちを固めて今は節度を持って仲良くすることからと言われました。
私もまだ夢見心地なのでそれに賛成でした。
ロルフ様も、そうだねと優しく頷かれました。
果てはお姉様やアンバー様のこともきつい物言いで蔑みました。
「みっとともない。」
頬を掴まれ上を見上げさせられます。
「どうやって王子達に取り入ったの?教えてほしいわ。」
グリグリと掴んだ頬を振られて肘掛けと背もたれのない椅子からよろけて落ちました。
「そんなところで寝転んで。邪魔だわ。」
皆でドレスを踏んでいます。
そのせいで立てません。
後ろに以前、私のお菓子を潰したご令嬢達もいます。
私の様に嬉しそうに微笑んでいました。
時が過ぎるのを待つ他に考えが浮かびません。
「どうせ、みそっかすの王子を使ったんでしょ。」
「小賢しいわよね。」
憎たらしいと踏んだスカートをグリグリと踏み固めて勝手なことばかり仰っていました。
がさがさと荒く草を踏みしめる音が近づいて、ご令嬢達もはっと音の方を振り返りました。
「やめろ!」
給仕がロルフ様を連れて戻ってきました。
私とご令嬢達への間に立って庇われました。
「なーんだぁ。ほほほ!驚いて損したわ。ほほ。」
女性達は小柄なロルフ様を見下して笑っています。
「邪魔だわ、第四王子。」
「名ばかりのみそっかす。くすくす。」
「退いてくださいませ?女同士のことに殿方が口出し無用ですわ。」
「いつも兄王子達のあとをちょこちょこ付いて回るだけ。役立たずの四番目。」
「私達、高位の令嬢のもとへ婿入りするしか脳がないくせに。」
嘲笑う背の高いご令嬢達の言葉にかっとなりました。
「違います!ロルフ様は立派にお仕事をされてます!」
「バカなの?こんな小さいなりで。私達よりも小さい。何が出来るの?」
「や、薬学と植物の研究をされて立派に王家への貢献をされてます!」
国で流通している薬の大半に関わっています。
薬の名前を片っ端から言いました。
改良された作物も。
「この、お菓子にも!ロルフ様が改良された作物がつかわれてるんです!」
ばんっとテーブルを叩きました。
手のひらが痛くてじんじんします。
「そのドレス!その生地の生産が増えるように環境に強い品種の改良も!」
先頭のご令嬢をどんと突き飛ばしました。
高位のご令嬢になんてことをと気持ちは怯えるのに言葉が止まりません。
「これだけの!貢献をされているんです!ひけらかさずに!恥知らずの世間知らずはあなた達です!」
名前の公表はされなくとも、学者の先生達からたくさん聞いていました。
なぜ公表しないのか尋ねれば、そっちの方が学者の先生達の地位が上がるからとお答えになります。
先生達は確かに日頃の作業は自分達だが、お金を融通しアイデアを出すのはロルフ様だと皆が口にしてました。
彼らはロルフ様を敬って大事にされています。
ふーふーと息が上がってます。
向こうも怒りに任せた瞳で睨んできますが、負けじと睨み返します。
ぐいっとロルフ様に腕を引かれ、ロルフ様の後ろへ。
「出任せを。」
「事実だ。全員下がれ。」
「何を、」
穏やかなロルフ様の低い声です。
こんな口調も初めてでした。
ご令嬢達も初めてのようで、怯んでます。
「四番目のみそっかすとお前達が貶しても俺は王族だ。不敬だとわからないのか。そこまでバカか?」
「なんですって!」
「うるさい。お前達の行いは王家から報告する。今まで放っておいたがもう我慢ならん。全てだ。お前達のしたことは全て報告する。兄達について回ってふざけた策を弄したことも、俺に対する暴言も。」
「あっ、今さら、何を。」
「ああ、今さらだ。だが、遅くはない。つまらんことと黙っていただけだ。陛下と王妃もご存じだ。兄達も。いつでもこちらは伝える準備は出来ている。分からなかったお前らがバカなんだ。」
どんなお顔をしているのか私からは見えません。
青ざめるご令嬢達を見上げて、尖った低い声でお話を続けます。
「下がれ。ここは許されたものしか入れない。会場にも戻すな。全員、外へ摘まみ出せ。」
お話になる間に、多くの近衛が駆けつけていました。
引きずられて連れていかれるご令嬢達の甲高い罵声と泣き声にぞっとしました。
事のなり行きを黙って見つめ、あたりが静かになるとロルフ様の背中が怖くて一歩下がります。
どんな顔をされてるのか恐ろしかったのです。
今までの自分も、不敬だったのではと怖くなりました。
「終わったか?」
はっと気づくとアダム様が近衛をつれてこちらを眺めていらしゃいました。
「はい。」
「いずれ図に乗った輩の片付けが必要だとは思っていたが、盛大にやったな。」
「…はい。手荒になりました。申し訳ありません。」
「ふふ、ヒバが輿入れする前に母上は傲慢な令嬢達の躾を多少するつもりだった。構わないよ。」
アダム様が下げるロルフ様の頭に手をぽんと置いてグリグリと回します。
「ふ、リリィが怯えてるよ。」
「あ、」
アダム様の視線に体が強張ってしまいました。
「…はい。…失敗しました。…嫌われたでしょうか?」
後ろ姿からわかるほど肩を落としています。
「ふふ、くふふ、自分で聞け。」
「顔を見る勇気がありません。」
「ふふ、リリィ。ロルフがへこんでしまった。どうしたらいい?」
「え、え?」
「ロルフは妖精に首ったけなんだ。怖がられて落ち込んでいる。」
「え!え!」
「そこまで言わなくても…」
落ち込んだ肩がますます小さく縮んでいます。
「あ、え?わ、私。」
「ロルフ、私は間違ったことを言ったか?」
「…いいえ。…お言葉の通りです。…百合の妖精が好きです。ずっと一緒にいたいくらい。」
隙間から見える耳がどんどん赤く染まって、私も顔が熱くなって息苦しくなりました。
両手で顔を押さえよろよろとその場にしゃがみこんでしまい、アダム様に促されたロルフ様が振り返ります。
ぺたんと座り込む私の側に膝をついて。
赤い肩を撫でられてました。
「またガレヌスに診てもらおう。」
「苦い、お薬は嫌です。」
「大丈夫だよ。これなら湿布くらいだ。」
「…はい。あの、王妃からお借りしたドレスを汚してしまいました。申し訳ありません。」
「いいよ。リリィのせいじゃない。」
頭を下げて視線から逃げました。
恥ずかしくてどうしたらいいのかわかりません。
顔が熱いです。
体も、熱くてたまりません。
「やっぱり、嫌われたかな?」
ふるふると頭を下げたまま首を振りました。
顔を隠した両手を握られ、ロルフ様の手に優しく包まれます。
「リリィのことが大好きなんだ。」
「…はい。」
上擦ってしまい変な声です。
「でも、私、分からなくて。アンバー様やバン様に子供だと言われてて。私、どうしたらいいか。ああ、やっぱり子供です。申し訳ありません。」
「いいよ、大丈夫だよ。今はオリガ達の方が好きだろ?」
「あう、…はい。」
側のアダム様が盛大に吹き出していました。
はい。
オリガ達の方が素直に大好きと言えます。
「でも、2番目に俺のこと好きじゃない?母にそっくりな顔が、」
「は、はい。」
「なら独り占めできるよ。いいと思わない?」
素敵な提案に思わず、はっとして顔を上げました。
アダム様が後ろでお腹を抱えてます。
「あ、あの、」
「ふふ、よかった。」
恥ずかしくて視線がさ迷いましたが、またいつものお優しい眼差しに見とれてぽわっと気が抜けます。
綺麗な瞳。
穏やかな笑顔に胸が苦しくて、目に涙が滲みました。
その後、またお着替えをして会場に戻りました。
ロルフ様にエスコートされて。
二人で父と母に相談し、陛下と王妃にも。
ウォルリック卿とランディック辺境伯夫妻も。
後日の話し合いで、私の気持ちがはっきりするまで待とうと。
まだ私が子供だからと皆さんに言われて、もう少しお互いの気持ちを固めて今は節度を持って仲良くすることからと言われました。
私もまだ夢見心地なのでそれに賛成でした。
ロルフ様も、そうだねと優しく頷かれました。
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