ぶんごうもらとりあむ

桜月 翠恋

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5話 事件

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今日は約1年ぶりに学校へ登校して、全く知らないクラスメイトと共に授業を受け終わり帰るだけのはずだった

なのに目の前のこれは何だ?

玄関を出ると目の前に人だかりができていた

そして、異様なコントラスト

人と人の間、足元の隙間から見えるのは
赤い……液体

脳がそれを血だまりだと理解するにはそう時間がかからなかった

赤黒い血がドロドロと白いコンクリートの床に広がっていく

“ドクン”と心臓が大きな音を立てる
喉がカラカラに渇いて唾液を飲み込むのもやっとだった

そっと人だかりへ歩み寄り、状況を見ようとする

赤黒い血だまりの中心には高齢の先生…確か3年のどこかのクラスを担任している先生だ

吉野文子よしのあやこ先生だ


落下したのだろうか、手足は普通ならば曲がらないような方向に曲がっている

大きく広がる血飛沫は高い所から強く地面に叩きつけられたのを印象づけた

そしてその血飛沫を浴びてしまっている一人の生徒が血だまりの近くに座り込んでいる

いきなり先生が落ちてきたのだろうか
そして近くを歩いていたあの子に血飛沫と先生の肉片が飛び散った

だからこそ彼女は呆然としているのだろう

相当なトラウマになりそうだ

おかしな点が一つあるのは…なぜ、先生の衣類がないのか、ということくらいか

そう、先生は上半身は下着だけをつけた状態で亡くなっているのだ

そこまで確認したところで遠くからパトカーのサイレンが聞こえる
暫くは帰れそうにない

仕方ないのでそのまま校舎へ戻った


自分の教室で芥川龍之介先生の本を取り出す

さっきの先生の状態を見て何故か思い出したのが芥川先生の羅生門…

どうしてこれが浮かんでしまったのだろうか
盗人の老婆のような事をしてるような人ではなかった


「きついな」

誰もいない教室で一人、ポツリと呟く
外は暗雲がたちこめていた
さっきまでは雲一つない青空だったのに

まるで事件の痕跡を空が消そうとしているかのように…

校舎の外は人だかりができたままだった。
他の先生たちが生徒を帰そうとするが、生徒たちは動けずにいたみたいだった

制服が赤く染まった女子生徒は震えながら他の先生にどこかへ連れて行かれている

目が良くなりすぎるのも、嫌なものだな…

ふいっと窓の外の光景から目を逸らし、自分の席に置いた本を手に取る

ふと、本当に何気なしに昨日の再現をしてみたくなる

本のタイトル…羅生門。
まさか、お守り代わりの本を連想させる事が起きるなんて思わなかった


「羅生門……芥川龍之介…」


ポツリと呟けば眩い光が教室を覆う
昨日と同じことが起きた

やっぱりトリガーはこれだろう

いつの間にか閉じていた目を開けば……

昨日と同じように本の上には手のひらサイズの人が立っていた
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