役立たずと追放された空想令嬢ですが、その知識は未来の科学技術でした。私を拾ってくれた冷徹公爵様に溺愛され、世界を変える発明で大逆転します!

aozora

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 して、針はついに目標としていた領域へと到達した。

 99.999999999%。

 イレブンナイン。

 神の領域とまで言われた、完全無欠の純度だった。

「……嘘だろ、本当に……」

 誰かが、信じられないというような、震える声で呟いた。

 それを合図にしたかのように、工房は爆発的な歓声に包まれた。

「うおおおおおっ! 成功だぁっ! これで世界が変わるぞ!」

「やったぞ! 俺たちはやったんだ! 歴史に名を刻むぞ!」

 顔をくしゃくしゃにして笑う者、ただ呆然と奇跡を見つめる者、興奮のあまりその場にへたり込む者もいた。

 彼らの目には、これまでの苦労と、それを乗り越えた職人としての誇りが、きらきらと輝いていた。

「……やったのう、お嬢様」

 ギデオンが、皺くちゃの顔をさらにくしゃくしゃにして、エリアーナに手を差し出した。

 彼の目に、これまでの困難と、それを乗り越えた職人としての深い感慨が宿っていた。

「この日を、どれほど夢見たことか。神すら届かぬとされた純度じゃ。まさに……奇跡じゃ」

「ええ、やりましたね、ギデオン!」

 エリアーナは、その分厚く、節くれだった手を力強く握り返した。

 その感触から、彼のこれまでの苦労と、それ以上の喜びがひしひしと伝わってくる。

 この果てなき旅路の、確かなる始まりを、エリアーナは心に刻んだ。

 これで、道は拓かれたのだ。

 この神聖なまでの純度を持つ精製土水晶の薄片――ウェハーに、微細な回路を刻み込むことで、世界で最初の『天命石』が誕生する。

 それは、世界に情報革命という名の産声をもたらす、揺るぎない胎動だったのだ。

 歓声が響き渡る工房の中で、エリアーナは満ち足りた笑顔を浮かべた。

 彼女の戦いは、ここから、いよいよ始まるのだ。

 ◇

 工房の熱狂は、深夜になっても冷める気配がなかった。

「今夜は祝杯だ!」「俺の秘蔵の酒を出すぞ!」

 口々に叫び、肩を組む技術者たち。

 エリアーナも、彼らの興奮と喜びに満ちた笑顔に、自然と頬が緩むのを感じていた。

 誰もが、この瞬間のために身を粉にしてきたのだ。

 眠れない夜をいくつも越え、数えきれない失敗を乗り越えてきた。

 その苦労が報われたのだから、手放しで喜ぶのは当然のことだった。

 だが、エリアーナの思考は、すでに次の段階へと飛んでいた。

 イレブンナインの達成は、あくまでスタートラインに立ったに過ぎない。

 これからが、本当の意味での未知の領域への挑戦となるのだ。

「皆、本当にありがとう。今夜はゆっくり休んで。明日からは、さらに困難な作業が待っています」

 エリアーナが声をかけると、男たちは「おう!」「お嬢様のためなら!」と力強く応えた。

 彼らの真っ直ぐな信頼は、かつて空っぽだったエリアーナの胸に、確かな重みとなって響いた。

 それは、追放された孤独な魂が、ようやく見つけた居場所のような温かさだった。

 その時、工房の入り口が静かに開かれ、長身の人影が音もなく滑り込んできた。

 夜の闇をそのまま纏ったかのような、黒の軍服。

 カイウス・エトール・ヴァルヘイムその人だった。

 彼の姿を認めると、騒がしかった工房が一瞬で静まり返る。

 技術者たちは慌てて背筋を伸ばし、最敬礼を取った。

「公爵閣下!」

「構わん。続けてくれ」

 カイウスは短くそう言うと、表情ひとつ変えずにエリアーナへと歩み寄る。

 しかし、その全てを見通すかのような金の瞳には、普段の怜悧な光とは違う、確かな満足と、わずかな熱が浮かんでいた。

「……見事だった、エリアーナ。君と、君のチームは、不可能を可能にした」

 静かだが、心の底からの称賛だった。

「カイウス様……。これも全て、あなたの支援があったからです」

 エリアーナが頭を下げると、カイウスは軽く首を振った。

「俺は場所と金を用意しただけだ。この偉業は、君の知識と、彼らの技術の結晶だ。誇るがいい」

 彼は工房全体を見渡し、技術者たち一人ひとりの顔を確かめるように頷いた。

 それは、この国の主からの、最大限の労いだった。

 カイウスは再びエリアーナに視線を戻すと、わずかに声を潜めた。

「少し、風にあたらないか。君に聞きたいこともある」

 彼の誘いに、エリアーナはこくりと頷いた。

 ◇

 工房の外は、満月が湖面を銀色に照らし、幻想的な静けさに包まれていた。

 工房内の熱気とは対照的な、ひんやりとした夜風が心地よい。

「次の段階は、いよいよ回路の刻印か」

 先に口を開いたのはカイウスだった。

「はい。神の純度を持つ水晶の板に、神の御業ともいえる微細な紋様を刻み込みます。それこそが、流電の流れを自在に操る『天命石』の心臓部となるのです」

 エリアーナは、自らの脳裏に浮かぶ設計図を思い描きながら、情熱を込めて語った。

「具体的には、どうやる」

「……光で、石に絵を描くのです」

「光で? それは、いかなる仕組みだ?」

 カイウスの金の瞳が、強い知的好奇心にきらめいた。

 彼とのこういう会話が、エリアーナは何よりも好きだった。

 他の誰にも理解されない空想を、彼は世界でただ一人、真剣な科学的探求として受け止めてくれる。

「はい。まず、塵一つない『清浄空間』が必要です。ほんのわずかな塵芥が、回路の全てを台無しにしてしまうからです。それは、強力な魔法障壁を何重にも張ることで実現できると考えています」

「なるほど。結界術の応用か」

「次に、光に反応して性質を変える特殊な『感光薬液』を、磨き上げた精製土水晶の薄片――ウェハーの表面に均一に塗布します。そして、回路の設計図を描いた原版を通して、強い光を当てるのです」

「……光が当たった部分だけが、変化する、と? 魔法陣を刻むのとは、また違う概念か」

「その通りです。最後に、変化した部分だけを特殊な魔法薬で洗い流せば、ウェハーの上には回路の紋様だけが残ります。その紋様を元に、さらに加工を重ねていく……。これが、私の頭の中にある『光描画技術』――リソグラフィの基本原理です」

 エリアーナの説明を、カイウスは黙って聞いていた。

 彼の頭脳は、今この瞬間も、彼女の語る言葉の意味と、その実現に必要な要素、そしてそれがもたらすであろう未来を、恐るべき速度で計算しているのだろう。

「面白い……。錬金術と、光学魔術、そして結界術の複合技術か。前例のない、全く新しい領域だな」

 やがて彼は、満足そうに息をついた。

「必要なものは?」

「特殊なレンズです。回路の原版を、肉眼では見えないほど小さく、正確にウェハーの上へ投影するための……。それから、光の波長を制御する魔道具も。そして何より、この工程を理解し、実行してくれる超一流の職人たちの協力が不可欠です」

「レンズならギデオンがいる。魔道具はヨハンに任せよう。人材が足りなければ、国中から集める。君は、ただ君の成すべきことに集中すればいい」

 カイウスはこともなげに言った。

 彼の「溺愛」は、甘い言葉ではない。

 エリアーナの夢の実現のために、あらゆる障害をその圧倒的な権力と実力で排除するという、絶対的な行動で示される。

「ありがとうございます、カイウス様」

 エリアーナは胸に込み上げる温かいものを感じながら、深く頭を下げた。

 彼の絶対的な信頼が、エリアーナの心の奥底に安堵と、この「天命」を全うする決意を固めさせた。

 この人の傍にいる限り、自分は天命から逃げずにいられる。

 そう、確信できた。

 ◇

 翌日、エリアーナは工房の主要メンバーを集め、正式に次の工程の説明会を開いた。

 ギデオン、ヨハン、そして最近チームに加わった若手の技術者たち。

 その中には、ひときわ熱心な眼差しを向ける青年、レオンの姿もあった。

 エリアーナが昨夜カイウスに語った『光描画技術』の概要を説明すると、工房内は静かな興奮と、それ以上の戸惑いに包まれた。

「……お嬢様。つまり、米粒よりも小さい場所に、王都の地図みてぇなもんを、光で焼き付けるってことかい?」

 腕組みをしたギデオンが、唸るように尋ねた。

「ええ、喩えるなら、そういうことです。その線の一本一本が、流電の通り道になるのです」

「途方もねぇ話だ……。だが、面白ぇ!」

 ドワーフの老工芸師は、カッと目を見開いた。

 その瞳には、不可能への挑戦を楽しむ職人特有の炎が燃え上がっていた。

「レンズの研磨なら、このワシに任せな。神の目が見通せるほどの精度で磨き上げてやらぁ! わしらドワーフの真骨頂を見せてやる!」

「感光薬液の調合は、私の専門分野かもしれません」

 音響魔術師のヨハンも、知的な好奇心に頬を紅潮させている。

「光の波長にのみ反応する物質の配合……。いくつかの心当たりがあります。試作してみましょう」

 頼もしい仲間たちの反応に、エリアーナは安堵の息をついた。

 その中で、レオンがおずおずと手を挙げた。

「あの、エリアーナ様。その……回路の原版となる『マスク』は、どのように作成されるのでしょうか? 投影する元となる絵が不正確では、いくら純度が高くとも、最終的な『天命石』の性能に致命的な欠陥をもたらすのでは?」

 それは、非常に的確で、核心を突いた質問だった。

「その通りよ、レオン。よく気づいてくれたわ。だからこそ、原版は寸分の狂いもなく作成しなければなりません。これもまた、ギデオンの精密加工技術と、私の知識を組み合わせた、全く新しい手法で行います」

 エリアーナが感心したように答えると、レオンは「なるほど……!」と深く頷き、手元の羊皮紙に猛烈な勢いで何かを書き込み始めた。

 彼の熱心さと、そこから伺える深い理解力は、チームの中でも際立っている。

 エリアーナは、彼の存在を頼もしく思った。

 ◇

 一方その頃。

 大陸の覇権を狙うグランツ王国では、王太子アルフォンスが執務室で忌々しげに舌打ちをしていた。

 彼の目の前には、密偵ゼルクから送られてきたばかりの報告書が広げられている。

 月光鋼の奪取に失敗し、多くの騎士を失った屈辱はいまだに薄れていない。

「……イレブンナイン、だと? 何かの暗号か? 意味の分からんことばかり書きおって、あの男は!」

 アルフォンスは報告書を机に叩きつけた。

 純度を示す数値であることなど、彼に理解できるはずもなかった。

 だが、報告書の末尾に記された一文が、彼のプライドを鋭く刺した。

『――工房は未曾有の成功に沸き、エリアーナ嬢は『聖女』のごとく称えられております。カイウス公の信頼は、もはや絶対的なものと拝察――』

「聖女だと……? あの空想狂の女が! あの見下していた女が、私を嘲笑うかのように、称えられているというのか!」

 アルフォンスは歯ぎしりした。

 自分が捨てた女が、隣国で英雄扱いされている。

 その事実が、彼の心を嫉妬と焦燥の炎で焼き尽くした。

 彼の背後には、情報戦を得意とする優秀な諜報機関があった。

 だからこそ、ヴァルヘイムの辺境における奇妙な動きも、彼の耳に届いていたのだ。

 あの女の語る戯言に、何かがあると薄々は感じていた。

 だからこそ、カイウスが国を挙げて取り組んでいるのだ。

 だが、それが一体何なのか、その価値がどれほどのものなのか、アルフォンスには見当もつかなかった。

 己の理解を超えた事象が、自分の支配の外で進んでいるという事実が、彼の傲慢な矜持を深く傷つけた。

 理解できないからこそ、苛立ちは募るばかりだった。

「……もはや、待ってはおれん」

 アルフォンスは決意を固めた。

 彼は新しい羊皮紙を取り、ペンを走らせる。

 それは、彼の諜報機関がヴァルヘイムの工房に以前から潜入させている、もう一つの「駒」への指令書だった。

「工房内部の協力者ならば、すでに詳細を把握しているはず……」

 彼は小さく呟いた。

『――計画を最終段階へ移行せよ。手段は問わん。エリアーナが作り出そうとしている、あの女の怪しげな『石』の設計図、及び試作品を、可及的速やかに奪取せよ。可能な限り、内部の協力者と連携を取れ』

 彼は、自らが何を奪おうとしているのかも知らぬまま、ただ盲目的な欲望に突き動かされていた。

 その愚かな判断が、自らの首を絞める縄になるとも知らずに。

 ◇

 ヴァルヘイムの工房では、『光描画技術』の準備が着々と進められていた。

 ギデオンは地下の工房に籠り、神業的な集中力でレンズの研磨に取り組んでいる。

 ヨハンと錬金術師たちは、様々な薬液を調合し、光への反応を昼夜問わずテストしていた。

 エリアーナは、全体の指揮を執りながら、回路の原版となる『マスク』の設計に没頭していた。

 それは、彼女の脳内に浮かぶ天命の知識を、この世界の技術で実現可能な形に翻訳するという、極めて緻密で創造的な作業だった。

 その日の深夜。

 設計作業に一区切りをつけ、エリアーナはカイウスの執務室を訪れていた。

 定期的な進捗報告のためだ。

「……順調のようだな」

 エリアーナの報告を聞き終えたカイウスは、満足げに頷いた。

「はい。皆の協力のおかげです。このままいけば、一月後には最初の『天命石』が完成するかもしれません」

「そうか」

 カイウスの表情が、ふと真剣なものに変わった。

 その金の瞳は、普段の冷静さをわずかに揺らがせ、鋭い警戒の色を帯びる。

「エリアーナ。グランツ王国の国境付近での軍事活動が、活発化しているとの報告が入った」

「……!」

「表向きは演習とのことだが、こちらの動向を探っているのは間違いない。おそらく、前の『龍の顎』での失敗を取り返そうと躍起になっているのだろう」

 彼の言葉の端々には、一国の主としての、深く重い懸念が滲んでいた。

「工房の警備は、騎士団の精鋭を増員させ、三重にした。君の身の安全が、何よりも優先される」

「カイウス様……」

「君にもしものことがあれば、この計画は終わる。……いや」

 カイウスは言葉を切り、一瞬、その冷徹な瞳に人間らしい感情が揺らめいた。

 彼はエリアーナの紫の瞳をまっすぐに見つめた。

 その言葉は、まるで彼の揺るぎない理性を突き破って溢れ出たかのように、切実な響きを持っていた。

「君の身に何かあれば、私の世界が終わる」

 彼の絶対的な信頼と、それ以上の深い愛情が、エリアーナの心を強く揺さぶる。

「……私は、大丈夫です。あなたの騎士たちが守ってくれている。そして何より、私にはこの天命を成し遂げるという、強い意志がありますから」

 エリアーナは、彼の不安を拭うように、精一杯の笑顔で応えた。

 その夜、エリアーナは一人、工房で膨大な資料の整理をしていた。

 誰もが引き払った静かな空間で、思考を巡らせるのが彼女の習慣だった。

 不意に、背後から声がかけられた。

「エリアーナ様、まだお残りでしたか」

 振り返ると、そこには若き技術者、レオンが立っていた。

「レオン。あなたこそ、どうして?」

「今日の議論で、いくつか疑問点が残ってしまいまして。もう少し深く、その核心に触れてみたかったのです。少し資料を拝見してもよろしいでしょうか? ……あ、もちろん、お手伝いもします!」

 彼は人懐っこい笑顔で言った。

 その熱心さには、いつも感心させられる。

「ええ、もちろん。ありがとう、助かるわ」

 エリアーナが感謝を述べると、レオンは嬉しそうに頷き、彼女の隣で資料をめくり始めた。

 本当に、優秀で真面目な青年だ。

 彼のような深い洞察力を持つ若い力が、これからのヴァルヘイムを、そしてこの計画を支えていくのだろう。

 そう思った、その時だった。

 資料に落とされたランプの光が、一瞬、彼の瞳を横切った。

 エリアーナを尊敬の眼差しで見つめているはずのその瞳の奥に、ほんの一瞬、探るような、あるいは値踏みするような、不意に冷たい光が宿ったのを、エリアーナは見逃さなかった。

 それはすぐにいつもの熱心な青年の表情に戻ったが、エリアーナの胸には、拭い去れない小さな違和感が残った。

 気のせいだろうか。

 だが、その一瞬の冷徹な光は、まるで氷の刃が心の奥を撫でたかのような、明確な不快感だった。

 エリアーナは首を傾げた。

 しかし、胸の奥に生まれた小さな棘のような違和感は、夜の静寂の中に、静かに溶けてはくれなかった。
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