闇のきざはし ⁑ 狼の山城 と 薔薇の屋敷 の 物語 ⁑

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闇のきざはし 15 狼の山城 と 薔薇の館 の 物語

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 満は思い出していた。

 ここはプレミアムクルーズ船の中だ。魔族の館から生還して、俺は1日で目が覚めたが、香月は眠っている。ちゃんと呼吸している。やすらかな寝息のようだ。香月が無事でちゃんと生きていることに安堵する。頬をそっと撫でて、唇に触れる。


 俺が5歳、香月が3歳のとき、初めて出会った。狼の山城と呼ばれている俺の家に 香月の専任執事のシモンが連れてきた。

 狼の山城は、広大な密林のような森の一角にあった。建物は、自宅と寄宿舎、小学校があり、寄宿舎には、世界の各地から、ひとでなし族 狼の血をひく一族の 子弟が集まっていた。中学校からは この森とおなじエリアの人間界の潟森地区の学校に通う。寄宿舎には、小学校に通う幼いものから、潟森地区里村高校に通うものまで、年齢も幅があった。人間社会に交じって 人間のようにふるまって暮らすには、自身の力をコントロールできなくてはならない。ここは、狼の血をひく一族の力を発散し、コントロールを学ぶ場所で、人間はこのエリアに入れない。

 香月は 薔薇の一族だ。狼の血をひく一族の俺たちより、華奢で、体力もないし、おさなかった。軽くウエーブのかかった黒髪、濃い藍色の瞳、白い肌、そのちいさな体からは、とてもいい匂いがしていて、こんなにも可愛い子供が現実に存在するのかと疑いたくなるほどだった。

 俺たちは、香月も一緒に森の中を遊びまわった。川に飛び込んだり、泳ぎつかれたら、洞窟で昼寝したり、、、。森をかけるとき、狼の姿で香月を背に乗せ、昼寝のときも狼に変化して布団かわりに香月を抱きこんで眠った。香月は ひとでなし族だが、常に人間の姿で、俺たちのように狼に変化したりはできない。

 小学校卒業まで 香月と一緒だった。もちろん学年は違うし、香月も ときどき 潟森地区にある 薔薇の館へも行くので、家族のように一緒に暮らしていたという意味だ。

 俺と同じ潟森地区の中学校に通うと思っていた香月が、スイスという遠いところの中学校の寄宿舎に入ると知ったときは愕然とした。
 
 夏休みに香月が薔薇の館に帰って来たときしか会えなくなった。久しぶりに会う香月は、俺のあとを追いかけてきていたちいさな弟から、幼さが少しずつ抜けてきているようで、かわいさに美しさが加わり、眩しくみえた。

 高校からは香月が潟森地区に戻ってきた。入学してすぐ俺を3年の教室に訪ねてきてくれた。抱きついてきた香月を 抱きしめ 香月の香に包まれて、なぜか胸が騒がしくなった。 
  
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