行き交うは 夢か現か 春の宵【山姥は捜す 時空を渡り時代を世界を)

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行き交うは 夢か現か 春の宵  6

第6章 血の盃

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銀髪入りお守り袋が引き継がれたことで、夜叉波は天狗の子孫の活躍を察知できた。夜叉波も 天狗の子孫がグローバルに活躍していることは、少々驚きだった。


 血の盃

 天狗の末裔 城川は 一族に山姥を紹介しようと 老舗料亭に席を設けた。血の盃で、山姥をもてなすことにした。
料亭玄関で、城川と並んで女将が夜叉波を出迎えた。女将は主賓が 若い女性 であることに驚いた。むろん、顔には出さなかったが。座敷に居並ぶ天狗の末裔たちも 重要人物を紹介する宴会としか聞かされていなかったので、主賓が入って来たときには、どよめきがさざ波のごとく座敷を渡った。
 この宴会に出席を許された者は事前に全員健康診断が実施されたのも妙だった。
 城川は夜叉波に寛ぐよう勧めると同時に夜叉波の前に屏風を立てた。屏風が取り払われたとき、主賓は、銀髪を肩に流し、ゆったりと衣を羽織って、くつろぐ婆が居た。若い女の面影は つゆほどもなく、主賓は入れ替わったように はげしく変貌していた。
居並ぶ天狗の末裔たちは、一人ずつ夜叉波の前に進み出て、金の盃に、金の針を己の指にさして、血をしたたらせて 山姥にささげた。健康診断は通ったのに、山姥にはじかれた者も数人いた。血の盃のもてなしに、山姥は気分よく受け、宴会終了間際に 再度屏風を立て、若い女の姿で帰っていった。
 
 一方、黒川は 源氏名シェリーの本名「夜叉波 弥生」しか知らされず、弥生が自分を大事にしてくれる以上に ぞっこんに惚れているのを自覚していた。それこそ弥生の一挙手一投足が逐一気になり、城川常務の宴会に招かれた事も把握していた。
城川常務の宴会は 社長はじめ役員の誰にも知らされず、会社からの出席者は城川常務と秘書室の夜叉波で、仕事絡みではないことは確実で、一層ヤキモキさせられた。

黒川は思い切って、城川常務に招かれた宴会のことを 弥生に聞いてみた。血の盃を受けた宴会を語ることは、夜叉波弥生の正体を明かすことだ。

「夜叉波 弥生(シェリー)」は 「黒川 銀次」に 鬼の一族「山姥」であること。血の盃を受けるには、山姥の姿にもどること。を告げた。

黒川は、自分も自らの血を弥生に捧げたかった。直に吸ってほしかった。弥生に目をつぶっているよう言われた。山姥の姿に心臓麻痺を起こしたら、食ってやる と言われた。弥生に食われる、骨をしゃぶられ、血の一滴までも吸われる。想像しただけで、いきそうだった。この命はなくなっても 弥生の中で、血となり、肉となり、まさに一体化する。

正体を知るまえは、黒川は、若く美しい女を抱いていた。正体を知らされてからは、抱かれている。強く抱きしめられている。黒川は、身長180センチ、体重85キロだが、山姥弥生は、かるがると黒川を抱き上げてベッドに運んだ。物心ついてから、生まれて初めて お姫様抱っこされた。黒川はそっと目を開けて、相手を見た。心臓は止まらなかった。むしろ、美しいと思った。どんな鬼婆の姿なのかと想像を膨らませていたが、触れる肌は若い女の姿のときと 変わらず、柔らかなもち肌、銀髪は真珠のごとくつややかだった。

 意図したわけではないが、山姥と天狗の末裔の威力は 黒川の貿易会社にも 影響した。商売は順調だった。黒川の人生も いまが頂点と想えるほど充実していた。
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