海辺のカフェ(成功の次に訪れる突然死)

sakura2025

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第7章 ドリームカンパニー

第7章 ドリームカンパニーのツクル氏も 海辺のカフェの常連

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古書は、母が老人ホームに入居して、すぐ、海辺のカフェ に そっと戻しておいたのだから。たぶんオーナーは、古書が持ち出されたことに気づいていないはずだ。


 第7章 ドリームカンパニ

 ドリームカンパニー、何の会社なのか? いかにも胡散臭い。とアルバイト募集チラシを眺めながら、河野晴夫は思った。「日給、日払い、交通費支給、面接後即日勤務可、週3日勤務」、大学は無事卒業できたものの、いまだ就職先を探している身には、週3日勤務で日払い給与はありがたい。就活中は、面接に行くのが日課だからだ。アルバイトは、いつでも辞められる。親からの仕送りが遅れている今日日、背に腹は変えられない。

 アルバイトで入ったドリームカンパニーだが、居心地の良さに、まじめに勤務して、正社員にしてもらった。正社員といっても、社長のツクル氏、秘書兼家政婦?兼総務全般担当の山内さん、社員 河野晴夫 の極小所帯。ツクル氏は、おだやかな人物で、声を荒げるのを聞いたことがない。が、目は、底知れなく深く、ブラックホールを見つめるとこんな感じがするのではないかというのが 河野の正直な感想だ。事務所の掃除、お茶いれ、出勤管理、給与計算と社長と河野社員のこなす仕事以外の社の仕事は、すべて山内さんが処理していた。一番の新米で平社員であれば、いくら世間しらずの河野でも、掃除、お茶入れは、自分がやりますと山内さんに申し入れたところ、山内さんは、あっさりと「それでは、わたしが不在のときに、お願いします。」と言い、分担がはっきりした。パソコン操作も早く、よどみなく、いったいどれだけの外国語をしゃべれるのか、驚異的能力があるのに、なんで、こんな会社
で、だまって雑用をこなしているのかと河野は思う。日々観察するうちに、この「だまって」が行き過ぎ?のせいで、他の会社でやってゆけなかったのかとも推測する。いわゆる雑談に応じるのは 社長ツクル氏だけで、山内さんは、おしゃべりもしなければ、表情も乏しい。いつも、いつもロボットみない なのだ。必要があって「話す」ときも、話し方に抑揚が少なく、冷静すぎる。
 河野のみるところ、ドリームカンパニーは、一種のコンサルタント業務兼便利屋なのだと思う。どういう「つて」で、会社の存在を知ったのか、そこそこ名の知れた商社まで、クライアントなのには、驚いた。社員とは言っても 河野の仕事は、運び屋である。
海外まで出張がある のは、魅力だ。それに、少々遅刻しても何も言われない。出張のときも、経費も豊富で、用が済めば、有給休暇扱いにしてくれた。電送できないというか、なんとしても漏洩を防止したいデータを運ぶのが仕事なのだ。データ自体も暗号化され、ファイルにも当然ロックがかけられた状態で、電磁波遮断ケースに入れられる。そのケースはさらに腕時計に収められた。腕時計ごとそっくりクライアントに渡すのである。口頭契約成立時に 読み取り専用機 が クライアントに事前に貸与されている。
 はじめての出張のとき、社長は、河野に注意事項を言い聞かせた。曰く「自分の安全を最優先すること。脅しがかかって聞かれたときは、知っていることは、なんでも言ってかまわないこと。盗まれたときは、会社にすぐ連絡すること。余計なことはしないこと。」
ドリームカンパニーの業務はデータの運搬で、データ収集自体は他の会社の業務であり、むろん中味は知りえないという認識を河野社員には与えてあるので、河野社員の知りえた範囲で、なにをしゃべろうとドリームカンパニーの隠くされた本来業務に支障はないのである。
 
 河野社員がどんなに朝早く出勤しても、社長と山内さんは居た。海外出張中に、うっかり時差を確認せずに報告の電話を入れても、待たされることは、なかった。あの二人は、いつ家に帰るのだろう? もっともどこに住んでいるのか聞いたこともないが。河野が他に知っていることと言えば ツクル氏が この近くの 海辺のカフェ の常連ということくらいだ。
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