海辺のカフェ(成功の次に訪れる突然死)

sakura2025

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第8章 ドリームカンパニー

第8章 出張から社に戻ったら 誰もいなかった

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 河野社員がどんなに朝早く出勤しても、社長と山内さんは居た。海外出張中に、うっかり時差を確認せずに報告の電話を入れても、待たされることは、なかった。あの二人は、いつ家に帰るのだろう? もっともどこに住んでいるのか聞いたこともないが。河野が他に知っていることと言えば、ツクル氏が この近くの 海辺のカフェの常連というくらいだ。


 第8章 出張から社に戻ったら 誰もいなかった

 外はまだ暗い。夜も開けやらぬこんな朝早くから起きて、まして出勤するなんて、われながら驚くべきことだ。新入社員の河野は、なんとしても山内先輩より早く出勤したかった。採用になってから、さして気にもとめず、机上清掃やお茶汲みも山内さんが「わたしが不在のときにお願いします。」と言うのを真に受け、出勤時間ぎりぎりか 遅刻さえしていた。気まぐれに早めに出勤したときも、出張帰りで帰社が遅れても、いつも山内さんが居た。仕事に張りが出きたせいもあり、たまには山内さんより早く出社したいと思うようになった。こんなに早く起きたのは、人生初、今日こそ自分が会社に一番乗り。ドリームカンパニーに着くころには、明るくなりつつあった。

 出勤は久しぶりだ。海外出張の余禄でなく、本物の休暇をもらって、実家に帰っていた。まぶしいような思いで、古びた事務所のエントランスを眺めた。河野の就職先に不安を抱いていた両親も、海外出張先のお土産を受け取り、話を聞き、何より、息子のはつらつとした元気な様子に、安心したようだった。
 
 事務所は、がらーんとしていた。社長も山内さんも居なかった。今日こそ山内さんに勝ったと気持ちが高ぶった。営業開始10時を過ぎても誰も来なかった。めずらしいこともあるものだと思いつつ、自分でコーヒーを入れた。湯沸しポットの電源は入ったままだった。何度も時計をみる。時間が経つのが、とても遅い。もともと事務所内は、書類が山済みということは一切なく、机上には、電話だけ、あとはパソコン、湯沸しポット、コーヒーカップ等がはいったチェスト、小さな本箱、新聞ホルダーと数えるほどの備品しかなかったのだが。

 早朝出勤した河野だが、とうとう終日 社長も山内さんも来なかった。連絡もなかった。 河野晴夫社員は、連日ドリームカンパニーに出勤し、待つ ことだけを仕事にして、毎日むなしく 帰宅した。

 新聞は配達され続けていたので、新聞に目を通すことが日課になりつつあた。自分でも 年寄り臭い日課だと思う。読むとゆうより、なんとなくページをめくり、眺めているのに近かったが、「行方不明」の見出しには、思わず声が出て、自分で自分の声に驚いた。
記事には、最近人気の高かった占い師 森田由紀 が 行方不明とあり、捜索願は、シニアレジデンス 夢の里 施設長 迂会氏。迂会氏は、森田由紀の母親の逝去に伴い、森田氏に来訪してもらったが、その後の連絡をとろうとしたが、連絡が付かず、警察に届け出たとのこと。母親の死に相当のショックを受けていたようだったので、心配になったと掲載されていた。
 新聞を手にしながら、わが身の置かれた状況にどうすればよいのか考えをめぐらせる。警察に届けたほうがよいのだろうか?が、仕事内容の秘密保持の観点からは、届けることはできないのではないか? 行方不明を届出れば、当然業務内容を問われることになる。河野社員独りのドリームカンパニーには、電話もかかってこなかった。手にしたままの新聞をもう一度読み直す。記事の中のシニアレジデンス「夢の里」は、先日他界した大叔母の「こと」が入居していたところではなかったろうか? 

 河野社員は、事務所内を徹底して調べることにした。もう1週間になるのになんの連絡もないのだから、勝手に調べたことを咎められても言い訳はできる。まず自分のPC内のフォルダーや毎日チェックしていたが、メールを再度調べ、次に山内先輩のパソコンを開いてみた。ログインIDはなんだろう? 最新の認証方法としては、指紋認証とかもあるが、この事務所は、少し前のセキュリティ対策で、アナログな雰囲気も感じられるほどなので、開示できるかもしれないと思いつつ、いろいろ試してみる。
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