転生したらドラゴンに拾われた

hiro

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最果ての森編

33. 狩り

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 地上からおよそ百メートル。そんなところに、なぜか僕はいる。ここからでも森の果てが見えないことから、この森が広大であることが分かる。この森を出るのは、結構大変そうだな。ライ達はどうやって来ているのだろうか。
 ···なんて現実逃避をしていると、目の前にテムとファムが現れた。どうやらテムが触れることで、ファムも浮いているようだ。

「ジル、ヤツらはどの辺にいるんだ?」

 テムが訊ねる。
 ジルがぐるっと周囲を見渡して、一方向を指差す。

「この方角だ。確か木が疎らになっている場所があった。そこを拠点にしているようだ」

「こっちだな!よし、早いもん勝ちたぜ!」

 テムがそう言うと、ファムも一緒に姿が消える。あれ、消えた?と思った次の瞬間に、数百メートルは先だろうか。小さく二人の姿が見えた。そして次の瞬間には消え、分からなくなった。もしかして、あれが転移というやつだろうか。テムのチート魔法だ。僕も使えるようになりたい。
 早いもん勝ちだぜ!と言いながらちゃんとファムも連れて行くあたり、優しいよな。···なんて再び現実逃避をしていると、ジルも移動を始めた。初めて会った日と同じように、僕を抱えたまま飛んでいる。結構な速さなのに風を感じないのは、ジルが魔法で何かしてくれているのだろう。

 しばらく進んでいると、静かな森に、ドドドドドドッ、ドガーン!という轟音が鳴り響いた。

「始めたようだな」

 ジルがそう言い、飛ぶスピードを速める。この様子だと、本当はもっと速く飛べるのだろう。
 前方に、テムとファムがいるのが見えた。

「あはは!鬼ごっこだー!」

「ブハハ!そうだな!オレ達が追いかける番だぜ!」

「あはは!鬼さん、早く逃げないと死んじゃうよー!あははは!」

「逃げ足遅いぜ!おらよッと」

 二人は、すごく楽しそうに蹂躙していた。···これ、僕が知ってる鬼ごっこじゃない。
 テムとファムの眼下に見えるのは、逃げ惑う緑色の小鬼たち。あれがゴブリンなのだろう。最初の大規模な攻撃を運良く生き延びた者達だろうか。いや、むしろ不運だと言えるかもしれない。遊び感覚で狩られるなんて、理不尽にもほどがあるだろう。

「俺達も行くか」

 ジルさん、なんてことを言うんです。僕は、立派なチキンハートの持ち主なんですよ!

「あうあうあう!」

 全力で首を横に振る。ちょっと涙目になってるかもしれないが、仕方ない。
 人面ライオンと鬼さんは、不慮の事故だったんです!倒そうとして倒したんじゃないんです!

「···そうか」

 ちょっと残念そうなジル。え、もしかして、ジルもあの命を刈り取る鬼ごっこがしたかったの?
 そりゃ僕も、もう少し慣れたら大丈夫かもしれないけどさ。もうちょっと、心の準備が必要なんです。能動的に魔物を倒すには、チキンハートを奮い立たせる時間が必要なんです。

 奮い立て、僕のハート。と念じてもスンともしない様子に首を傾げながら、少し離れたところからとても楽しそうな二人を見守る。この辺りで近づくのをやめてくれたジルには本当に感謝だ。ゴブリン狩りを一歳児に見せるのは、情操教育に良くないと、僕は思うんだ。
 途中で、「あれ、ジルとウィルくん、来ないのー?」とファムが聞いてきたが、笑って手を振ることしかできなかった。

「ジル、終わったぜ!」

「楽しかったー!ジル、あれお願い!」

 しばらくすると、二人が声をかけてきた。もう終わったのか。ファムが言う『あれ』とは何だろうか。
 ちらりとテムとファムがいる先を見ると、一ヶ所に集められたゴブリンの死体。かなりたくさんいたようだ。小高く積まれている。うへぇ。見なければよかった。

「分かった」

 そう言うとジルはゴブリンの山に手を向ける。

「···『黒炎こくえん』」

 ジルがぽつりと呟いた瞬間、ゴブリンの山が燃え上がる。···炎が、黒い。じりじりと伝わる熱さはない。ただただ静かに、燃えている。ゴブリンの山を覆っていたその炎は、ゆらり、ゆらりと揺れる度に小さくなり、やがて消え去り、跡には何も残らなかった。
 ···な、なんかものすごい魔法を見た気がする。静かなのに、圧倒的な存在感のある、そんな魔法だった。

「やっぱ、ジルの魔法はかっけーな!」

「そうだねー!ぼくはあんまり出来ないから、羨ましいなー!」

 ちょっとなら出来るということだろうか。十分凄いよ。

「お前達なら、練習すれば出来るだろう」

 つまり、天才達にしか出来ないのかな?

「お、そうか?そんなら、練習してみっか!」

「ぼくもー!あれって、燃え広がらないし、お掃除もしなくていいからいいよねー!」

 便利魔法の位置づけなのかな?もっとこう、ものすごいやつだったと僕は思うのだけど。

 ジルがぐるりと辺りを見渡す。

「これくらい減らせば大丈夫だろう」

「おう!あいつら、結構いたからな!また増えるにはしばらく時間かかると思うぜ!」

「そうだねー!増えたら、また減らそうねー!」

「そうだな」

 彼らにとってゴブリンとは、本当に雑草のようなものなのだろう。
 ジル達は、こうやって増えすぎた魔物を討伐することで、この森の均衡を保っているのだろうか。

「ねえねえ、ウィルくん。今度は一緒に鬼ごっこしようねー!」

 ファムの提案にビクッとする。

「一緒にウィルくんと遊びたいなー!」

 そんな可愛く言っても、僕は騙されません。

「ね、ね、遊ぼうよー!ケガしても、ぼくが治してあげるよー!」

「俺がいるから怪我はさせない」

 ここでそんなカッコいいセリフを言うなんて···!断れなくなるじゃないか!

「わーい!安心して遊べるねー!」

「ブハハ、みんなで遊べばもっと楽しいぜ!」

「そうだねー!楽しみだねー!」

「···あう」

 そうだね、楽しみだね。僕は遠い目をしながら返事をする。

「そろそろ家に戻るか」

 しばらく空中でおしゃべりをしていると、ジルがそう切り出した。
 その提案、待ってました!この高さに少しは慣れてきたとは言え、下を見るとひゅんとするんだ。地面がとても恋しい。

「あうあう!」

 全力で首を縦に振る。もう、早く帰りたくてたまらない。

「そうか。···テム、ファム、家で昼飯を食べないか?」

 ジルが二人を誘う。もうそんな時間なのか。怒涛の展開についていくのに必死で全然気がつかなかった。

「おお!いいのか!やったぜ!」

「わーい!お昼ごはん、楽しみー!」

「テム、魔力に余裕があるなら家まで頼む」

「おう!ヨユーだぜ!任せとけ!」

 テムはそう言うと、こちらに近づいてジルの肩に触れる。家まで頼むって、もしかして···と思った瞬間、視界がブレ、次に見えたのは、目の前にある僕達の家と、その玄関の前でにこやかな笑みを浮かべているライだった。
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