しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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姫さま面談す

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♦-/-/-//-/-ボルトリア王国第一王女:エネッタ・ルクシア・ボルトリア視点/--/-/-/--/♦

 今日は“審議会”二日目。試験は面談。

 本来なら、こんな堅苦しい面接なんて退屈きわまりないのだけれど──今日はちょっと違う。

 昨日、あのおにぎりを口にしたときから、なぜだか胸のどこかがくすぐったい。

 炊きたての白い米。
 塩加減の絶妙な、手のひらサイズのぬくもり。
 そして、誰にも媚びず、それでいて誰よりも誠実に人と向き合う背中。

 ──轟 電次郎。

 そのおじさまの面談を、私が担当すると決めたのは、朝になってすぐのことだった。

 「面談の前に、わたくしが話したいのですが」
 そう言って、父にも行政補佐官にも相談せず、審議会の面談官を“説得”した。
 まあ、説得というか……わたくしの立場と、ちょっとしたお菓子とお願いで押し切っただけだけれど。

 面談の場は、謁見の間ではなく、王城の一室──かつて貴族たちとのお見合い会談にも使われた小さな応接室。
 机を挟んで椅子がふたつ、窓からは日が差し込んで、ほんのり暖かい。

 おじさまはやや緊張した面持ちで部屋に入ってきた。

 「えっと……面談って、ここでいいんですか?」

 「そうよ。今日の面談官はわたくし、今をときめく十六歳の王女──エネッタ・ルクシア・ボルトリアよ。よろしくね、電気屋さん」

 「……まじですか。いや、昨日王様の隣にいたお姫様ですよね? いいんですかこれ」

 「なにか問題でも?」

 「いや、大丈夫です。こんな若い女の子に面談されるのなんて初めてなんで、ちょっと緊張するなぁ、と思って(本物の、お姫様と会話するのも初めてだな、普通に生きてりゃ絶対にありえないシチュエーションだ)」

 彼はやや呆れ顔で席についたけれど、すぐに笑って頭を下げた。

 ──さて、面談と称して、いろいろ聞いてやろうじゃないの。

 「まずは“電気屋”って、なにを売ってるの?」

 「えーと、生活に役立つ道具……ですね。炊飯器とか、掃除機とか……」

 「スイーツ、作れる?」

 「スイーツ?」

 「そうよ。わたくし、城下でクレープとかパフェとかよく食べるの。ふわふわのパンケーキも好き。作れる道具、ある?」
 おじさまは少し考えてから、召喚魔法のようにミニホットプレートを取り出した。

 「こういうので、ホットケーキとかなら焼けますよ」

 「きゃっ! なにそれ、すごい!」

 思わず身を乗り出してしまったわ。
 これがあれば黙って城を抜け出さなくても食べ放題ってことじゃない。

 「ねぇねぇ他には? なんか私が喜びそうなもの出して」

 「そんなこと急に言われても……十六歳って高校生くらいか、なら、こんなのとか?」

 「なにこれ、なんかすっごい怪しい形してるけど」

 「美顔スチーマー。もしかしたらちょっと姫さんには早いかもしれないけど、蒸気で肌が潤ってモチモチになるやつです。試してみて下さい」
 え? 顔に湯気みたいなのを当てると潤うの? ほんとだ、ぴちぴちの私のお肌がさらにぴっちぴちになった。それに、この煙、すっごい良い香り。ラベンダー? なんだか深呼吸したくなる感じ

 「わたくし、これ欲しい!」

 「……欲しいって、面談中なんですけど?」

 「いいのよ。これは“真の面談”。わたくしが本当に知りたいのは、あなたの“便利”の正体なの」

 「真の面談? 俺の便利の正体って……」

 なんだか、おじさまが疑い始めてるわね。
 ここで、ちょっと面談らしさも出そうかしら。

 「おじさまの魔道具って、魔法よりすごくない? どこで覚えたの? わたしにもできる? なんでこんな便利道具を出そうと思ったの?」

 「いや、質問攻め。というかもしかして、これって姫さんの個人的なやつ?」

 「そんなわけないじゃない、れっきとした国の存亡をかけた面談よ」

 「存亡を? 俺には荷が重すぎる話なんですけど……まぁなんで家電を取り扱っているかって言われたら、使ってくれる人が、ただ笑顔になってくれるだけで嬉しいんで。それが一番ですかね」

 ──ああ、ずるい。
 なんだか、その言葉は私の心にまっすぐ刺さった。

 「おじさまとは、まだまだ話したい事があるけれど、そろそろ元の担当官も気にしてるでしょうし、とりあえずこれで“表向き”は終了にしておくわね」
 わたくしが立ち上がると、彼は少し驚きつつも立ち上がった。

 「本物? やっぱり姫さん。この面談って……」

 まぁどうせバレちゃうから、もういいわ。それよりもなによりも、わたくしは確信しました。

 このおじさまは、わたくしに必要な方。

 「ねえ、おじさま。あなた、わたくしの執事にならない?」

 「……えっ」

 「待遇は最高ランクにするわ。部屋も城下町のどの建物よりも豪勢。食事も専属のシェフが作る栄養バランスを考えた最高級品(おいしくはないけれど)お給料だって言い値でいいわ」
 おじさまが出す魔道具は、おじさまが居ないと動かないっていうんだから、これだけの待遇でも、きっとおつりがくるわ。

 「いや、姫さん。気持ちはありがてぇんだけど、そりゃ受けられねぇ話だ」
 即答?
 「なぜ?」

 「家電ってのは、誰かが独占するもんじゃねぇんです。確かに、対価は必要ですけど……できるだけ安く、必要としてる人に使ってもらってこそ輝くもんだと思ってるからな」

 その言葉に、私は思わず眉をひそめた。

 「……つまり、わたくしの申し出を断るというのね?」

 おじさまは苦笑しながら頭をかいた。

 「申し訳ないです。俺は、あくまで“町の電気屋”なんで」

 ──ふぅん。面白い。

 「わたくしに逆らうということが、この国でどれだけ愚かなことか──あとで、じっくり思い知らせてあげるわね」
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