しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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ステラ考察す

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 姫様を休ませ、ジェダくんのところへ戻ると、そこには誰も居なかった。
 寮でジェダくんに会ったら、警備の人が連行していったって教えてくれた。
 こういうのは、被害者である姫様も事情を話さなきゃならない。落ち着いたら、俺たちも一緒に事情説明に行くことになった。

 犯行理由が気になるけど……あの感じじゃ、お金目当てだろうな。
 王族って言ったら超がつくほど重要人物だ。国際問題に発展してもおかしくない。下手すりゃ戦争にも繋がる……。
 俺も、もっと気にしてやるべきだった。
 無防備に「世界を見てみたい」なんて願う姫様を、誰かが守ってやらなきゃいけなかったんだ。

 俺はただの電気屋だった。けど、今は違う。
 異世界でも、あいつらにとっての“仲間”で、“頼られる存在”でありたい。
 ……あんなに怖がらせるまで気づけなかった。
 今さらかもしれねぇけど、それでも、今度はちゃんと守れるように……もっと強くならなきゃならねぇ。

 姫様の手首の傷は治癒魔法で完治したけど、精神的にはだいぶ堪えているみたいで、いつもの元気がない。
 無理もないよな……。
 明日からの競技も、姫様のことを考えたら棄権するのがいいのかもしれないな。
 「馬鹿を仰いませ」って怒られそうな気もするけど。

 俺が寮の廊下に腰を下ろしてぼんやりしてると、ライミがそっと隣に腰掛けた。
 「……姫様、無事でよかったにゃん……」
 「……ああ」
 ライミの目は、少し赤かった。
 それに気づかないふりをしたまま、俺は目を伏せる。

 「オレ、あいつらマジでぶっ飛ばす寸前だった。手加減しなきゃ殺ってたかも……」
 トレスが通りがかりに呟く。拳を強く握っていた。

 スイランは無言で腕を組み廊下の柱にもたれて、静かに頷いていた。
 みんな本気で心配し、本気で怒っている。良い仲間達だ。

 ──そういえば、ステラの姿が見えない。

 最後に見たのは、姫様を寮に送り届けたあと。
 あの地下施設になにやら思うところがあったみたいだったけど……。

 あの子、よく観察してる割に、自分のことは全然見せねぇんだよな。
 何考えてるのか分かるようで、分からない。

 もしかして、あれから何か──いや、考えすぎか?


 ♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦


 「先生……お聞きしたいことがあるのですが」
 ライオネットの研究室に入ったステラは、俯きながら訪ねた。
 「なんだ? 誘拐犯のことか?」
 ライオネットは、背を向けながら応える。

 ステラはエネッタを寮に送り、その足でここへ来た。当事者数名以外、この学園の誰もかれも事件のことは知る由もないことは明白だった。だからライオネットの言葉にステラは一度驚くが、自分の想定したことが確かだったと知り、言葉を続ける。
 「……やっぱり先生だったのですね……でも、どうして?」
 「勘の良い子は嫌いじゃない。だが、何時も言っているだろう? 答えは享受するものではない、自分で確かめ、矛盾なく、正しい論理が整い、そこで初めて真実となる……このことでこれ以上の議論は無用。分かるな?」
 ライオネットは顔を上げたステラを優しい眼差しで見つめて言った。
 「でも……」
 ステラはそれ以上の言葉を出せずにいた。
 ライオネットの教えは、孤児だったステラの心を常に満たしてくれた。そこに善悪は無く、ただ「知りたい」という渇望と、「教えてくれる人がいる」という事実だけが、彼女の居場所だった。
 だからこそ、今この瞬間の違和感が、胸の奥を締め付けていた。

 「ステラ、次の私の願いだが……」
 ライオネットの言葉に、ステラは耳を疑った。
 「残り二日の競技大会。Zクラスが負けるように動いてくれ。どんな手を使ってもいい」
 「どうして……」
 ステラの脳裏に、電次郎たちとの訓練がよぎった。
 一体その行為に何の意味があるのか、理解できずに口を閉ざす。
 “答えは自分で探すもの”きっと帰ってくる言葉はそれだけだと分かっていたから。

 「……わかりました。失礼します」
 「ステラ、期待しているぞ」
 背中に受けたライオネットの柔らかな言葉に、鳥肌が立った。
 それが、嬉しさなのか恐怖なのか、理解できずに研究所を後にするステラ。

 先生がエネッタを誘拐した理由──。

 お金のため?  
 研究資金に困ってはいたけれど、無謀過ぎる。

 三日間の監禁と、私への命令。  
 エネッタさんを捜索させて、競技大会に参加させないため?
 Zクラスが大会で活躍すると、先生にとって何か不都合が?
 ……それとも、エネッタさん自身に何か意味がある?

 攫われた犯人たちには、先生の魔法痕があった。  
 あれはたしか、精神を落ち着かせる魔法の跡。  
 でも、なぜそんな魔法を……?

 考えれば考えるほど、答えが遠のいていく気がした。

 今は先生の願いを叶えるためにだけに頭を使おう。
 ステラは自分に言い聞かせ、電次郎たちの元へ向かった。
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