聖女を隷属させてこき使う国は捨てちゃいます!

SHEILA

文字の大きさ
15 / 18

初めて癒しの魔法を使った日 2

しおりを挟む
無事黒い狼の魔獣を庭まで連れてきたララに、庭にいた3人は腹を立てていた。

(何で嚙み殺されてないんだ!)
(私たちには威嚇しまくっていたのに、なんであれの言うことは聞くのよ!)

甘やかされ、なんでも自分の思い通りにしてきたバーバラは、ララの指示に従い、大人しく歩いてくるその姿に激怒した。

「ちょっと!どういうことよ!!昨日は私の言うことを聞かないで、私に対して唸ったくせに、なんなのよ!!私が主なのよ!!ふざけないで!!!お前ごときが私の魔獣に触るんじゃないわよ!!」

言っていることが滅茶苦茶である。
ララは怖くて魔獣に触れたことがないのに。

癇癪を起こしたバーバラが、何故か手に持っていた鞭を振り上げた。

「あっ、だめよ、バーバラ!!」

ブルネッタが狂ったように叫ぶが、バーバラは鞭を振り回しながら、ララと魔獣に向かって走り出した。
そして、振り回された鞭が、魔獣に当たった。

「ウゥーッ、ガルルッ!!!!!!!!!!!!」

怒った魔獣がララを弾き飛ばし、バーバラに噛みつこうとしたところに、ブルネッタが割って入った。

ブルネッタは右肩の肉をごっそり噛み千切られ、大量の血が流れた。
その血がバーバラを真っ赤に染め、バーバラは気絶した。

魔獣は興奮していて、自分を鞭打ったバーバラに、尚も噛みつこうとする。
気絶したバーバラを抱きしめたままのブルネッタを引き剥がそうと、魔獣は更にブルネッタの体を食いちぎって行く。

騒動に気付いた家令たちが、武器を持って走って来る。
それに気付いた黒い狼の魔獣は、首輪と鎖を付けたまま、ボーデンロ家の敷地から外に逃げて行った。

ハロルドは、血だらけで倒れているブルネッタも気絶しているバーバラも放ったまま、駆け寄ってくる家令たちに、なぜ主人を守れないんだ、さっさと逃げた魔獣をつかまえて来いと、罵声を浴びせ始めた。

(酷い。悪いのは、バーバラなのに……ねぇお父様、このままだとお母様が死んじゃうよ?)

ララは魔獣に弾き飛ばされた時に大怪我をしていたが、自身にヒールをかけてから、ブルネッタに向かって歩き始めた。

「おいっ、この化け物!お前がさっさと魔獣に食い殺されていれば、こんなことにはならなかったんだ!!ブルネッタとバーバラの側に寄るんじゃない!」

いつものように、ハロルドとブルネッタが、ララを憎悪を込めた目で睨む。

それでもララは、8歳のララは、ハロルドとブルネッタに愛して欲しくて、褒めて欲しくて、ブルネッタの体に掌を向けた。

「エクストラ・ヒール」

ララが魔法を発動すると、ブルネッタの魔獣に噛み千切られた肩や背中、脇腹が、みるみる元の形を取り戻していった。

一瞬後、ハロルドとブルネッタはお互いに目を見合わせて、ニタリと笑った。

ララは後に思う。
こんな親に愛なんて求めず、自分の幸せをしっかりと見極めれば良かったと。

この日を境に、ララの孤独な日々は、絶望の日々に変わることになる。







黒い狼の魔獣は必死に走っていた。
今の彼には、2つの首輪も鎖も重すぎた。
聖なる存在をその身に閉じ込め押さえつけるために、彼は自身の膨大な魔力を極限まで酷使していた。
そのため外敵からの攻撃を避け切れず大怪我を負い、遂には人間に掴まって売られることになり、隷属の魔法で縛られてしまった。
聖なる存在を呪いにより彼の中に封じ込め、責任を持ってその存在を闇に溶かして消すように命じられていた彼は、怯えていた。
(逃げなければ。隠れなければ。力を取り戻されなければ。消される!)
黒い狼の魔獣は僅かに残った魔力で、この世界とは違う空間と繋がっているとされる歪みを探した。

聖なる存在を消すことができなかったことが邪悪な存在にバレて、自分が消されないために。

そして、力を取り戻して、自分を隷属して縛っている、忌まわしい存在を消すために。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

うるせえ私は聖職者だ!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
ふとしたときに自分が聖女に断罪される悪役であると気がついた主人公は、、、

婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。 12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。 邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。 、

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

月蝕の令嬢 〜妹の偽りの光を暴き、夜の王に溺愛される〜  嘘つきの妹に成敗を、ざまあ

しょくぱん
恋愛
「汚らわしいその腕で、僕のセリナに触れるな!」 公爵令嬢エレナは、生まれつき「不浄の影」を持つとして家族から虐げられてきた。 実態は、妹セリナが放つ「光の魔法」が生む猛毒を、エレナが身代わりとなって吸い取っていただけ。 しかし、妹の暴走事故を自らの腕を焼いて防いだ日、エレナは「聖女である妹を呪った」と冤罪をかけられる。 婚約者である第一王子に婚約破棄され、実家を追放され、魔物が巣食う「奈落」へと突き落とされたエレナ。 死を覚悟した彼女を拾ったのは、夜の国を統べる伝説の龍神・ゼノスだった。 「これを不浄と言うのか? 私には、世界で最も美しい星の楔に見えるが」 彼に口づけで癒やされたエレナの腕からは炭化が剥がれ落ち、美しい「星の紋章」が輝きだす。 実はエレナの力こそが、世界を再生させる唯一の「浄化」だったのだ。 龍神の番(つがい)として溺愛され、美しく覚醒していくエレナ。 一方、彼女を捨てた母国では、毒の吸い取り役がいなくなったことで妹の「光」が暴走。 大地は腐り、人々は倒れ、国は滅亡の危機に瀕していく。 「今さら『戻ってきて毒を吸ってくれ』ですって? お断りです。私は夫様と幸せになりますので」 これは、虐げられた影の令嬢が真の愛を知り、偽りの光に溺れた妹と国が自滅していくのを高みの見物で眺める、大逆転の物語。

処理中です...