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神殿 1
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翌日。
ララは今まで経験したことのない状況に、目を回していた。
朝から湯殿に連れて行かれ、体を無理やり洗われ、白いドレスを着せられて、髪を結われていた。
因みにドレスのサイズは合っておらず、ドレスに着られている感じだった。
ドレスを汚さないようにと、汁気のない簡素な食事を与えられ、食事が済むと馬車に乗せられた。馬車に乗るのは、生まれて初めてだった。
馬車には父ハロルドと母ブルネッタが乗っていた。
バーバラはいない。
ハロルドとブルネッタは機嫌が良かったが、ララに話しかけることはなかった。
2人は、
「上手くいくかしら。」
「上手くいくに決まっている。これで俺も子爵、いや伯爵にもなれるかもしれん。」
「まぁ、嬉しいわ!」
そんな会話を繰り返していた。
ララは、父ハロルドが陞爵できるような功績を挙げ、機嫌がいいのだろうと考えた。
けれど、なぜ自分がドレスを着せられて馬車に乗せられたのかは、まったく分からなかった。
ボーデンロ男爵家は領地を持つ男爵家だったが、領地経営ができないハロルドとブルネッタとバーバラは王都で暮らすことに執着していて、領地経営は優秀な弟たちに任せっきりだった。
父である元ボーデンロ男爵は、ここまで長男が無責任で無能だと思っておらず、次男への爵位移譲を考えていた。
ララは生まれてから一度も外出をしたことが無く、初めての両親との外出に、初めて見る王都の街並みに、気分が高揚していた。
両親の機嫌も良いし、昨日ブルネッタの怪我を治したご褒美なのかもしれないと、心がほわっとしていた。
連れて行かれた先は、神殿だった。
神殿の中に入ると、ララは不思議な感覚に捕らわれた。
圧倒される程の大きな存在を感じた。
全身を静電気を浴びたような感覚が通り過ぎた。
絶対的な安心感に包み込まれた。
「おはようございます。ようこそお越しくださいました。神はすべての神の子を歓迎いたします。本日はお祈りでしょうか?」
神官らしき男性が声をかけてきた。
「あの、娘の鑑定をお願いします。どうやら癒しの魔法が使えるようでして。」
神官は連れて来られた少女を見る。
8年ほど前からこの国が急速に豊かになったことから、国内に「聖女」が誕生しているのではという噂があり、ここ数年、自分の娘が聖女ではないかと鑑定を受けに来る家族が、毎日のように神殿に押しかけていた。
神殿としては多額の寄付金が得られ、自分たちの生活が潤うという意味では大歓迎な客なのだが、聖女ではなかった、癒しの魔法も使えないと分かると、トラブルになることも多く、辟易もしていた。
強欲そうな父親らしき男と母親らしき女を見て、神官は心の中で溜息をついた。
ララは今まで経験したことのない状況に、目を回していた。
朝から湯殿に連れて行かれ、体を無理やり洗われ、白いドレスを着せられて、髪を結われていた。
因みにドレスのサイズは合っておらず、ドレスに着られている感じだった。
ドレスを汚さないようにと、汁気のない簡素な食事を与えられ、食事が済むと馬車に乗せられた。馬車に乗るのは、生まれて初めてだった。
馬車には父ハロルドと母ブルネッタが乗っていた。
バーバラはいない。
ハロルドとブルネッタは機嫌が良かったが、ララに話しかけることはなかった。
2人は、
「上手くいくかしら。」
「上手くいくに決まっている。これで俺も子爵、いや伯爵にもなれるかもしれん。」
「まぁ、嬉しいわ!」
そんな会話を繰り返していた。
ララは、父ハロルドが陞爵できるような功績を挙げ、機嫌がいいのだろうと考えた。
けれど、なぜ自分がドレスを着せられて馬車に乗せられたのかは、まったく分からなかった。
ボーデンロ男爵家は領地を持つ男爵家だったが、領地経営ができないハロルドとブルネッタとバーバラは王都で暮らすことに執着していて、領地経営は優秀な弟たちに任せっきりだった。
父である元ボーデンロ男爵は、ここまで長男が無責任で無能だと思っておらず、次男への爵位移譲を考えていた。
ララは生まれてから一度も外出をしたことが無く、初めての両親との外出に、初めて見る王都の街並みに、気分が高揚していた。
両親の機嫌も良いし、昨日ブルネッタの怪我を治したご褒美なのかもしれないと、心がほわっとしていた。
連れて行かれた先は、神殿だった。
神殿の中に入ると、ララは不思議な感覚に捕らわれた。
圧倒される程の大きな存在を感じた。
全身を静電気を浴びたような感覚が通り過ぎた。
絶対的な安心感に包み込まれた。
「おはようございます。ようこそお越しくださいました。神はすべての神の子を歓迎いたします。本日はお祈りでしょうか?」
神官らしき男性が声をかけてきた。
「あの、娘の鑑定をお願いします。どうやら癒しの魔法が使えるようでして。」
神官は連れて来られた少女を見る。
8年ほど前からこの国が急速に豊かになったことから、国内に「聖女」が誕生しているのではという噂があり、ここ数年、自分の娘が聖女ではないかと鑑定を受けに来る家族が、毎日のように神殿に押しかけていた。
神殿としては多額の寄付金が得られ、自分たちの生活が潤うという意味では大歓迎な客なのだが、聖女ではなかった、癒しの魔法も使えないと分かると、トラブルになることも多く、辟易もしていた。
強欲そうな父親らしき男と母親らしき女を見て、神官は心の中で溜息をついた。
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