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18.嘘はつけない
しおりを挟むすっかり忘れていたけど怒って去っていったバルトは何処へ行ったのだろうか?
割とすっきりした頭で目覚めれば嵐の様な少女との出会いの後で、ディアルデの屋敷へ送り届けられたあと何も言わずに猛スピードで何処かへ行った次期公爵家当主を思い出した。
あの時ものすごく怒っていた、それはもう、尖っていた10代の頃を思い出す程の怒りようだった。
「あいつの反抗期はすごかった...」
全身のだるさに気付きながらぼそっと声を出したら「ぶふっ!」と何かを吹き出す音が聞こえた。
少し起き上がってみれば、部屋の主が本を読みながらお茶を飲んでいる姿を確認できる。
どうやら長いこと寝ていたのは自分だけのようで窓から入る光はすでにオレンジ色に近い気がする、ここまで時間がたっていると寝坊どころじゃないな...と枕にぽふっと頭を戻した。
「ふくっ、くっくっくっ!反抗期って...!起きて第一声が、何の事なのだ?」
笑いながら水をのせた盆を持ってくるアルデのシャツの胸元は吹きこぼしたのだろうお茶の色で所々変色していた、ベッドに腰掛ければ首や額をそっと撫でられる。
「冷たい...」
「少しだけ熱があったんだ、すまない、無茶をさせたな」
謝っているだけなのにこちらが恥ずかしくなりそうな程のとろけた顔をしている
昨日の変態行為もそうだが、今までとのギャップが凄すぎて理解が追いつかない。
こんなにも分かりやすい男だっただろうか?
「バルトの事を思い出してた」
思いっ切り鼻に噛みつかれた
...痛い
***
話したい事がある、とアルデに連れられエメロード邸を訪れれば怒りが収まったバルトから少女の正体は聖女だと聞かされた。
街中での猫目の目的は果たされず、聖女との遭遇は偶然だったと。
「あの少女が、聖女だったのか...」
「あの女には謎が多い、サナンの事を誰から聞いたのか調べさせたんだが判明しないんだ。他にも誰にも教えてない秘密を知っていたり...どういう事なのか調べても出てこない」
「あの女って...」
「あの女で十分だ」
口の悪さはとうの昔に直したはずなのに何故か今また出始めている、こういう事はアルデがやんわり注意するのに隣で静かに酒を飲むだけで何も言う気配が無い。
おや?と思って見つめていたら視線に気付いたアルデがにこっと笑い手ずからお茶を注ぎ、わざわざ手をとってカップを渡してきた。
いや、手を添えてもらわなくてもカップ落とさない
子供じゃないんだから
解せぬ、と思いながらもらったお茶には罪は無い...美味しい。
「あれ?サナンは飲まないの?好きでしょ、果実酒」
「サナンは体調が優れないから駄目だ」
何故にアルデが答えるのか、二人とも同じ事を思ったらしく優雅に酒を飲む男を見る。
答えた男は当然の事をしたというように気にしていない
「え、ごめん、体調悪いのなら別の日にすれば良かったね」
「本当にな、昔から空気を読まない奴だと分かっていたが酷すぎるぞ」
いやだから、あきらかにバルトは私を見て話しかけているのに何故にアルデが答えるのか!
お茶を渡してきたときは機嫌良さそうだったのにバルトと私が話そうとすればことごとく邪魔をしてくる、さすがに聡いバルトが生暖かい目でこちらを見てくる頃には隠しようの無い事実を理解された後だった。
執事にお祝いの時に食べるお菓子を焼くように言おうとしたのは全力で阻止した
「ん?でも何で二人が進展したのに俺すごい邪険にされてるの?」
「全て終わった後に起きたサナンが口にしたのはお前の事だったからだ」
「それは、サナンが悪いよ...」
今度は私が二人から見られる
一人は攻めるように、もう一人は...やはり攻めているような目だった。
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